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予防と健康管理レポート
<はじめに>
私がこの二つの単語、つまり環境汚染とフリーラジカルを選んだのはひとえにフリーラジカルという単語の響きに魅かれてという点が大きい。もともと私は聞きなれないものに興味を持つ性質なので、フリーラジカルというものを目にしたときにこれを選ぶことは心に決めていたが、今となっては結果的にそれはよい判断であったと思える。環境問題としての放射線や紫外線が一体実際どのように作用するのか、そしてその随所にフリーラジカルというものが出てくるということを知り、その内容を大まかではあるが理解することに繋がったからである。
<KEYWORD>
環境汚染 フリーラジカル
<概略>
高線量被爆患者の治療とその問題点。
鈴木 元 放射線影響研究所臨床研究部長。
放射線感受性が高い細胞には、未熟な細胞、細胞分裂の頻度の高い細胞、。将来細胞分裂回数の多い細胞が該当する。被爆の問題点は肝細胞の減少による新陳代謝の阻害で、細胞欠落症である。放射線はフリーラジカルを生成し、組織障害の原因となる。高線量被爆患者の治療には、細胞欠落症の治療と組織障害の最小化を避けては通れない。
放射能は電子を弾き飛ばし、安定した分子をラジカル化する能力がある。ここには二個同時に失いとあるが、実際はひとつでも良いようである。こうして生まれたラジカル分子が引き起こすDNA損傷や、放射線による直接的な、アポトーシスを引き起こすシグナルカスケードの原因となる脂質セラミドの遊離の促進、放射線によって誘導されたプロ炎症性サイトカインもしくは炎症性サイトカインによる直接、間接作用(循環障害など)によって、アポトーシスもしくはネクローシスを誘導する。この3つが放射線の急性障害である。また、DNA修復や細胞周期にかかわる遺伝子が放射線により破壊されると、遺伝子の損傷は蓄積増幅され、無効造血などを引き起こすこともある。
哺乳類に関しては成熟リンパ球や赤芽球、精粗細胞、肺胞細胞、骨髄細胞、腸クリプト細胞などが放射線感受性が高く、筋細胞や神経細胞は放射線感受性が低い。細胞は全部で8群に分けられ、急性放射線障害では1〜3群の障害が問題となる。ただし筋細胞などでも、小血管の内皮障害などによる二次的な障害もある。小腸を例にとった場合、クリプト細胞という肝細胞が粘膜上皮を供給しているが、10Gy(グレイ、1Gy=1J/kg)以上の急性被爆がある場合、2〜3日後にはクリプト構造の消失がおこり、同時に粘膜を覆っていたはずの分泌性IgA抗体(リンパ組織が供給)もリンパ球の減少によって減少し、二重の意味で消化管粘膜の抵抗性を減弱させる。マウスでは6Gyで消化管から肝臓への最近移行が始まるし、高線量被爆はそれ自体でサイトカインによる組織障害の増幅もある。ちなみに被爆後の症状発現までの潜伏期は細胞のサイクルによるため場所場所でまちまちである。
臨床的には、被爆が疑われた場合、リンパ球がなくならない場合にリンパ球を培養し、染色体異常頻度を算定して被爆線量の推定することが必要である。JCO事故(東海村)で最も被爆染料が多かった人は被爆三日目にしてリンパ球はゼロになった。臨床的には1〜6Gyの場合は放射線感受性の高い免疫系と造血系が問題となる。60日以内の半数致死はチェルノブイリ事故患者では6Gyである。6Gy以上では軽度の消化管障害、放射線肺炎、消化管障害、放射線皮膚障害など重くなるにつれてさまざまな障害が現れる。
治療としては、骨髄障害に関しては、G−CSFやGM-CSFなどで治療する。上記のような消化管での障害では、消化管除菌(SDD)が重要と考えられている。(免疫能低下のためと考えられる)。JCOの一例で、役26Gy被爆した第一症例では、移植したものの移植成立二ヶ月移行に造血脳が低下し、3ヶ月で死亡したために肺臓炎の兆候はなかったが、全身に2〜3度の放射線皮膚障害が発症した。再生傾向に乏しく死体皮膚もしくは培養上皮細胞移植が行われた。
放射線障害は全身の組織の幹細胞が障害を受ける全身病であるとともに、プロ炎症性サイトカイン、炎症性サイトカインの過剰産生状態である。骨髄および皮膚に関しては幹細胞を移植する治療法が確立しているが、その他の組織に関しては炎症制御、繊維化制御と組織幹細胞の増殖刺激が治療の主体になる。しかしいまだそのプロトコルは確立していない。
化学物質汚染の基本課題としての揮発性炭化水素類問題 -活性酸素(ヒドロキシラジカル:・OH)との反応性に関連した大気汚染問題-
田中 正宣 大阪市立環境化学研究所
揮発性炭化水素類(VHCs)の環境・衛生問題の概要とその背景として、まず、VHCsの問題は、それ自体が持つ強い毒性であり、それらの反応性に起因する間接的影響である。ベンゼンは前者で、メタンによる地球温暖化や大気中での二酸化窒素やオキシダントなどの生成は後者に該当する。そしてその双方ともがVHScと活性酸素との反応性に深く関係している。また、これはほかの非常に多くの有機汚染物質と呼ばれる化合物の環境や生体での挙動と深くかかわる問題でもある。それは多くの有機物質がVHCsを原料としているからである。そしてこれから挙げる問題は@ほかのVHScと違いメタンはなぜ地球温暖化に深くかかわっているのかAほとんどのフロンはメタンやエタンと同じ炭素骨格を持つが、どのような相違によってオゾン層破壊や強い地球温暖化を引き起こすのか。B代替フロンはフロンやVHScの活性酸素に対するのとどのような反応性の相違を考慮して考案されたのか。Cメタン以外の活性酸素に対して反応性の高いVHScはどのような大気汚染をもたらすのか。DVHScが体内に取り込まれた場合どのように活性酸素との反応を起こすのか。Eポリ塩化ビニフェルやダイオキシンに代表される難分解性有機化学物質の多くがベンゼン環に塩素原子がついた化合物であるが、これらの蓄積性や毒性を考察する場合基本構造のベンゼン環で起こるどのような活性酸素との反応性の検討が必要なのか。などである。
炭化水素類には無数の種類があり、異性体などを加えるとなお数が増える。これらが環境・衛生問題として浮上してくるようになったのは1950年代以降であり、これは石油が多量使用されるようになったからである。世界の化学物質生産量は1940年代では約100万トン/年であったが、2000年では約4億トン/年へと、60年で約400倍に急増している。Cの1〜4までは常温で気体であり(ガスライターなどはブタンが主である)、5〜9までは液体で、C10以上では揮発しがたい成分や固体が増えてくるためにVHScとするならC1~9までが問題となる。
メタンは大気中に最も多量にあり、不完全燃焼で容易に発生するために排気ガス中にもかなり含まれている。自然由来も非常に多く、3/4は自然由来である。C2のエタン・エチレン・アセチレンの3つは主に人為発生源からの排出が多い。エチレンは石油化学工業の主原料であり、そこからの排出の半分である。C3~5では、プロパンはLPGの主成分であり、タクシーなどに使用されているためその排気ガス中ではこれらが大きな比率を占めることになる。またエンジンの中でほかのVHCsからの熱分解でも作られることもある。反応性も毒性も強くないためにあまり注目はされないものの、プロポレンは汚染物質の迅速な生成に深く関与することが指摘されている。C6~9では、脂肪族ではあまり問題とはなっていないが芳香族ではトルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどが溶剤やガソリン添加物として大量に使用されている。これはほかの脂肪族より溶解性、脂溶性、ラジカル反応性が高いためである。
ただし揮発物質もただ蓄積するだけではなく、大気中には「・OHによる除去装置」がある。紫外線がNO二つから酸素ラジカルと二酸化窒素をつくり、そこからオゾンができたり、RHと反応したりする。RHには、メタンやエタン、エチレンなどが供給される。この強力な「・OHによる除去装置」ではVHCsだけではんかう、さまざまな大気汚染物質(COなど)も取り除かれている。ただしVHCsが大気中に無い場合、NO,NO2、O3の平衡状態が出来上がる。光化学スモッグとよばれる高濃度O3を生成するにはVHCsが大量に必要で、それによって「・OHの繰り返し反応」が起こることが必須である。ただしメタンの場合では反応速度が非常に遅い。これはまた別の問題を引き起こす。
・OHとの反応定数では、VHCsはメタンと非メタン炭化水素類(NMHC)に分けられる。反応定数が大きいNMHCはあまり蓄積の心配は無いが、除去過程では「・OHの繰り返し反応」が起こるために、発生源付近ではスモッグなどの大気汚染が引き起こされる。つまり迅速な除去に伴う二次的な大気汚染である。メタンは少しずつ対流圏上昇域に増えて、温暖化に寄与することになる。温暖化への寄与はCO2が66%で、メタンは15%である。メタンの対流圏での寿命は40年で、結局ほとんど分解されないままオゾン層に達して、破壊の原因となる。フロンは10000年と果てしなく長いので、結局対流圏での除去は一切無いと考えられる。
深刻な大気汚染は、その直接的な原因の減少だけでは意味が無く、たとえば無毒であるNOも酸化されてNO2となれば光化学Oxの生成も抑制されない自体が生じるが、NOについて基準を設定している国は無い。VHCsの光化学反応性の違いを認識し、それが数値化されていることを知り、また、反応性が高いVHCsは発生源付近で特に注目する必要があることが知るべきこととして重要なものである。
<考察>
環境問題が人体に与える影響のプロセスは、一つ目の論文のような直接的なものと、二つ目の論文のような間接的なものがあると考えられる。しばしば表に出るものは直接的なものではある。なぜかというと誰が原因かは比較適用にわかりやすいからである。二つ目のものは誰が原因といえば全員としかいいようが無い。医者としてのケアでは、まずその予防策を広く知らしめるという点、また、起こってしまった場合の迅速なアフターケアであると考える。たとえば一つ目の論文にあるように6Gyを超えたばあいにリンパ球の培養が重要であるのは、たとえば0になったとしてももし0になる前にPHSCなどが残っていたならば自分で自分自身に移植ができるからだと考える。この場合拒絶反応はいうまでも無く0であるので非常に有用である。公害などの病気は恐らく臨床で見ることはあまり無いので経験をつむということは不可能に近いであろうが、ひとたび起こった場合にその対応の迅速さはかなり要求されるものと考える。二つ目の論文については、意識の変化以外に対応策はないと思うが、たとえば紫外線によるものが茫洋としたものではなく具体的なものであるならばその意識も少しは変わるのではないだろうか。病等に対するもので知識不足の偏見というものがある。伝染病などでよくあるものであるが、それについても具体的な知識を得ることによって緩和されるのではないだろうかと思う。
<まとめ>
環境汚染とフリーラジカルを選んだものの、レポート自体が館外文献を含め7つほどしかなかったためにあまり選択肢の幅が広くなかったのが少し残念である。あまりフリーラジカルはメインではなく公害のプロセスの一端として登場していた。フリーラジカルは何かしらの原因によって生じる細胞傷害性の高い分子であり、紫外線による殺菌もこれを利用したものであるらしい。原因があるから結果が当然のようにあるのではなく、原因があり、その原因が原因たるために結果がプロセスの終末に現れるということを再認識できた。プロセスの理解なくして結果が結果たりえることは無く、また同様に原因が原因たる理由を知らずして原因を語るのは少しおこがましいようにも思えてきたが、現実意問題として原因と結果があれば表面上は繕える。私はプロセスに重点は無いもののそのプロセスにこそ根源があるとの認識をこれらの論文を通じて知ることができたように思える。
<参考>
フリーラジカル(遊離活性其、自由で過激な)とは、不対電子をもつ不安定な分子であり、酸化力の強い分子といえる。
<参考ページ http://www.1kampo.com/freeradical.html>
活性酸素は酸素が他の分子と反応しやすい形となったものであり、またフリーラジカルは通常2つの電子が入る電子軌道に1つの電子しか存在せず(不対電子)不安定な状態となった物質。活性酸素のうちスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルやパーオキシルラジカルはフリーラジカルである。
外線照射中に生きた動物皮膚が生成するフリーラジカルの測定に成功
-皮膚の老化や皮膚がんのメカニズム解明・抗酸化剤評価に寄与-
<参考ページ http://www.nirs.go.jp/news/press/2003/01_28.shtml>