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レポート

1、はじめに
 予防と健康ブロックの大槻先生の講義中に二回に渡り水俣病とSNPに関するビデオを視聴した。また、公害・心筋というキーワードを元に論文を二編選び、読んだ。以下にそれらの内容とそれを踏まえて医学生の視点を持っての考察を述べた。

2、選んだキーワード
 公害・心筋
 上記の二つのキーワードを選択した。医学部を志望した動機として循環器に携わりたいという思いがあった。そして、これまで二年間と少し、医大生として、講義・実習などを行ってきたがやはり、心臓を中心とした内容には自然とひかれるものがあり充実した勉強ができた。だから心筋という文字を見たときはこれを選ぶしかないと思った次第である。また公害というキーワードはやはり水俣病の裁判関係のビデオを視聴したり、予防と健康管理ブロックの講義でさまざまな公害を改めて勉強したことがきっかけとなった。そして、出身が鹿児島ということで水俣は近い。したがって中学校や高等学校で公害を取り上げるときはいつも水俣病に焦点をてていたように思う。そのようなことがあったのでこれら公害と心筋というテーマを選択した。

3、選んだ論文の内容と概略

1、FDGスキャンR法
PET:positron emission tomography(陽電子放出断層撮影法)
陽電子を放出する放射性核種を含む薬剤を患者に投与し、その体内分布を画像化して、臓器の生理的・生化学的機能や悪性腫瘍等の診断を行うものである
FDG:グルコースの2位の水酸基を陽電子放出核種であるフッ素18で置換したグルコース誘導体
フッ素18が放出するγ線はエネルギーが高いことから安全管理体制が必要
>悪性腫瘍
腫瘍内に高率に集積
腫瘍内でリン酸化され、リン酸化体として滞留

2、Whole heart coronary MRA
whole heart coronary MRAという撮影法は比較的容易に実施できるようになった検査法である。
メリット:比較的容易
かなり高い冠動脈狭窄診断能を有する・石灰化の影響をほとんど受けないため、冠動脈高度石灰化があっても凶作の診断を行うことができる。
 放射線被爆を伴わない。
 造影剤を投与しないため、造影剤の副作用や造影剤急速静注に伴う合併症を考慮する必要がなく、腎機能に問題のある患者にも利用できる

 冠動脈疾患のリスクの低い症例のスクリーニング検査に最適の画像診断法と考えられる

デメリット:遅い
空間解析度はマルチスライスCDほど高くない。
 


4、考察
 4月7日にNHKスペシャル『不信の連鎖 水俣病』を、4月14日に『サイエンスZERO』を視聴した。
 『不信の連鎖 水俣病』では、主に水俣病での裁判について述べられていた。水俣病とは熊本県水俣市で1956年頃確認された公害病であり、その原因はメチル水銀(有機水銀)である。VTRでは、国(当時の厚生省)と被害者のやり取りを映していたが、そもそもそれが2004年に行われたということがあまりにも遅すぎると言わざるを得ないと思う。およそ50年苦しみ続けた人がいるかと思うと胸が痛い。ただ、国を弁護するわけではないが、当時公害に対する意識もなかった段階ではある意味しょうがなかったのかもしれない。今後また公害が起きたときの対策が肝要になることと思う。また、差別に関する問題も深刻だと思った。というのは、水俣病も最初は感染症だと思われ、差別があったというからだ。行政なり医療関係者で、病気の原因を調べて地域住民に正しい知識を与えることが大切だと思う。しかし、差別の恐ろしさは一度根付くとなかなか消えないことにある。例えば私も、「握手するだけでHIVがうつることはない」という知識はあっても、いざHIV感染者が目の前に来たらためらってしまうと思う。このように知識的なものだけではどうにもならないことが大変だ。
 ところで、自らも水俣病を発症しながら患者のために孤軍奮闘する医師も紹介されていた。症状としては水俣病でも国の認可が下りないためにカルテに水俣病と書けない辛さがあると語っていた。なぜ、病気であるか否かをまた、どのような病気であるのかを、行政に決められてしまうのか分からない。財政的な問題だという。それを言われると返す言葉もない気もするが、やはり、国はもう少し責任を持つべきだと思う。
 病気の認定においては、医学的視点・社会的視点・法律的な視点などさまざまな視点からなるべく多くの人が幸福を享受できるようにするべきなのだが、このビデオを見る限りではあまりに役人の都合が入りすぎて、医学的な視点が欠けていたのではないかと思った。
 また、その国の対応についてはやはり、予算の面があったようだ。水俣湾の魚を食べた人全員を水俣病として認定することは、すなわちその人たちの治療費を捻出することになり、膨大な金額になることは間違いない。最近問われなおしているが、国民保険の問題はもはやきれいごとでは済まされないところに来ていると思う。具体的にどうすればいいかということは分からないのだが、もっとうまくバランスが取れるのではないかと思う。外国のように貧富のレベルによって保険を分ければ、一通りどのレベルの保険であれもっていれば、保障はされるであろうが、絶対に保障がむしろ必要な貧しい層には十分な保障は届かない。国民皆保険だと、このように病気と認めるとそれなりの金額を全員に保障しないといけないとなると、国は認めてはくれないだろう。いずれにせよ、民主主義で国を運営する以上は競争社会の敗者も受け入れることが前提条件であるのでどうにか頑張って欲しいと思う。
 最近は目先の利益よりも、会社が環境を守る活動をすることをアピールすることをよく目にするようになった。一時の高度経済成長により、大量生産で公害が起きたといっても過言ではなく、これらの企業とともに消費者としても、公害を防ぐことはできるのかもしれない。多少高くても環境にやさしい商品を買う。それだけのことで安くすれば売れるという安易な資本主義からさえも脱出できるのではないかとさえ思うことであった。
 そして、このビデオを語る上ではやはり差別について言及しなければならないと思う。先日フジテレビの『トクダネ』という朝の番組でAIDSの特集をやっていた。好きなアナウンサーが取材に行っていたので録画してみてしまたのだが、南アフリカの貧しい国で、垂直感染によって本人もHIVに感染し、AIDSで両親を無くした女のこのドキュメントだった。その中で厳しい現実を目の当たりにしたのだが、そのなかで印象的なことを言っていた。「みんなが私をAIDSだと差別する。でもあの人達もみんなHIVに感染しているのに、検査してないだけなのに…私には居場所が無い」補足すると、そのスラムのわかっているだけで7割のひとが感染しているらしい。AIDSと水俣病を同列に語ることは難しいと思うが、差別の根本的なものを見たような気がする。そのスラムの人々は病気であることを知るのが怖いのではなく、差別を恐れて検査しないのだ。それだけ差別って恐ろしいのだなと思うことであった。
 『サイエンスZERO』では、遺伝子を調べることによりその人に合った治療を提供しようといういわゆるオーダーメード医療が紹介されていた。人によって、効く薬品の種類・量がことなる。これを遺伝子を調べることによって知り、できるだけ副作用のない治療をしようとする試みが紹介されていた。またその例として紹介されていたのが、肥満治療であった。VTRに出てきていた人は太りやすい体質であるということが遺伝子を調べて分かり、具体的な食事・運動の目標量を設定することができてダイエットに意欲的に取り組めているという内容であった。しかし、私がもし、痩せにくい体質であることが分かったらどう思うであろうか。私なら投げ出してしまいたくなると思う。やせやすい体質なら頑張れるとは思うのだが。このように遺伝子という決定的な情報を与えられるということは必ずしもプラスにばかり働くというものではないと思う。したがってインフォームドコンセントをしっかり行ったうえで遺伝子という情報を扱わないと、場合によっては患者に絶望をのみ与えてしまう結果となるのではないだろうか。インフォームドコンセントを十分に行えば今までより適切な治療が行えると思うので更なる臨床への応用を期待する。
また、SNPを含めて遺伝に関しては、去年勉強したので予備知識があって見やすかった。多因子遺伝により、ほとんどの生活習慣病が説明されうることを聞いていたので、高齢化に伴う生活習慣病の増加に歯止めをかけるかもしれない。実は私は血圧が高めなのをすでに気にしているのだが、やはり私は、自分の遺伝子を知ってみたいと思うので、更なる技術革新を期待する。ところで、私は何を知りたいのであろうか。もしかしたら、どんなことをしても高血圧になる遺伝子なのだろうか、またはただの不摂生なのだろうか。分かるのはそんなところだと思うが、それを踏まえて自分がどう思い、どう行動していくのかむしろそんなところに興味がある。
上述の論文二編は、画像診断を用いて様々な疾病を早期に発見するための技術を紹介するものだったといえると思う。正直その価値の如何はまだ理解できる学力がないので残念ではあるが、とにかく技術が進歩していることは感じた。
乱暴なまとめ方になってしまうが、塩基配列にせよ論文で読んだ新技術でも科学が進歩することは確かに重要で、喜ばしいことであるが、やはり塩基配列のところで前述したように技術は技術でしかないのでその使い方をしっかりするべきだと思う。

5、まとめ
 初めて論文を読んだこともあるが、初めて論文を検索したことが今回の大きな収穫の一つだった。そのせいか、きちんと「公害・心筋」とキーワードを入れたはずだったが、なぜか公害についてあまり触れられていなかった。これは私が論文を選ぶ上でもっと目的を明確にしきれなかったことがあると思う。しかし、それでも医学中央雑誌を使って検索するハウツーを学べてよかった。論文も堅苦しいものだとばかり思っていたが、少しは読めるものであったので今後も機会があれば積極的に読んでみたいと思った。内容としても新しい技術を知ることができて最先端を感じることができてよかった。このようなレポートという機会でいろいろな経験ができたことに感謝したいと思う。