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公衆衛生学レポート
                         
1)はじめに

   今回のレポートを作成するに当たって、過去の公衆衛生の実態をふまえつつ、現在の公衆衛生の実態、また、色々な化学物質などが人体にどのような影響を及ぼすかを学び、考えていきたいと思う。今回のレポートには水俣病をはじめ、水銀の人体に対する影響を論文などを通して多くまとめた。公衆衛生というのは私たちの生活、健康に直結する重要なことだが、実際、真剣に考える機会などほとんどないように思われる。少し前までは、水俣病など、産業による環境破壊や人体への影響は、それに関わっている人達などは気をつけることは出来るが、周囲の人達は何らかの影響が出てから考え、動き出していたように思われる。何かが起こった後でではなく、何かが起こる前に防げるようにしたい。また、将来医師を目指す身として、公衆衛生を学ぶことによって、医師として大切なこと何か、これから先どのように関わっていくべきかというのもつかみたい。

2)選んだキーワード

公害・毛髪

3)論文内容の概略

  「家庭内の金属水銀汚染についての検討」
   勝又 聖夫  南 正康

    水銀化合物には有機水銀化合物、無機水銀化合物および普通の金属水銀がある。いずれも人体に有害作用をもっている。職業性水銀中毒例は多く報告されているが、家庭内での水銀中毒例も少なくはない。その起因を追及すると、水銀を取り扱う場所がヒトの住居に変わり、水銀の取り扱いの間違いで、気化した水銀蒸気が室内空気を汚染し、ヒトの肺胞に吸収され障害をもたらしたりしている。現代の日常生活の中に水銀と関連のある製品は、蛍光灯、乾電池、温度計および血圧計など多くある。これらの用品を誤って取り扱うと、家庭内での空気が水銀に汚染される。今回の事例は家庭内で水銀血圧計を誤って操作し、水銀を加温中のホットカーペットにこぼし、人に何らかの影響が表れた事例である。金属水銀が加温中のホットカーペットの影響で、水銀蒸気を気中にどのくらい発散するかを実験し、水銀の室内空気汚染状況と生体への影響を観察した。
結果として、被爆者およびその家族の生体試料(血液、尿、毛髪)中の水銀値はすべて正常値であった。短期水銀被爆の場合、血中水銀の半減期は3〜4日で、また尿中への水銀排泄は、ある程度平衡状態まで蓄積されて生ずることから、水銀の被爆量が少ないと血中、尿中水銀が反映されないが、低濃度の被爆による影響もあるという報告もある。
水銀の気化量は最初の20分間は時間とともに濃度は直線的に上昇したが、一定時間を過ぎると、時間当たりの水銀気化量は減少した。また、ホットカーペットから5cmの高さで各時間帯にとった資料を測定したところ、いずれも高かった。もし、気づかずカーペット上に水銀汚染源の近いところに寝たり、子供が遊んだりするなら、吸い込んだ水銀はより多いと考えられ、実際、家庭内での水銀中毒ケースでは、子供への被害は最も深刻である。低濃度水銀蒸気に曝露された場合、ある時間が経つと、行動異常や染色体の異常性の増加などの報告があり、また、妊娠後期のモルモットに水銀蒸気を吸わせると、胎児に水銀の蓄積が見られた。日常生活の中で水銀蒸気に被爆された場合、全て人に影響を与えるとはいえないし、低濃度の場合、体内に取り込まれた水銀は次第に排出されていく。今回の実験より、微量の水銀でも十分に室内の汚染源になりうるので、健康に影響を与える限度以下に、生活環境内の水銀レベルを低く保つため、より注意が必要である。

  「胎児性メチル水銀曝露による小児神経発達影響━Faroe研究を中心に━」
   村田 勝敬   嶽石 美和子
    水俣病で代表されるメチル水銀中毒は日本(1956年)のほか、Iraq(1971年)、中国などの国々でメチル水銀の工場排出あるいは食品汚染を介して集団発生した。この歴史的意義は、水銀の人体影響に関する量━反応関係に焦点が当てられ、胎児影響の起こる濃度を推定したことであろう。米国Environmental Protection Agency(EPA)は、このデータに基づいて、メチル水銀の人体への基準摂取量(毎日摂取しても人体影響がないとされる量)を一日当たり0.1?/kg(体重)以下とした。最近のメチル水銀を巡る関心は、高濃度水銀暴露の影響ではなく、次世代影響の起こりうる臨界濃度がどれくらいかということに推移しているように思われる。地殻ガスや産業活動によって大気中へ放出される無機水銀は、微生物や魚介類の体内でメチル化され、食物連鎖により大型魚や魚を捕食する哺乳動物へ濃縮される。これらをヒトが多食することによって発現する健康影響の可能性が懸念されている。水産物由来の水銀がヒトにおいて検出された事例は、鮫、鰹、鯨、深海魚などで確認されている。水銀濃度は鯨肉の摂取回数が多くなるにつれ、有意に高くなることが認められている。
Faroe諸島における胎児性水銀曝露による神経影響調査は、7歳児調査では胎児性水俣病の症状を示す子供はいなかったが、運動機能、注意(反応時間)、視覚空間、言語、言語記憶、が出生時の水銀曝露量(出生時の母親の毛髪水銀濃度および臍帯血中水銀濃度)と有意な関連を示した。また、聴性脳幹誘発電位潜時が水銀曝露量と有意な正の関連を示した。14歳児の神経影響調査はデータ解析の途上であるが、一部解析が行われた検査においては、出生時の水銀曝露量の増加に伴って14歳児の聴性脳幹誘発電位潜時の一部が延長する傾向が認められる。
    非発癌性影響のリスク評価として十分にコントロールされた動物実験から得られるNOAEL(無毒性量)は、非曝露群に統計的あるいは生物学的に有意な毒性影響の増加を生じさせない「最も高い実験的曝露量」と定義されているが、このNOAELあるいはLOAEL(最小毒性量)曝露群と非曝露群の統計的比較(有意差検定)に基づいて算出されているため、サンプル数に左右されやすく、近年研究者の間で異議が唱えられている。CrumpはNOAELまたはLOAELに絡む問題に対して、量━影響関係を重視したbenchmark dose(BMD)という考えを提唱した。
    Faroe研究は、胎児性メチル水銀曝露による小児神経発達影響の評価に限らず、血圧影響の評価や地域住民の予防医学活動にまで波及した。Faroe諸島公衆衛生部は、毛髪水銀濃度10?/g以上の母親が1986〜87年に13%(幾何平均4.7?/g)、1994年に10%(幾何平均4.0?/g)もいたことを受けて、鯨肉に対する摂食制限指導を数度にわたって行った。指導の結果、1998〜99年には毛髪水銀濃度が10?/g以上の母親は3%(幾何平均2.1?/g)に低下した。予防医学の究極の目的の1つが「治療を必要としない人々において、健康を脅かすリスク要因を取り除く」ことであるならば、メチル水銀などの曝露を抑制することによってFaroe諸島の人々の次世代リスクを減らすことは真に予防医学そのものである。また、リスク評価の方法として、臨床医学領域でrelative risk(あるいはodds比)が用いられているが、予防医学領域では非顕性レベルの生体影響が出現し始める有害因子の「臨界濃度」(の大小)で議論することが今後検討されるべきかもしれない。後者の数理モデルの1つとして、BMDの利用が期待される。
     最後に、大規模な環境疫学研究をするときに気をつけることは、対象集団の選択、予算獲得と査察、影響指標の選択、検査者の選択、研究グループ内のデータ開示である。

4)選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察

   初めて起こる物事を予測して、事前に防ぐことは難しい。特に、人の体というものは私たちの想像をはるかに超えるものだから、それが関係してくると、余計に難しい。しかし、一度起きたら次は出来る限り起こさないように努力するべきである。水俣病を例に取ってみると、それは行われていなかった。人体に関わることだから解明までに時間がかかるのはわかるが、かかりすぎである。判ったところで、次はきちんとした保障制度も設けられずに問題は山積みだった。真相解明を遅らせたのは何か、被害の拡大をなかなか防げなかったのは何故か、などを考えると、社会・政治・文化的な背景から明らかにすることが必要だと思われる。「水銀は危険である」と言われても、どんな風に危険なのかということは全く知られていない。それなのに日常用品にも数多くあり、水俣病に関しては、それを海に流していた。医師という仕事は一分一秒を争う仕事である。水俣病のように、公衆衛生を怠ったり、水俣病が発見されても、解明までにかからないでいいような時間がかかったりしていてはいけない。また、治療というのは、ただ傷を治すことではない。傷が治った後の生活や心のケアまできちんとしてはじめて治療とよべる。そういったところを考えると、水俣病は問題点が多い。論文をふまえると、医師というのは薬にもきちんと精通していなければいけないということを実感した。いま、薬剤師の人口も増え、昔に比べて薬のことをきちんと知っている医師は減っていると聞いたことがある。現在、薬はかなりの数がある。それを全部覚えるということは難しいと思われるが、いついかなる知識が必要になるのかはわからない。いついかなる場合にも対処できるように日々勉強しなければいけないと思う。

5)まとめ

   今回のレポートを通して、公衆衛生の実態と難しさを痛感した。日常何気にやっていることの中には気をつけるべき点が多くあるということを感じた。このことは医師になる上で重要なことと思う。患者さんの様態は日々変化する。ほんの小さな変化かもしれないが、とても重要なことである。今回は水銀について多く学んだ。水銀というのは、何気に私たちの身近に多く使用されていて、間違ったら、いつ水銀による病気にかかるかわからない。水銀にしろ何にしろ、環境や人体に影響のあるものに対する取り扱いは十分に気をつけなければならない。はじめにも書いたように、一般的に公衆衛生を学んだり、真剣に考える場というものはあまりないように思われる。私も今回のレポートがなかったらあまり意識しないような気がする。しかし、医師を目指す私にとっては特に重要なことの1つである。今回のレポート作成で、目標にしていたことの半分も達成できていないと思うし、今回のレポートで私が学んだことや、感じたことはまだまだ序の口と思う。しかし、これをきっかけにこれからは日頃から意識していきたい。