【レポートサイト top】  
------------------------------------------------

予防と健康ブロック レポート

            

1、はじめに
今回、予防と健康のレポートを出すにあたり普段からは考えることのない公害というものについて考えることのできるいい機会を与えてもらったと思います。

2、選んだキーワード
    僕が選んだキーワードは、喘息・塩基配列、です。なぜこのキーワードを選んだのかというと、公害としては三重県四日市市で猛威を振るった病気であり、僕自身ずっと悩まされてきた病気でもあります。だから、このキーワードにしました。

3、選んだ論文の内容と概略
 1つ目に、佐野公仁夫先生の論文、「DNA免疫法によるアレルギー性疾患の治療」を読みました。その概略は
 「近年、アレルギーが急増している。その背景として病原微生物の現象を一因と考えられる衛生仮設が提唱されている。微生物のDNAにはアレルギーを抑制できる作用が隠されているのである。
 DNAのCpG配列は6個の塩基を基本とする配列で、中心部にしシトシン(C)とグアニン(G)が並ぶ。この配列の特徴は、哺乳類には少なく、逆に微生物には多く認められることである。その違いを利用するように生物は進化してきた。そして哺乳類は、
DNAから蛋白質への翻訳とは無関係に、CpG配列そのものを微生物の侵略と認識して、微生物を排除するための数々の免疫・炎症反応を発動する。Th1細胞活性化もそのひとつである。
 アレルギーは、アレルゲンを抗原として抗原提示細胞によって活性化されるTh2細胞の過剰反応がその原因である。Th2細胞はB細胞に結合してIgE抗体の浸潤を引き起こすIL-4、骨髄で好酸球の浸潤を引き起こすIL-5の放出を促すのである。これによってIgE抗体はマスト細胞と結合、炎症物質であるヒスタミンを放出。好酸球は同じく炎症物質であるロイコトリエンを放出するのである。CpG配列で誘導されるTh1細胞はTh2細胞に抑制的に働く。CpG配列を多く含む微生物への暴露がアレルギー増加を抑制すると考える衛星仮説の根拠のひとつである。
 そこで逆に、CpG配列を利用してアレルギーを治療する戦略を考える。筆者らはマウス喘息モデルにおいて、CpG配列を含むDNA(以下CpG DNA)のアレルギー抑制作用を検討した。卵白アルブミン(OVA)によって誘発される気道好酸球性炎症は、CpG DNAとOVAを直接結合して投与すると効率的に抑制された。抗アレルギー効果の背景にはCpG DNAが"糊"のように樹状細胞に接着するという新事実があった。その結果、CpG DNAと結合してある抗原が樹状細胞に効率よく取り込まれ、結果的にアレルゲン特異的Th1細胞の活性化増強へとつながった。toll-like receptor 9 は、CpG DNAによるTh1細胞誘導には必須であるが、CpG DNAの樹状細胞への接着自体には無関係であった。
 GpC とアレルゲンの結合体は、アレルギーに対する治療薬として海外ですでに治療が進行中であり、良好な結果が報告されている。」

 二つ目に、保富康宏先生の論文、「膠原病・アレルギー疾患に対する遺伝子治療 アレルギー性喘息」を読みました。その概略は
 「呼吸器におけるアレルギー性炎症に起因する喘息はアレルギー疾患であるため好酸球の浸潤やIgEの増加を伴うTh2タイプの免疫反応を誘導する。これは、抗原として認識されたアレルゲンが抗原提示細胞によりTh2細胞に提示されることにより、Th2細胞を活性化し、さらにはTh2細胞がIgE抗体の浸潤を引き起こすIL-4、好酸球の浸潤を引き起こすIL-5を放出するため免疫反応が起こるのである。ここでは、IL-4がB細胞のIL-4のレセプターへの結合を阻害する変異体を分泌する遺伝子組み換えベクター(DNAワクチン)による喘息に対する遺伝子免疫療法の基礎研究を述べる。
 IL-4は生体ではcommonγreceptor(γc)、IL-4receptorα(IL-4Rα)およびIL-13receptor α1(IL-13Rα1)の3つのレセプターに結合する。
 IL-4のC末、N末近傍に存在するs-s結合はレセプター結合に対する立体構造を保持している。この立体構造を変化させるためにヒトではアミノ酸の121番目(R)と124番目(Y)をDもしくはEに置換することでレセプターの結合性に変化をもたらすことが可能になる。これにより、B細胞にIL-4、IL-13の刺激が伝導されなくなる。
 喘息に対して行われる最も効果的な治療法として用いられているものにステロイドの使用があげられる。IL-4の直接的な抑制は中和抗体投与することが容易である。なぜなら、IL-4のレセプターの投与は自己抗原であり、抗体産出の危険性はなく有効な治療法であるからだ。しかしながらIL-4レセプターはIL-4の結合のみ遮断し、もう一方の喘息の病変に関与しているIL-13に対してまったく阻害効果を示さない。ここで述べるIL-4変異体はIL-13の阻害も示し、有効な喘息治療になりえると考えられる。しかしながらIL−4レセプター投与とIL−4変異体投与の両者に共通している欠点は生体内における極端な半減期の短さと効果を得るための高い血清中の濃度の維持の必要性である。
 マウス喘息モデルを用いた実験では、マウスをOVAで感作し、その後OVAを吸入することによるOVA誘導喘息モデルマウスを用いてIL−4変異体の遺伝子免疫療法の可能性を検討した。IL-4に二ヵ所変異を入れた発現プラスミドを投与した。OVA感作マウスにOVAを投与すると肺胞洗浄液(BAL)中の蛋白質、好酸球のいずれもが著名に減少しており、さらに変化は肺に限局したものではなく血清中のIgE抗体も治療過程で明らかに低値を示した。同時に、Th1タイプのサイトカイン(IL-2、IL-12)の発現は抑制されていた。このことは生体での免疫反応の誘導はTh2タイプであるが、IL-4は変異体が末梢でIL-4レセプターへの結合を阻止していると考えられた。以上のように、IL-4変異体を用いた喘息に対する遺伝子免疫療法は喘息モデルマウスに対し非常に有効であることが示された。
 喘息の予防は、大別すればTh1への誘導とTh2への阻害が考えられる。Th1へ誘導するにはTh1タイプのサイトカインの投与が最も直接的であるが、サイトカインの副作用や効果の持続において必ずしも実用的ではない。このような直接的なTh1タイプのサイトカインを間接的に誘導する方法として菌体の投与がある。著者らは菌体そのものではなく、BCGなどの抗酸菌のAg85B(α抗原)を用いた遺伝子免疫療法を試みている。Ag85Bは抗酸菌がもつ分泌蛋白質であり、これにより抗酸菌感染においてはTh1タイプの免疫反応が誘導されている。このAg85B遺伝子を組み込んだプラスミドを同様にマウスに投与すると喘息モデルマウスでの発症を抑制することができる。現在はAg85Bを遺伝子の形ではなく組み替え蛋白として得ることに成功しており、喘息のみならず他のアレルギー・アトピー性疾患への応用を検討している」

4、選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察
 僕は今回、喘息と塩基配列というキーワードで調べてきました。四日市喘息はビデオで見た水俣病と並ぶ公害で喘息は公害としても猛威を振るった病気です。四日市喘息は1960年代に三重県四日市市で石油コンビナートの排煙に含まれていた硫黄酸化物が原因で起こった公害です。硫黄酸化物の空気中での濃度が高くなればなるほど、喘息を引き起こす割合は高くなります。この当時、四日市市では住民の3%以上が喘息患者という事態になっていたそうです。それにより訴訟が起こり、硫黄酸化物環境基準の改正、公害健康被害補償法が設けられるなど対策が立てられました。
 喘息という病気は、医学が進歩した現在でも完治させるのは難しい病気です。確かにステロイド剤、テオフィリン、ベータ刺激剤といった薬剤は喘息に有効ではありますが、一時的なものであり喘息を完全に治療することはできません。しかし、今回僕が読んだ二つの論文には更なる喘息治療の進歩が書かれてありました。遺伝子免疫治療法よってアレルギー反応のほぼ最初の段階での治療を可能にしようとしていたのです。アレルギー反応はまず、体内に抗原となるアレルゲンが入る。次に、抗原提示細胞によってT細胞への抗原提示が行われる。これによって活性化されたT細胞(アレルギー反応ではTh1細胞ではなくてTh2細胞)はIL-4、IL-5を放出する。IL-4はB細胞に結合してIgE抗体の浸潤を、IL-5は骨髄での好酸球産出増加を促す。IgE抗体はFcレセプターを介してマスト細胞に結合し、アレルゲンとの反応を経てマスト細胞のヒスタミンを放出を引き起こします。好酸球は肺に移動してアルギニンを放出して肺を細菌、ウィルスから防御するのと同時にロイコトリエンという炎症顆粒を放出する。これらの現象によってアレルギー反応は起こります。現在使用されている薬剤のほとんどはIgE抗体、好酸球などの阻害剤です。これに比較して、遺伝子治療法ではもっと前の段階のIL-4、Th2細胞への阻害剤となります。こうしてアレルギー反応を抑えるのです。これによってアレルギー、喘息のさらなる展望が見えてくるのではないのでしょうか。

5、まとめ
このように、喘息には現在いろいろな治療法が考え出されています。しかし、今でも完治が不可能な病気なのではないのではないでしょうか。だから四日市喘息のように重度の患者を救う手立てがないのも事実です。しかしながら喘息は本当にいろいろな治療法がかんがえだされていますから近い将来きっと完治するようになり、過去の病気と言われる日もそう遠くはないでしょう。僕自身、医師になって喘息の完治に尽くしていきたいと思います。