【レポートサイト top】  
------------------------------------------------

        予防と健康のレポート


はじめに・・・
 これから予防と健康の授業中に見たビデオと読んだ二つの論文についてレポートを書こうと思います。




選んだキーワード・・・
私が選んだキーワードは、環境汚染と聴力障害です。私は、耳鼻咽喉科の医療に興味があるので、聴力障害を選び、対になっているキーワードの中から環境汚染を選び、この二つのキーワードにきめました。医中誌webにこの二つのキーワードを入力して、ヒットしたいくつかの論文の中から、@「航空機騒音甚地区における住民の聴力に関する疫学調査」とA「航空自衛隊における有害な騒音環境の調査」を選びました。

選んだ論文の内容の概略・・・
@ 航空機騒音甚地区における住民の聴力に関する疫学調査
この論文の目的は、嘉手納飛行場近傍に居住する住民を対象とした聴力検診を実施し、嘉手納飛行場に由来する航空機騒音曝露に起因するとみなしうる聴力損失を呈する住民が存在するかどうかを調べることです。
今回対象とされた住民の中で、航空機騒音に起因すると考えられる感音性聴力損失を症例は12例確認されました。この論文では、アメリカ公衆衛生局長諮問委員会が「喫煙と健康」について検討を行った際に用いた5つの判断条件に基づき、飛行場に由来する航空機騒音と聴力検診によって今回見出された12例の感音性聴力損失の症例との関係について検討を加えています。
1、 関連の時間性(要因が結果の現れる以前に作用していること)
今回の調査は横断的調査であり、12例の症例についての経年的なデータは存在しないことから、現時点で観察される聴力低下と航空機騒音暴露との時間的関係を特定することはできません。しかしながら、12例の中には、家族に遺伝性難聴がいる者や耳の疾患による聴力の低下を幼少時或いは学童期以降に自覚していた者は存在しないことから、観察された聴力の低下が航空機騒音の曝露を受ける以前から存在していた可能性は低いのではないかと推定されます。また、長期間にわたる騒音曝露の影響を評価する場合、加齢に伴う聴力損失、いわゆる老人性難聴を無視することはできないが、両者が単に相加的であるか相乗的であるかについて判断する十分な知見は得られていません。ただし、老人性難聴の場合には、常に高音性障害漸傾型を示し、これ以外の型は少ないとされています。
2、 関連の一致性(特定の集団で、要因と結果との間に関連性がみられる場合、同じ 
現象が時間、場所、対象者を異にする集団でも認められること)
空港・基地周辺において住民に騒音性難聴が生じるか否かは、その騒音曝露量によるが、かりに激甚な騒音曝露があったとしても、航空機騒音に起因する損失者を見出すことができるのかどうかが問題となります。騒音職場の場合以上に、一般環境の場合は聴力検査の実施に困難が伴い、その上に住民の受診を促すことが容易ではありません。したがって、従来必ずしも航空機騒音による騒音性聴力損失の例が多く報告されていないからといって、ただちにそれがないと論じるのは早計と言わざるを得ません。実際、逆に航空機騒音による聴力損失が見出されなかったとする報告も少ないのです。現実にはむしろ、これまで航空機騒音の聴力への影響を見過ごしてきた可能性が高いとも考えられます。


   3、関連の強固性(通常、相対危険度あるいはオッズ比が、関連の強さを示す直接
     的な指標となるが、要因と結果との間に量反応関係が認められれば、関連がさらに強固となること)
     今回は二通りの過程のもとで、騒音性聴力損失を有する者の比率とWECPNL(
     加重等価平均知覚騒音レベル)の区分との関連について、関連性について、統
     計的な分析を行っています。一つは聴力損失の有無とは無関係に検診を受診し
     ているとみなす仮定で、もう一つは、聴力損失を有するものが全て受診し     たとみなす仮定です。どちらの場合においても、騒音性聴力損失を有する者の
     比率とWECPNLの区分との間に有意な関連が認められたのです。有意確率
     は、前者でp=0.0402、後者でp<0.0001であったのです。聴力損失を有する
     者の実際の比率は、この二通りの仮定の中間に位置すると考えられます。した
     がって、有意確率もこの二つの値の間となり、WECPNLの区分と聴力損失との
     間には、有意な量反応関係があると判断できます。また、調査した地域の40
歳から 69歳を対象とした検診の受診者については、聴力損失を有すると診断
     されたものが、飛行経路あるいはフェンスに近い位置に偏る傾向が見られたの
です。地図上における北側への地域集積性をジャックナイフ法により検定したところ、p=0.0312の有意確率(片側)が得られ、ここでも聴力損失を有する
ものの地域集積性が確認されたのです。
聴力損失を有すると診断された者の住居は、いずれも相対的に国道に近く、とくにWECPNL90―95の区分に居住する二名は、同国道に最も近い位置にあるため道路交通騒音の影響を受けている可能性が疑われます。しかしこれら二名
の住居でさえ、同国道より100m以上離れており、道路端からの距離と沿道の建築物等による回折減衰をも考慮すれば、道路端の騒音レベルより20dB程度減衰すると考えられ、道路交通騒音の影響は無視できます。
以上の結果は、航空機騒音が聴力損失の主因であることを強く示唆するものと考えられます。
    

4、 関連の特異性(特定の要因と結果が特異的な関係にあること)
騒音性聴力損失は内耳性聴力損失であり、その初期においてはcの5乗dip型という独特な聴力像を示します。今回の調査では、鼓膜及び中耳伝音系の障害の有無を、顕微鏡下の鼓膜視診ならびにティンパノメトリによって確認したのです。
また、純音聴力検査で著明な気導骨導差が認められないことを条件に伝音性聴力損失を除外しています。さらに、SISI検査によるリクルーメント現象が陽性であることを条件にして、後迷路性聴力損失ではなく内耳性の感音性聴力損失であることを確認しています。また、年齢補正により全例にcの5乗dipを認めており、騒音曝露によって生じた特異的な聴力障害と考えられます。
* リクルーメント現象
   陽性→内耳性難聴
   陰性→伝音性難聴あるいは後迷路性難聴
      以上のように推定されます。
* ティンパノメトリ
鼓膜及び中耳伝音系の障害の有無を調べるために、インピーダンスオージオメーターを用いて、ティンパノメトリを行いました。 

5、 関連の整合性(要因と結果(疾病)の間に因果関係があるとした場合、その要因がその疾病に関する既存の知識とも合致し、またその疾病についてみられるいろいろな現象がそれによって矛盾なく説明できること)
一定の騒音レベル以上の騒音に永年曝露されることにより回復不可能なNIPTS(騒音性永久的閾値移動)が生じることはよく知られています。一方、強大音に短時間曝露された場合、可逆性のNITTSが生じることも知られ、8時間曝露後2分間休止した時点におけるTTSは、曝露年数10年以上のPTSにほぼ等しいという定量的関係も報告されています。
WECPNL95以上の地区において、受診者66人中に騒音性の聴力損失を有する者が6人確認されたことは、NIPTSの予測とも符号すると考えられる。
また、騒音受傷性に性差があること、すなわち男性が女性に較べて受傷性が高いことについては、TTSを指標とした騒音暴露実験やPTSに関する疫学的な調査結果に基づき、これを肯定する報告と、否定する報告とがあります。今回の調査において、比較的受診が高かった地域のA地区において見出された症例の、8例中7例が男性であったことは、騒音受傷性には内的要因に基づく性差があるとする報告を、一定程度支持するものであると考えられます。
以上のことからすれば、航空機騒音が飛行場周辺に居住する住民の聴力に影響を及ぼしていると考えることは、「既知の疾病の自然史や生物学的事実と矛盾するものではない」ことは明らかです。



   今回の調査結果は、5つの判断条件の全てを完全に満たすものではないが、総合的に評価すれば、航空機騒音への曝露と飛行場周辺住民に認められた聴力障害の発生との間に強い関連があることを示すものであると考えられます。因果関係の判断は公衆衛生学の観点からすれば、政策的判断としての性格を持つものであり、その判断が疾病や障害の予防に生かされることに意義があるのです。飛行回数の制限や飛行経路の変更などを含めた発生源対策が早急に実施されることが望まれるのです。




A 航空自衛隊における有害な騒音環境の調査
この論文は、航空自衛隊においてこれまで調査されなかった騒音源及び騒音環境に対して、聞き取り調査及び騒音調査を行ったものです。
1、騒音源の問題について
  今回の調査により、航空機エンジン、整備支援機材、整備用工具、発動発電機による騒音環境が聴力に有害であることが新たに確認されました。それらの騒音環境では、防音保護具を使用することで、許容基準が満たされていました。しかし、聴力低下を防止するために行う騒音対策の基本は、作業環境騒音を低減することであり、防音保護具の装着は最後の手段であると考えられます。作業環境騒音に関連する省令である労働安全衛生規則にも、「事業者は、騒音等を発する有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機器等の改善等必要な措置を講じなければならない」と定められています。装置・機材の騒音レベルを低減することは、作業員の聴力低下の危険を減らし、作業効率を上げることにつながります。また、小型軽量のイヤマフや耳栓で遮音することも可能となります。等価騒音レベルが100dB以下になるよう、装置・機材の低騒音化を進めるべきです。
2、 防音保護具の使用について
オープンパッド及びエンジンテストセルでは、防音保護具の使用により、許容基準を満たしていました。しかし、使用に伴う劣化で防音保護具の遮音性が低下した場合などは、遮音性のより優れた防音保護具の使用並びにスポンジパッドの交換など防音保護具のメンテナンスが必要であろうと考えられます。また、エンジンテストセルのテストルーム内では、イヤマフと耳栓との併用が必要と考えられるが、これは実際の作業場で実施されていました。
航空機の機体内など狭い空間での整備作業時に、防音保護具無しでは、騒音曝露の許容基準を超えるが、通常サイズのイヤマフは作業の障害となります。小型のイヤマフは、耳栓と併用することで約36dBの遮音効果が期待できます。狭い空間での作業行う場合は、通常サイズのイヤマフに加えて、小型軽量のイヤマフ及び耳栓を支給することが望ましいと考えられます。ただし耳栓は、装着の仕方により十分な遮音効果が得られない場合が多く、しっかり装着するよう注意が必要です。
また、防音保護具の装着を徹底するには、J.T.O等の規則に防音保護具を装着するよう規定することも必要だと考えられます。

3、 会話・通話及び作業能率の維持について
今回の調査により、エプロンに面した建物において、会話・通話妨害の許容基準が満たされず、会話・通話に有害な環境であることが確認されました。会話・通話を維持するためには、防音サッシによって室内の騒音レベルを下げることが有効と考えられるが、防音サッシが使用されている例は少ないのが現状です。また、冷房装置が設置されていないため、夏季に窓を閉められない建物も多いのです。E-2C試運転場わきの事務室のようにプレハブ建築の防音効果はさらに低いと考えられます。オペレーションルーム及び事務室内の会話・通話を確保するため、窓の防音効果、空調設備の設置、耐騒音型電話機の採用等の防音対策を考慮する必要があります。
AISの騒音についても、会話・通話妨害の許容基準を満たさない確認されました。AISの騒音は、会話・騒音を妨害するだけでなく、電子機材整備の精密な作業の能率も低下させている恐れがあります。複雑な作業は、75dBの騒音によって成績が低下するという研究報告があります。試験装置の低音化、整備員の作業区画の分離が必要と考えられます。

 この論文の調査の結果、航空機エンジン、整備支援機材、整備用工具、発動発電機については等価騒音レベルが85dBを超え、聴力有害な騒音環境と評価されました。エプロンに面した建物内、搭載電子機器総合試験装置については、騒音レベル75dBを超え、会話・通話に有害な環境と評価されました。
 有害な騒音環境の改善には、騒音源の低騒音化、防音保護具の有効な使用、施設の防音対策が必要だと考えられます。


考察・・・
 授業中に見た二つのビデオの中で特に印象に残っているのは水俣病についてのビデオです。今まで私が水俣病について持っていた知識は、学校の授業で習ったことぐらいで患者さんたちの苦しみはほとんど知りませんでした。また、病気についての知識もほとん
ど持っていなかったので調べてみることにしました。

* 水俣病について
この病気は大台公害病の一つで、1956年ごろに熊本県水俣市付近で発生が確認されたためこの名前がつけられました。この後、新潟県で発生した同様の公害病も水俣病と呼ばれています。水俣病はメチル水銀中毒で、手足のしびれが起き、その後歩行困難などに至る例が多いようです。また、聴力障害も起こすそうです。重症例では痙攣、精神錯乱などを起こし、最後には死に至ったそうです。発病からは3ヶ月で重症者の半数が死亡しました。体内で水銀中毒となった者の予後は不良です。原因は、1992年以降に新日本窒素肥料(現在のチッソ)水俣工場が行ったアセトアルデヒド生産時の触媒による副産物であるメチル水銀を含んだ廃液が汚染処理を十分行わないまま海に流されたことです。この廃液中のメチル水銀が生体濃縮され、付近で獲れた魚介類を摂取した住民に水銀中毒の被害が発生しました。1955年頃より猫の不審死が多数見られるようになり、翌年1956年に人にも同様の症例が確認されました。1956年5月1日、新日本窒素肥料水俣工場付属病院長の細川一が「原因不明の中枢神経疾患の発生」を水俣保健所に報告した。この日が水俣病公式発見の日とされています。
  
  このビデオを見てこの話し合いは何の意味も持たないと思いました。原告側の方達は一生懸命いろんな想いを話しているのに、行政は誠意を持って対応しているようには見えず、ただ言い訳をしているようにしか見えませんでした。水俣病の原因を作ったのは新日本窒素肥料会社です。しかし、対策を怠り、被害を拡大させてしまった行政はそれよりひどいと思います。行政は本来国民の生活をより良いものにしようと働くものだと思います。それなのに、水俣病の件ではより良い生活どころか命を奪う手伝いをしたように思えます。今でもこの問題は解決していません。行政は早く非を言い訳なしで認め、今も水俣病で苦しんでいる人々が生活しやすくなるような政策を考えてほしいと思います。そうすれば、原告団の人々との関係は今よりも少しずついいものになるのではないかと思います。

  論文とビデオから感じたのは病気や障害の予防と迅速な対処がとても大切だということです。水俣病のような場合は工場で使う化学物質などが人体に及ぼす影響を使用する前に調べれば病気を防げたと思います。同様に激しい騒音にさらされると耳が悪くなることも予想されたのにその対策を事前に怠ったから騒音性難聴を引き起こしてしまったのだと思います。現在では事前の調査などが義務づけられていると思いますが、やはりいろんな問題が起こっていると思います。今まで問題がないから大丈夫だと決めてかからず、様々な場合を予想することが大切だと思います。医療の現場でも薬や治療の影響を考えて医療を施すことが大切だと思います。また、何か問題が起きてもすぐに対策を考えれば被害の拡大は防げると思います。その問題が人の健康に関わることなら医療従事者と行政が共にその対策を考えるのが当然です。

まとめ・・・
 今回このレポートを書くことを通じて、普段考えないことを考えられた気がします。今までは漠然と医師の仕事は患者の治療をするだけのように思っていました。しかし、治療の他に病気の予防法などを考えることも大切だとわかりました。今回学んだことを忘れずに医学を学んでいきたいと思います。また、どんな時でも患者さんの立場に立って、患者さんのために治療以外でもできることがあればできる医師になりたいと思います。