← 【レポートサイト top】 →
------------------------------------------------
予防と健康レポート
1.はじめに
水俣病に関するビデオおよび論文から水俣病がかかえる社会的問題、水俣病の症状、また有効な治療方法についてのレポートをまとめた。
2. 選んだキーワード
environmental pollution,
neuron
3. 選んだ論文の内容の概略
"Antioxidants J811 and 17beta-estradiol protect cerebellar granule cells from Methylmercury"
「酸化防止剤J811と17βエストラジオールはメチル水銀から小脳の顆粒細胞を保護する」
Cerebellar granule cells (CGC) have provided a reliable model for studying the toxicity of methylmercury (MeHg), a well-known neurotoxicant contaminating the environment. In the present study we report that doses of MeHg ranging from 0.1 microM to 1.5 microM activated apoptosis, as shown by cell shrinkage, nuclear condensation, and formation of high-molecular-weight DNA fragments. Nevertheless, caspase-3-like activity was not significantly induced, and the broad caspase inhibitor Z-VAD-FMK was not capable of protecting the cells. This argues for a minor role of caspases in the intracellular pathways leading to MeHg-induced cell death in CGC. Instead, proteolytic fragments obtained by specific calpain cleavage of procaspase-3 and alpha-fodrin were increased consistently in samples exposed to MeHg, pointing to a substantial activation of calpain. Notably, two antioxidants, 17beta-estradiol (10 microM) and the Delta(8,9)-dehydro derivative of 17alpha-estradiol J811 (10 microM), protected from MeHg damage, preventing morphological alterations, chromatin fragmentation, and activation of calpain. These findings underscore the key role of oxidative stress in MeHg toxicity, placing it upstream of calpain activation. The shielding effect of the 17beta-estradiol and the radical scavenger J811 is potentially relevant for the development of therapeutic strategies for MeHg intoxication.
小脳の顆粒細胞(CGC)は、メチル水銀(MeHg)(環境を汚染することで有名な神経毒性物質)の毒性を研究するために信頼できるモデルを提供した。
我々がその持参金を報告する現在の研究では、高い分子量のDNA破片の細胞収縮、核凝縮および構成によって示されるように、0.1 microMから1.5 microMまで及ぶメチル水銀はアポトーシスを活性化した。
しかしながら、カスパーゼ-3-類似の活動は著しく引き起こされなかった。また、広いカスパーゼ抑制剤Z-VAD-FMKは細胞を保護することができなかった。
これは、顆粒細胞の中でメチル水銀に引き起こされた細胞死に結びつく細胞内の経路のカスパーゼの小さな役割を示している。代わりに、プロカスパーゼ-3およびα-fodrinの特定のカルパイン(カルシウム依存性含硫タンパク分解酵素)の分裂によって得られた蛋白質分解を生ずる破片は、カルパインの本質的な活性化を指して、メチル水銀に露出されたサンプルの中で一貫して増加させられた。
顕著に2つの酸化防止剤、17beta-エストラジオール(10 microM)および17α-エストラジオールJ811(10 microM)に由来するデルタ(8、9)-dehydroは、カルパインの染色質分割および活性化を妨害するメチル水銀の損害から保護することがわかった。
これらの発見物は、カルパイン活性化にそれを上流に置いて、メチル水銀毒性における酸化のストレスの重要な役割を強調している。
17β-エストラジオールの遮蔽効果およびラジカル・スカベンジャーJ811は、メチル水銀中毒のための治療の戦略の開発に潜在的に考えられている。
4.考察
ビデオの内容について
2004.10.25のNHKスペシャル。10月に政府の責任を認める判決が最高裁でおこなわれ、原告の勝訴となった。あまりにも遅すぎる判決である。しかし環境省はこれを認めず2万人の申請に対して2300人しか認められていないのが現状である。認められないまま死んでいった患者は大勢いる。
1932年以降に新日本窒素肥料(現在のチッソ)水俣工場が行ったアセトアルデヒド生産時の触媒による副産物であるメチル水銀を含んだ廃液が、汚染処理を十分行わないまま海に流され、生体濃縮によって付近で捕れた魚介類を食べた住民がメチル水銀の中毒になった。当初、患者の多くが漁師の家庭から出た為、新日本窒素肥料などにより風土病との宣伝がなされた。それらにより「水俣奇病」などと呼ばれ、水俣病患者と水俣出身者への差別が起った。
水俣病の被害が大きくなったのにはいくつかの理由があると考えられる。まず、行政が水俣病と認めなければ保険が効かない。医者が水俣病と診断しても行政が認めないという事例は数多くあった。重症患者でなければ水俣病と認定されなかったため、発症の遅い潜伏患者はろくな治療も受けられず水俣病と認定されることもなく苦しむ結果となった。
なぜ行政は認定を怠ったのだろうか?
行政が水俣病と認めれば一人あたり1600万円以上の補償金がもらえることとなる。このため、国は認定に厳しい判断条件を作った。結局、この判断条件にそぐわない軽度の患者は切り捨てられ重症の患者しか認定されなかったのである。しかし、重症患者はほぼ手遅れであり軽度の潜伏患者などの人たちにたいして何の対策も行わなかったため無視された潜伏患者は発症しても水俣病と認められることはなく、現在のような事態に発展してしまったと思われる。
実際、原告側は補償金などどうでもよかったのだ。ただ水俣病と認めて欲しかっただけなのに国はそれを認めなかった。医師が診断しても結局認められないという所が非常に残念でならない。少なくとも医師は患者さんが肉体的にも精神的にも良くなれるように治療していくことが必要である。
今後、同じような悲劇が起こらないためには、行政が早い段階で的確な対策を取ることである。また医師は治療を行うと同時に、行政に対してどのような対策を行うべきかを提示し、それを認めていかなければならない。
治療方法について
現在、水俣病の対する有効な治療方法は見つかっていない。
リハビリを行ったり温泉によって症状を軽くさせることはできるが完全に治らない。
論文について
水俣病の治療方法は見つかっていないが、酸化防止剤のJ811と17βエストラジオールが小脳の顆粒細胞へのメチル水銀の沈着から保護しているという興味深い内容の論文があった。水俣病の主な症状は体内に入ったメチル水銀が人の中枢神経や脳細胞をおかし、手足のしびれや言語障害が始まり、やがて体中が痙攣し、意識の喪失、精神錯乱を引き起こすといったものである。
つまり、メチル水銀が脳の神経細胞に沈着することを防止すれば水俣病の重症化を防ぐことが出来るのではないかというものである。
メチル水銀による脳の神経細胞の細胞死にはカルパインが関係している。カルパインというタンパク質分解酵素が活性化すると、クロマチンを断片化し、核の凝縮、細胞質の収縮がおこる。これにより細胞のアポトーシスが誘導されて脳の機能が破壊される。メチル水銀はカルパインの活性化を促進させる効果があると思われる。
酸化防止剤のJ811と17βエストラジオールはこのカルパインの活性化を抑えることでメチル水銀による脳の神経細胞の細胞死を減らしている。
もしも、この論文の内容が実際に有効な治療方法として使用されるようになれば、メチル水銀による神経系の障害は飛躍的に抑えられるであろう。
5.まとめ
水俣病に関して最も考慮すべきことは、メチル水銀による環境汚染よりも水俣病の被害が拡大した背景にある。水俣病がメチル水銀による中毒症状であることの発見の遅れや、国の対策の遅れ、認定の不自然な判断条件など、公害というよりも人災ともいえる原因によって水俣病患者は長年苦しんできた。もっと明確な対応をしていればこのような事態にまで発展はしなかったであろう。
また、医師としてやれることは水俣病の症状をやわらげるためにリハビリを行ったり、治療薬を発見することである。精神的な手助けも医師の役割である。水俣病の歴史や背景を知ることは水俣病に対する偏見をなくすことにも繋がる。医師が何も知らないようでは水俣病患者の精神的な苦痛は永久になくならないだろう。
<参考文献>
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E4%BF%A3%E7%97%85