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1 私たち3年生は予防と健康管理の授業でオーダーメイド医療についてのビデオを見た。遺伝情報を調べることで、患者さんの薬の感受性が予測できれば、ひとりひとりに最も効果的で、副作用のない薬を使って治療することができる。オーダーメイド医療が21世紀の医療をどう変えていくのか興味を持ったので調べたこと、考えたことについて以下に述べたい。

2 キーワード   塩基配列 骨粗鬆症

3 1つ目は骨粗鬆症予防のための遺伝子マーカーの開発についての論文である。糖尿病、高血圧、心血管障害や癌と同様に骨粗鬆症は多因子疾患であり、1家系についても遺伝因子が関係してくるため、遺伝因子を同定するのは非常に困難である。最近、骨代謝に重要な役割を果たすと思われる、いくつかの遺伝子座の骨粗鬆症への連鎖や遺伝子でDNAレベルでの多型性が骨代謝動態あるいは骨粗鬆症のリスクに強く反映されることが報告されている。これにより、今まで漠然と体質として捉えられてきた遺伝的背景を分子レベルで解析できるようになったが、骨粗鬆症の分子生物学的解明はいまだ途上にあるといえる。遺伝子多型とは、点突然変異、反復配列などが主に固体の表現型に大きな影響を及ぼさない非コード領域に蓄積することにより生じた遺伝子の多様性である。このような多型はヒトゲノム上で200〜500塩基対に1つと比較的高度に存在すると言われている。これに対してアミノ酸をコードする遺伝子領域に変異が起こると個体にとって明らかに不利となるような変異は淘汰されるため保存、蓄積されにくいと考えられる。著者らはまずゲノム上に存在する候補遺伝子近傍のCA反復配列多型マーカーを用いた相関研究と連鎖解析を行った。結果・考察はIL-6,TNFA遺伝子内あるいは近傍の遺伝子の多型もしくは変異が骨代謝に影響し、骨密度の変化をもたらすことが実証され、骨粗鬆症の遺伝的因子のひとつと考えられた。さらに、様々な人種、集団において検討を行うことにより、遺伝子の骨粗鬆症発症への関与を明確にできる可能性が示唆された。そこで著者らは次に骨代謝に影響し骨密度の変化をもたらしている可能性があるIL-6およびTNFA遺伝子の遺伝子内あるいは近傍の遺伝子変異もしくは多型の検索を行い骨密度との相関を試みた。結果・考察はIL6遺伝子のプロモーター領域における遺伝子の多型が骨代謝に影響し、骨密度の変化をもたらすことが遺伝的に実証され、骨粗鬆症の遺伝的因子の一つとして考えられた。結論としてIL6遺伝子のプロモーター領域におけるSNPsが骨粗鬆症の要因の一つと考えられた。今後、IL6遺伝子のSNPsを遺伝子マーカーとして用いた骨粗鬆症の早期予防への応用が期待される。
2つ目はヒトklotho遺伝子多型についての論文である。老年女性の骨量は主として以下の3つの要素によって決定される。第一は青壮年期における最大骨量、第二はエストロゲン欠乏に起因する閉経後の急激な骨量減少、第三は加齢・老化による緩徐な骨量減少である。これら3つの要因はそれぞれ独立した分子遺伝学的背景を持ち、どの一つが異常でも老年期で骨粗鬆症となる。したがって、老年女性の骨粗鬆症の病因を考える場合、どの要因に起因するかを患者ごとに考えることが必要である。そこで著者らは、寿命の短縮・動脈硬化をはじめヒトの老化に極めて類似した多彩な病態が常染色体劣性遺伝する新しい老化モデルマウスの系統を確立し、このマウスにおいて欠損している新規遺伝子klothoを同定した。klotho欠損マウスの骨密度は野生型マウスに比べて減少しており、これは主としてヒトの老化に伴って見られるのと同様のひ薄化によるものだった。本老化モデルマウスの骨粗鬆症の背景には骨芽細胞のみならず破骨細胞の分化障害に基づく骨形成と骨吸収の低下が存在することが明らかとなった。そこで著者らはヒトklotho遺伝子の骨粗鬆症への関与を検討するため、klotho遺伝子のsingle nucleotide polymorphisms(SNPs)のスクリーニングおよび検出しえたSNPsと骨密度との関連を調べた。結果・考察はklotho遺伝子多型はこれらの因子と関連を示さなかったが、高齢の閉経後女性の骨密度と相関を示し、閉経前女性や、比較的若い閉経後女性の骨密度と相関がなかった。このことは最大骨量や閉経による骨量減少ではなく、加齢による骨量減少の病態生理にklotho遺伝子が関与していることを示唆している。老化による骨粗鬆症の病態は決して単一の分子以上によって説明できるものではなく、局所因子の異常による骨芽細胞の機能低下を主原因として、それに修飾して起こるものと推測される。

4 私たちヒトの体は60兆個もの細胞からなりたっており、その細胞の1つ1つには全く同じDNAが含まれている。DNAは4つの塩基(A:アデニン、T:チミン、C:シトシン、G:グアニン)から構成され、1つの細胞内のDNAは約32億個もの塩基からなり、その並び順が私たちの体をつくる設計図になっている。このDNAには全ての遺伝情報が含まれ、この遺伝情報の1つ1つが遺伝子であり、その数は3〜4万個と言われている。遺伝子によって塩基配列は異なり、その働きも違う。同じ遺伝子でも個人によっては1部塩基配列が異なる場合があり、その塩基配列の変化する場所によっては遺伝子の働き具合が変わるものがある。遺伝子の働き具合が変わることによって病気にかかりやすい、かかりにくい等の違いがでてくる。多くの疾病は、その人のもつ体質(遺伝要因)と感染症や環境などの影響(環境要因)が関与して起こる。病気の中には、遺伝要因が圧倒的に影響しているものから、両者が複雑に絡み合って起こる疾患まで様々である。遺伝要因を知り、それに対応した生活習慣をおくることによって、将来的にその病気を防ぐことにつながる。
患者さんはいろいろな薬を飲んだり投与されたりしていると思われるが、必ずしもある薬を飲めば全員に効くわけではない。また一部の方には、非常に強い副作用を示すことがある。医療現場では、病気になると薬を処方し、効かなかったら別のものに変えたり、副作用が出たら量を減らすとか、この薬は止めるようにするという形で、患者さんの様子を見ながら対応している。従って、結果を見てからこの薬が合わないからちがうものにしよう、この薬はこの患者さんにはきつくて副作用が出ているから止めよう、という形で使い分けている。結果として、こういうことをするのではなくて、あらかじめ、この薬は効きやすい、この薬は具合が悪いということが分かれば、より安全に、より効率的に薬を使うことが出来るだろう。特に、副作用の場合には、非常に重篤な副作用を示してしまえば、取り返しがつかないということも当然ありうるから、あらかじめ副作用を回避することができるというような医療とは、患者さんにとって非常に重要である。今や遺伝子の情報を使うことによって、副作用のリスクをある程度判定することが出来る時代になりつつある。
抗生物質、解熱剤、てんかん、風邪薬などを飲むことによって、全身が火傷の様な症状を示す副作用がある。このようなものも、今や体質だから仕方がないといって諦めるのではなくて、患者さんのご協力さえ得られれば何らかの答えを出すことが出来るというように考えられている。今まで駄目だとか体質だと言ってきたものを科学的に証明できる時代になりつつある。オーダーメイド医療で、薬の副作用が出やすい体質を持っている、つまり薬の副作用が出やすいような遺伝暗号を持っている人は、遺伝子の情報をあらかじめ保管しておくことによって、病院である薬の処方を受けた場合に、コンピューターがこの患者さんはこの薬は危ないですよということを、警報で知らせて患者さんの副作用を回避するというような医療の仕組みがつくられることが望ましいと思う。
日本は先進国の中でも極めて早く高齢化社会を迎えつつある。ただ単に長生きをするのではなくて、病気にならずに健康で長生きすることが重要だと思う。つまり、病気を予防すること、病気の重症化を防ぐということが重要である。自分がどういう病気になりやすいかが分かれば、生活に気をつけながら病気になるということを防ぐということも、可能になってくるだろう。
最後に補足ではあるが、加齢による骨粗鬆症は、ビタミンD(カツオ・サバ・マグロ・干し椎茸・レバー)、カルシウム(乳製品・大豆製品・小魚・緑黄野菜・海草など)を意識して多めに摂取することに加え、適度な運動をすることで骨に加重をかけることによっても防ぐことができる。遺伝子治療も大事だが、上記のような患者さんにとって身近に感じられるアドバイスもできるような医師を将来目指したい。

5 病気の原因がわかり、薬ができる、予防ができる、薬を有効に使うことができる部分がオーダーメイド医療の光の部分である。しかし、当然ながら悪用しようと思えば生命保険などに入る時に差別をする、あるいは社会差別に繋げようと思えば繋げることが可能である。しかし今ベッドで苦しんでいる方、いろいろな副作用で苦しんでいる方にとっては、新しい医療、良い医療が必要である。光を最大限にして影を最小にする為には、法律を作って遺伝子を悪用しないような抑止するということが必要であると思う。生命保険などの差別を生まないような法制度の整備も必要だというようにも思う。アメリカでは、既に2003年の10月に遺伝子差別を禁止する法律が国レベルで可決されており、遺伝子を差別に用いてはならないということが明確に打ち出されている。また遺伝子が差別を生むということがよく言われるが、決して遺伝子が差別を生んでいるわけではなくて差別を生んでいるのは人の心であり、この遺伝子の問題にかかわらず様々な差別を防ぐために私たちは、みんなが違っていてもそれを理解し合うという教育をする必要があると思う。だから遺伝子の違いというものを通して、みんなが違っているのだということを認識して個々を大切にできるようになることを望む。差別を生む危険性を、一方的に非難して遺伝子の研究を妨げても、そこからは何も生み出されないというように思う。みんながお互いに知恵を絞りあって、光を最大にして影を最小にするという努力を更に努力をし続けていけば更なる医学の発展に繋がると考える。