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1.はじめに

予防と健康管理ブロックの授業ビデオで見た水俣病と遺伝子治療について考察し、学生それぞれが選択したキーワードによる論文の検索の仕方を学び、内容を考察する。

2.選んだキーワード

environmental destruction & ataxia

3.選んだ論文の内容の概略

ATM promotes apoptosis and suppresses tumor genesis in response to Myc
(ATMはアポトーシスを促進し、Mycに応じて腫瘍形成を抑制する)

c-myc発ガン遺伝子の過剰発現は、多くの人のガンの発達に関与します。c-myc発ガン遺伝子は、リンパで、間充織で、上皮由来のガンを含む腫瘍のかなりのパーセンテージで過剰発現します。Mycの活動に応じて、p53腫瘍サプレッサーは、アポトーシスを促進して、腫瘍形成を抑制するよう動かされます。p53腫瘍サプレッサーは、アポトーシスを促進することによって、さらなるMyc活動に応じて細胞増殖と腫瘍の進行を抑制します。この論文ではMyc過剰発現に応じてのp53誘導が毛細血管拡張性運動失調(ATM)キナーゼを必要とすることを証明しています。
扁平上皮組織でMycを過剰発現させているトランスジェニックマウスにおいて、ATMの不活化はアポトーシスを抑えて腫瘍形成を促進します。抑制が解かれたMycの発現は、トランスジェニック組織で始原トランスジェニックケラチノサイトとγH2AXとホスホSMC1 fociの形成においてDNA損傷を誘導します。これらの調査結果は、Myc過剰発現が生体内でDNAに損傷を与え、そしてこの損傷へのATMに依存する反応がp53起動、アポトーシス、腫瘍の発達の抑制のために重要なことを示唆します。

4.選んだ論文の内容と、ビデオの内容から自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察

水俣病は四大公害病のひとつとしてもうすでに過去の病気と思っていたので、今もまだ症状や認定基準に苦しみつづけている人がたくさんいることに驚きました。当初は原因がわからない中、おそろしい伝染病だとのうわさが広がって、「奇病」、「よいよい病」と呼ばれ、親戚付き合いや近所付き合いも絶たれ、患者やその家族に対するすさまじいばかりの差別が起こったり、熊本大学の調査・研究によって、1957年はじめころには、「水俣湾の魚が原因である」とわかってきたのに、国や熊本県は「水俣湾の魚をとったり、売ってはいけない」という通達や指導は一切しなかったこと、1959年11月には厚生省が「水俣病の原因はある種の有機水銀である」と発表したが、その汚染源がチッソ水俣工場しかないことが判っていたにもかかわらず、工場排水を停止させて汚染を止めることしなかったことなどを知り、愕然としました。普通に生活を送る中突如襲いくる手足のしびれや難聴・頭痛などの症状に、患者の人たちは最初は何も原因がわからずとても不安だったと思います。
水俣病はまったく新しい病気であることや工場の心ない嘘などによって、どこにも責任を取られることなく患者を増やしつづけた悲しい病です。患者に同情するとともに対応の遅い政府への不信感を感じました。
水俣病をはじめ多くの「公害」では、国が認定審査会を設置し、認定基準を定めています。自分の病気が水俣病であると思っても、熊本県や鹿児島県に「認定申請」をしなければ、検査を受けられないし、認定されなければ救国は、1971年に水俣病と認める基準を「汚染を受けた地域に住んでいて、感覚障害や視野狭窄などの症状のいずれかがあること」としていました。しかし申請患者が急増すると、1977年には新たに「水俣病判断条件」を作り、認定基準を厳しくしたのです。その結果、多くの申請患者は「水俣病でない」とされました。保証金目当てに認定を要求してくる人や、該当者全員に保証金を支給すると莫大な金額になることに対する対策ではあるでしょうが、それによって本当に救済が必要な人を無視してしまっていることは事実です。認定基準が時間の限り考えられたものなら救済されなかった人がいることはやむ終えなかったように思えますがその人たちの無念さを慮ると残念でなりません。
水俣病は戦いつづけた結果、2004年の最高裁で政府が責任を認めました。しかし国が水俣病と認定した患者は、町医者が水俣病と診断した約2万人のうち2300人にすぎず、原告と政府との溝はいまだに埋められてはいません。政府の対応は誠実さが伺えるものではなく、原告側と環境庁との対談では国は表面上では謝罪しているものの政府は原告の問い詰めをはぐらかすばかりで、裁判の判決により責任を認めることはしても遂行はしないことに原告側の怒りを感じました。政府が財政を圧迫できないことはわかりますし、賠償金を払わないためにはビデオのような対応になってしまうのも当然でしょう。しかし患者の尊厳を奪う権利は政府にはないと思います。患者と裁判して負けてもなお十分な被害認定をしなかったことには納得がいきません。私は今もなお政府が責任を逃れようとしていることに疑問を感じます。政府にも心を痛めている人がたくさんいるとは思いますが、やや人道から外れているように感じました。
水俣病で得をした人はいません。悲しみを生んだだけです。また、確たる悪人はどこにもいなくて誰もが被害者になりました。裁判の有効性も怪しくなる結果になりました。あまり知られていないこの事実を多くの人に認識してもらい、改めて患者が少しでも癒され、また科学の発展によって水俣病のような悲劇が二度と起こらないことを望みます。
また、医学の発展で全ての患者のQOLが向上しつつあるのを知りました。オーダーメイド医療とは患者の体質の個性を遺伝子レベルで解析し、より効果的に治療しようという試みです。これまでの医療では同じ症状の患者には同じ薬を投与することがほとんどでした。しかし効果のある人もいれば効果のない人もいて、効果の見られないまま病気が治らず死んでいった患者もいました。ところがオーダーメイド治療は患者一人一人の薬の効果や副作用を予測でき、効率の良い治療を行うことができます。その好例はがん治療で、患者に合った抗がん剤を選ぶことで副作用を少しでも減らすようにできます。また、余分な薬を使うことがなくなるので患者の経済的負担が減り、また国の医療費の負担も減らせるといった利点もあります。
オーダーメイド医療は画期的で恩恵が多く今後オーダーメイド医療の発展・浸透が予測されますが、問題点もあります。遺伝子情報は重要な個人情報なので決して流出や他用があってはいけないのです。よって患者への説明や十分な議論が必要で、技術や体制も慎重に確立しなければならなく、オーダーメイド医療が浸透するには時間がかかると思われます。

5.まとめ

世の中には様々な患者がいて、苦しみ方も人それぞれです。しかし医師は患者を選ぶことは許されず、現れた患者をキュアもケアもしなければなりません。今後、医療技術が発展しインフォームドコンセントはますます重要になることが予想されます。また、医療の進歩や高齢化社会が進み患者の層や政治における医療のあり方も変わるでしょう。医師は変化に対応できる冷静な目を持たなければならないのです。現状も認識しなければなりません。現在、水俣病のように不当に苦しんでいる患者がいることは知っていなければならない事ですし、この事実を埋もれさせないようにし、力にならなければなりません。目の前の病だけに捕われず、広い視野と柔軟さ、正しい道徳心を持つ医師を目指すことの重要さと必要性を感じました。