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1. はじめに。

私の出身地は、水俣病の発生した熊本県ということもあって、今回のテーマの中で水俣病に興味を持ちました。
私が、水俣病について知っている知識といえば、小・中学校の社会の時間に、工場の廃液に含まれていた有機水銀(メチル水銀)が原因で起こった公害病だということぐらいでした。なので、これから医師になるうえで、また地元で起こっていたこのような重大な公害病について、この公害病が人々にどのような症状を引き起こしていたのかを知らないようではいけないと思い、このテーマについてレポートを書くことを決定いたしました。また授業でのビデオをみて、水俣病が神経系に引き起こす症状に興味が持ちましたので、次のキーワードを選びました。

2. 選んだキーワード。

「末梢神経」と「メチル水銀」
 ビデオを拝見したところによると水俣病の患者さんは、手足の振るえなどの症状がありましたので、末梢神経がメチル水銀によってどのような障害をもたらすかに興味を持ち、この二つのキーワードを選びました。

3. 選んだ論文の内容の概略。

  私が読んだ論文は、「水俣病(メチル水銀中毒)の感覚障害に関するレポート」と「水俣病(メチル水銀中毒症)の病因について」です。
  まず、前者の論文の概略について。
 「水俣病の初発症状で出現する四肢末端の感覚障害は、末梢知覚神経障害に由来する可能性が高いと考えられます。水俣病におけるメチル水銀の汚染が一定時期に限定されていたことが判明したことを踏まえて、曝露時期の異なる長期生存水俣病患者の末梢神経を免疫組織化学的に検索し、傷害の程度を検討しました。その結果、後根神経(知覚神経)では前根神経(運動神経)に比してより強い病変を認めましたが、剖検例の検索では完全再生像は証明できませんでした。
  水俣病患者の感覚障害は、中枢性(中心後回)病変によるものと、脊髄末梢知覚神経病変に由来する二つの因子が考えられます。中枢性病変の関与に関しては、全身性の感覚鈍麻が生じると考えられますが、水俣病の初発症状である四肢末端の感覚障害への関与については明確ではありません。メチル水銀中毒実験では、サル(コモヤンマーモセット)、ブタ、ラットでは明らかに脊髄末梢知覚神経病変が観察されています。
  水俣病剖検例でも、前根神経(運動神経)に比較して後根神経(知覚神経)の病変がより強い病変を呈しています。水俣病剖検例では、メチル水銀汚染時期によってその病変が異なることに注目する必要があります。無機水銀はアセトアルデヒド生産工場内で触媒として使用されていたが、水銀の活性化のために1932年以降助触媒として使用されていた二酸化マンガンが、1951年8月以降硫化第二鉄に変更された。マンガンは水銀のメチル化を抑制する作用を有していたが、マンガンの使用中止に伴いアセトアルデヒト生産工程におけるメチル水銀の生成が増加し、工場排水が停止された1968年までの17年間、水俣湾では大量のメチル水銀汚染が継続したとの報告があります。この時期のメチル水銀曝露歴のある患者においては、被曝量によって出現する病理学的変化が異なると考えられています。また、その後に発症した患者の病変は軽減すると推定されます。水俣病患者が長期にわたって生存すれば、末梢神経は再生するために感覚障害は軽減すると考えられます。
末梢神経が完全に再生するには、病変の程度に加えて栄養状態などが関与すると考えられます。
20年という長い間に比較的元気で暮らした人は末梢神経が完全に再生されており、快復力のない人は傷害を残したまま死に至ったと考えられ、剖検では瘢痕形成を遺した状態として認められるでしょう。」
 
  次に、後者の論文の概略について。
「水俣病発生の真の原因として、助触媒の変更により水俣湾が高濃度メチル水銀で汚染されたことが公表されてから、水俣病発症の考え方を修正する必要に迫られました。1968年以降は魚介類のメチル水銀濃度は激減し、長期経過水俣病は高濃度メチル水銀汚染時期に影響を受けた後遺症と考えられるに至りました。高濃度メチル水銀中毒の初期脳病変は脳浮腫によること、また、末梢神経病変は軸索変性が先行することが、コモン・マーモセットで実験的に証明されました。
水俣病の感覚障害は、四肢末端のしびれ感からで始まる。感覚中枢である中枢後回には明らかに病変を認めます。水俣病剖検例では、中心後回は全体的に侵され、特定の皮質が傷害されているということはありません。感覚障害は中枢および末梢神経病変によって起こり、その関与の度合いは不明である。コモン・マーモセットの実験で、坐骨神経にBodian染色を施すと、対照例では軸索配列は規則正しいが、メチル水銀中毒の初期では髄鞘には変化がなく、軸索編成が著名であることが実証されました。水俣病の剖検例では検索が十分になされていないため、軸索病変の有無は確認されていません。コモン・マーモセットの劇症例では、坐骨神経に明らかに軸索変性とともに髄鞘の破壊が認められ、免疫組織化学反応を応用した神経線維の変性所見の証明とマクロファージの浸潤を確認し、ヒト剖検例でもそれを証明できました。発症二年半生存した症例には軸索の再生があり、軽症例では有髄神経も再生していました。水俣病では、脊髄後根神経節は比較的保たれています。そのために末梢神経は再生が可能であります。感覚障害を考えるときは、メチル水銀の汚染時期を考慮する必要があります。つまり、水俣病初期には末梢神経、特に知覚神経の軸索病変が先行します。」

4. 選んだ論文の内容とビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察。

 今回のビデオをみて、まずおかしいと思ったことは、水俣病だと認定するのが医師ではなく知事だったということでした。
専門的知識のない人が何を根拠に判断しているのだろうか、この問題は国と患者との問題なのに判断する人物が国側の人物では国のいいようにごまかされてしまいます。こういう判断は、第三者である医師がすべきだと思います。また、診断基準というものもとても国に都合のいいものでこの診断基準では重度の患者さんしか水俣病と認定されません。人間とは十人十色であり、人により症状はさまざまであるのに勝手にきめられた診断基準によって認定されなかった人たちの悔しさは計り知れないものでしょう。確かに、患者さんの自己申告や症状の訴えのみで認定するのならば、それはそれで問題が起こると思います。偽の患者さんが出てきたり、実際の症状より悪く言う人も出てくるかもしれません。しかし、それのせいにより認められなかった人はたくさんいます。もっと診断基準の条件を低くするか、軽度から重度まで段階をつけるなりすればよかったのではないかと思います。行政に認定され、約1700万の補償を受けた人は約2300人います。これだけで、約400億円です。認められなかった人々はこの人たちの何倍もいるわけですから、すべて認めることになると、とてつもない補償金になるでしょう。正直、国はこんなに払えるお金がなかったのだと思います。だから、全員を認めるわけにいかず、裁判沙汰というどちらにしても後味の悪いことになったのだと思います。それは、「責任は認めるが、判断基準は見直さない」という行政側の言葉を見てもわかります。
今、現在も水俣病に苦しんでいる人たちはたくさんいます。この人たちは、病気と闘うだけではなく国とも戦っています。心無い人からみたら、お金のためとも言われるかもしれません。しかし、水俣病の患者さんが本当に欲しいのは、国の人の誠意だと思います。ただ、水俣病だと認めてほしい、ここまで被害が拡大したのは国の責任だったという誠意をみたいのだと思います。そして、水俣病になる前に近い生活を送ることが一番の望みだと思います。これを可能にするのは国以外いるわけないので、国は早く水俣病の問題を解決し、水俣病の被害者との和解をしてほしいものです。
また国は、この水俣病の公害病を教訓にし、これからこのような公害病を起こさないことはもちろん、もし起こったとしても拡大を最小限にして、被害者をより少なくしなければならないと思います。今回の原因者は、チッソ水俣工場だったわけですがそれを早いうちに食い止めるのが国です。それを怠ったために水俣病の被害は最悪なまでに広がり、患者さんの数も増えてしまいました。水俣病の多くの人は国によって防げたと思います。これから先、日本が発展していく上でいろいろな公害が出てしまうでしょう。そのとき、またこのような状況になるようでは日本の未来は明るくありません。明るい日本になるためにも、過去に犯したミスは二度としない国になってほしいです。

5. まとめ。

 近年、日本は技術の進歩とともに工業化が進んでいます。水の綺麗な地方に工場が進出しています。都市や地方が発展していくことによって、新しく公害病は起こるかもしれません。しかし、このような深刻な公害病が、再び起こるようなことは絶対に避けなければいけません。そうした中で、もし万が一起こってしまったとしても、国や都道府県は、すぐにその公害病の原因を解明し、被害者の拡大を最小限にすべきだと思います。また、医師も同様に、住民の健康をしっかりと把握することで早期発見早期解決に結びつくと思います。
 今回、改めて水俣病についての実態や深刻さを認識したわけですが、私はこのことを一生忘れることはないでしょう。そして、この水俣病が起こった県の一人の人間として、自分の子供や地域の人にもこの忘れてはならない出来事を伝えていくことを誓います。
 そして、発展しつつもこれから先、緑と水の豊かな日本がなくならないことを願います。そうすることで、日本は真の先進国と言え、世界に恥ずかしくない国であると言えるでしょう。