予防と健康管理ブロックレポート
1、はじめに
今回のレポートは、4/7および4/14の大槻先生の予防と健康管理ブロックの授業
で見た水俣病の裁判およびオーダーメイド医療のビデオと、自分が選んだキーワードに関連した論文を、インターネットおよび図書館から検索し、その内容をふまえた上で将来医師になる目で捉えた考察をする。私はPubMedからキーワードを2つ
入力し、いくつかの論文の中から1つを選び、その内容についてレポートする。こ
のレポートの目的は、インターネットを利用して医学論文の検索方法を学び、水俣病についての知識を深めることにある。
2、選んだキーワード
metal mercury,peripheral nerve
3、選んだ論文内容の概要
今回、私が選らんだ論文は、Toxicological Scienceに掲載されていた、David W.Herr,Sushmita M.Chanda,Jaimie E.Graff,Stanly S.Barone,Jr,Robert P.Beliles and Daniel L.Morganによる、「Evaluation of Sensory Evoked Potentials in Long Evans Rats Gestationally Exposed to Mercury (Hg) Vapor」です。この実験は、長時間水銀の蒸気にさらされた妊娠したネズミの感覚誘発電位の評価についてです。
水銀はニューロン機能を変化させることで有名で、また胎盤のバリアを横切ること
が示されています。今回の実験では、妊娠中のネズミに水銀の蒸気をさらすと、成
人した子ネズミの感覚ニューロンの機能が変化するかについて調べました。実験材
料および方法として、親ネズミが妊娠6〜15日に1日2時間、4mgの水銀をさ
らし、その量は親ネズミの最大許容量でした。そして、出産後140~168日のオス
またはメスの子ネズミの感覚誘発電位を調べました。対象となったのは、末梢神経
の活動電位、神経伝達速度、体性感覚誘発電位、脳幹の聴覚の誘発反応およびフラ
ッシュ誘発電位で、これらの測定をしました。結果として、立方メートル当たり4
mgの水銀にさらされた妊娠ネズミには何の変化もきたさなかったが、3mAの刺激
状態下におけるCNAPの振幅の減少がみられました。しかし、2回目の実験では、
この変化はみられませんでした。これは、刺激が緩和されたためだと考えられます。
これらの結果は、妊娠ネズミに前に述べた水銀量をさらしても、末梢神経または体
性神経、聴覚または視覚の種類からの誘発電位に何の変化も無い結果に終わりまし
た。
また、BaranskiとSzymczykによる1973年の動物実験によると、受精前21日間
に1日6時間、そして妊娠中7~20日に立方メートル当り2.5mgの水銀をさらすと、
出生後6日以内に死亡しました。そして妊娠中6~11または13~18日に1日3時間
1.5mgに変えると、神経成長因子に変化をきたし、妊娠中に水銀にさらされると脳
発達の栄養に関する因子に変化をきたすことが分かりました。つまり、妊娠中に水
銀にさらされると子供たちの行動に変化がきたすということが分かりました。
また、成熟したネズミを使用した実験では、8週間の間に1週につき4~5日、1日
5時間立方メートル当り480μg水銀にさらすと、後根神経節細胞のニューロンと
軸索領域におけるミエリン領域の減少がみられました。そして大人の動物(ここで
は成熟したネズミ)で、変化してしまった神経生理学的機能は元には戻らないとい
う実験結果がでました。
さらに、成人の人間が水銀にさらされた時の電気生理学的変化についてのレポート
もあります。それは職業的問題で、塩素アルカリに関連した職業についている労働
者では、神経伝導速度が減少したという報告があります。これは皮質の体性感覚誘
発電位の時間が減少したことであり、脳幹での聴覚の誘発反応に変化はありません
でした。
4、選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来意志になる
目で捉えた考察
授業の1回目のビデオでは、熊本県の水俣病裁判についてのビデオを見ました。水
俣病とは、メチル水銀中毒による手足のしびれが起き、その後歩行困難などに至る
症状で、重症例では痙攣や精神錯乱などを起こし、最後には死に至る病気です。胎
内で水銀中毒となった者の予後は不良とあるが、今回私が調べた論文では、妊娠中
のネズミがさらされた水銀量によって子ネズミが出産後に死亡したり、また神経成
長因子に変化をもたらしたとあります。また論文の中では、有機水銀を使用する労
働者に神経伝導速度の減少や、体性感覚障害がみられたとあります。しかし水俣病
の認定審査会では、ハンター・ラッセル症候群の三徴が揃った場合に被害者と認定
しており、水俣病ではむしろ感覚障害が目立ち三徴が揃わなかった人は認定されて
きませんでした。このことについて私は、基準を設けることは大切なことだが、応
用もきかせず基準外なら認めないという国の対応は間違っていたと思います。しか
し、その基準を決める根拠を作り出したのは医師であり、病気の人の生の症状や現
状を踏まえてなかったのではないかと思います。見学実習で訪れた長島愛生園の入
所者の方のお話で、当時の医師がハンセン病のことをもっと科学的な目でみて、治
療すれば治る病気であり、感染力の弱い病気であると言ってくれればあんな悲惨な
偏見な目にあわずにすんだとおっしゃっていたことを思い出しました。つまり医師
が現状を踏まえ、科学的な判断を下していれば、認定されずに長年苦しい思いをし
た人がもっと減っていたのではないかと思います。医師という立場の判断ひとつで、
多くの人達の人生を良いものにも悪いものにも変えてしまうのだということが分か
り、将来医師になった時、今回学んだことをしっかり踏まえた上で適切な判断を下
せるようになろうと思いました。また、ビデオの中に出てきた松本医師は、国から
水俣病と認定されなかった患者の診察を長年続けており、水俣病であると診断して
きました。これはいくら訴えても国から認定されなかった患者およびその家族にと
っては、水俣病と診断してくれることが救いになると思いました。この松本医師の
行いを見て、医師とは病気をみて治すだけでなく、病気も含めた患者自身を診察す
ることの重要さを改めて学んだような気がします。私も病気だけを治すのではなく、
患者の精神的苦痛にも考慮してそれを取り除いてやることのできる医師になりたい
と思いました。
2回目のビデオの内容は、オーダーメイド医療についてで、私が選んだ論文の内容
とは直接関連はしていません。しかし近い将来、オーダーメイド医療は確実なもの
になり、世間に浸透していくことでしょう。これの良い点は、薬による副作用が無
くなるなどがあるが、悪い点としては大量の検査や遺伝子を調べることにより将来
かかる可能性のある病気が分かってしまうなどの、個人情報が分かってしまうとい
う点です。これらの個人情報を扱うのは主に医師です。ですから、これからの医師
はより一層モラルが必要になってくると思います。これも医師のモラルおよび判断
ひとつで、その患者の人生を狂わしかねません。ですから、常識ある適切でかつ科
学的根拠のある(いわゆるBased Of Medicine)判断を下せるような医師になれる
ように、日々努力して行こうと心に誓いました。
5、まとめ
今回の予防と健康管理ブロックのレポートを通じて、インターネットを使用して
論文の検索方法を学び、論文(今回は英語の論文)の構成および書き方などを論文を
見ることによって学びました。また、水俣病の原因であるメチル水銀が身体におけ
るさまざまな作用について、論文中では主に体性感覚,神経伝達速度および神経成
長因子でどのような条件下ならどのように変化するかを学びました。やはりメチル
水銀は神経系に作用することが有名であるように、これらにマイナスの作用をもた
らしていることが分かりました。そして私は、水俣病裁判のビデオを見るまでは、
病気の裏に隠された国と患者団体とのやりとり、また国の対応により長年にわたる
患者およびその家族の金銭的・精神的に苦労がかかったという影の部分を詳しくは
知りませんでした。2004年の裁判で国は敗訴し裁判に負けたことは認めたにもかか
わらず、水俣病を認定しないという態度をとってきました。認定してしまうと行政
が莫大な補償金を支払うことになってしまうからでしょう。しかし、チッソ水俣工
場および国が行ってきたことが原因で、多くの患者とその家族の人生および生活を
狂わせたことを考えると、ビデオの中に出てきた人の対応は感情的にも許されるも
のではありません。論文中にもあったように、一度変化してしまった神経生理学的
機能は元には戻りません。メチル水銀により手足の麻痺や歩行困難の障害を持って
しまった患者は生涯、この障害と共に人生を歩んでいかなければならないのです。
ですから、政府の役割としては補償はもちろんのこと、水俣病患者と認定してあげ
ることにより、患者のやりきれない思いを少しでも和らげてあげ、また医師の立場
としてはリハビリをすることにより、日常生活への回復の手助けをしてあげ、また
精神的ケアをすることがこれからは必要なのではないかと思います。また今回のレ
ポートは予防と健康管理ブロックの授業でのものなので、水俣病を通じ、病気が発
生した時にはすみやかにその原因を解析し、公害ならばすぐに医師の立場として原
因物質の廃棄を止めるように国に訴え、二次的被害者を生まないようにしなければ
なりません。これこそが病気の予防であり、また国民の健康を管理する医師として
の役割だと思いました。このレポートを通じ、医師の社会に対する立場および責任
の重要性が改めて考えさせられました。将来私も、医師という責任ある立場で物事
を科学的に考え、それに対しての適切な判断を下し、患者の心も汲み取れる医師に
なりたいと思いました。そのためには学生のうちから、今できることをしっかり把
握し、それを実行するように心がけたいと思います。
感想:今回のレポートはワードにより提出するものでした。私は、あまりパソコン
が得意でなかったので、今回はじつによい経験ができたと思います。また、
水俣病についても病気以外の裁判の実態も知ることができ、とても自分の為
になりました。