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予防と健康レポート
1.はじめに
水俣病裁判についてのビデオを鑑賞し、それに関連したキーワードを元におのおのが興味関心を持った論文を読んで、レポートにまとめるという予防と健康ブロックの授業の一環で、今回はこのレポートを書く次第となった。まずToxicityとNeuronというキーワードを選んでPub-Medで論文を検索したのだが、あまりに莫大な数がヒットした為、さらにMinamata Diseaseというキーワードで絞ってその中から今回の論文を選んだ。この論文を選んだのは、メチル水銀と神経損傷との関連について論ずることが要旨で紹介されていたからである。
2.選んだキーワード
@Toxicity
ANeuron
3.選んだ論文の内容の概略
今回、私はJuarez BI、Martinez ML、Montante M、Dufour L、Garcia E、Jimenez-Capdeville ME(敬称略)らによる「メチル水銀が覚醒しているラットの前頭皮質でのグルタミン酸塩を増加させる」という論文を読んだ。まず、現在(2002年当時)の仮説ではメチル水銀神経毒性はアストロサイトにおいてグルタミン酸塩吸収変調による促進性毒が原因による神経損傷とされている。この論文はそのことを実証するための議論がなされている。
大人のウィスターラットの前頭皮質への微量透析法ゾンテ移植からの調査によって、彼らは、グルタミン酸塩の細胞外レベルが15で意識がある動物において、微量透析法ゾンテを通して10か100μMメチル水銀への鋭い暴露の効果を計った。覚醒している動物の脳後質のMeHg(メチル水銀)への急性の暴露は、細胞外グルタミン酸塩濃度の重大な増加を証明した。グルタミン酸塩のレベルの生体内評価の関連は、(細胞外グルタミン酸塩のレベル)変数をしっかりと調整した試験管内の前もった調査でさまざまな影響の作用を示した。
試験管内で10μMメチル水銀への10分間の暴露は、ラットの星状膠細胞(アストロサイト)においてグルタミン酸塩吸収の50%の抑制をもたらすことが見られた。 それは細胞毒性によって同時に起こるわけではない。しかし長時間の暴露(1−3日)で培養されたヒトのアストロサイトは細胞傷害と細胞死の兆候を示し始める。対照的に、メチル水銀の中毒の影響でニューロンはより傷付きやすい。試験管内で、10μMメチル水銀、かなり多くの時間の継続的な暴露は・ヒト、マウス、ラットから培養された細胞において100%のニューロンの死がもたらされた。その結果、彼らはこのメチル水銀の濃縮でいつ細胞外のグルタミン酸塩の生体内レベルは増加されるのか、いつアストロサイトは比較的影響を受けないがグルタミン酸塩の吸収の割合が減少するのかを知ろうとした。その一方で、高濃度試験(100μM)ではラットの海馬のスライスで完全な抑圧潜在被爆を起こすことが報告されていた。それはまた、神経芽腫細胞で濃度の分布(ナトリウムとカリウムの流れ)を抑制する。そして、このメチル水銀濃度での試験管内のグルタミン酸塩吸収の抑制は報告されていない。大人のラットに20日間メチル水銀を経口摂取させると後ろ足に麻痺と100μMの濃度脳水銀の類似を持つことがみられた。このような前項より、彼らは、ラットの皮質が100μMメチル水銀に暴露した時、神経の活動性の減少と大細胞傷害が起こると考えた。それゆえに、彼らは細胞外グルタミン酸塩の生体内レベルとメチル水銀の低または高暴露下で比較したかった。メチル水銀は皮質からなる組織に全く放出されないと報告されたはずであるが、微量透析法の探針を循環した。それはそれぞれ約2.5と25μMの局所の混入が生じた。メチル水銀を与えられることは組織内で留まり放散することが仮定され、この実験において蓄積されうる最も高い濃度は10と100μMである。
彼らはメチル水銀への急性の暴露は細胞外グルタミン酸塩の濃度を100μMで2.4倍、10μMで9.8倍増すという事を見つけた。脳の損傷と酸化ストレスの発生は細胞外グルタミン酸塩の2.8倍の増加に関連付けられる。そして彼らが観察した局所グルタミン酸塩濃度はヒドロキシルラジカルの産生で増加させられる。シナプス間でのこれら濃度の増加は、ニューロンとアストロサイトの進行性の機能障害の一因となるだろうと考えた。彼らは10μMメチル水銀でグルタミン酸塩の増加はさまざまな成り行きの結果であると解釈している。すなわちニューロンやアストロサイトのエネルギー不足が活性酸素種の媒介によって吸収減少を導く。細胞内カルシウム濃度の上昇は当然グルタミン酸塩レセプターの過刺激を起こし、それはまた活性酸素種の産生を起こす。グルタミン酸塩放出の増加だけでなく細胞膜の脱分極とカルシウム緩衝作用も起こす。100μMと比較すると、メチル水銀によってナトリウム、カリウム、カルシウムチャンネルの重大な抑制がある。活性酸素種と後の吸収抑制はミトコンドリアとカルシウム恒常性の妨害に影響すべきだと示すにもかかわらず、それは前の状況よりも低放出量という結果になっている。メチル水銀への暴露の後90分間著しい上昇が残っているこのような実験に基づく状況下の細胞外グルタミン酸塩は、細胞外グルタミン酸塩調整において長引くか恐らく逆行できない変異が起こる。
ヒトの暴露に対するこの研究の観点は、メチル水銀の神経毒性は汚染された食料の急性ではなく慢性的な摂取によって直接脳がこの化合物に暴露すると起こる、というのが恐らく限界だろう。しかし、今回の研究の濃度実験の立場は、暴露したヒトの脳で見つけられたそれらからかけ離れてはいない。脳内水銀濃度は血液か頭髪の水銀レベルから推定されると提案され、これらの推測によれば、2.5~10μMに及ぶ濃度は子どもやメチル水銀中毒の微小な兆候を持った暴露した大人において精神運動発達の遅延が関連付けられる。耐え難い身体障害(水俣病)をもった子どもは脳内の濃度は発育の間35~70μMに及ぶと推定され、誕生後それぞれの年齢で12μMもの高さが推測された。
促進性毒は多因性作用であるので、細胞外グルタミン酸塩の蓄積と神経細胞の死との間の関連は必ずしも直結するものではない。先ごろ、生体内で細胞外グルタミン酸塩の重大な上昇の結果、エネルギー不足、慢性のミトコンドリアの機能障害とグルタミン酸塩促進性毒との関連が同時に生じるときだけ神経損傷が証明された。彼らは、メチル水銀のミトコンドリア新陳代謝阻害に対する能力とこの生体内におけるグルタミン酸塩吸収抑制は神経毒の特性において重要な役を演じると信じている。
4.考察
この論文を読んで、論文を作成する上での実験などについて、現在知られていないことを発見し仮定、推察することも重要であるが、現在推察、仮定されていることを実証することも必要であることを知った。
また、ビデオではNHKスペシャル「不信の連鎖 水俣病は終わらない」を観たのだが、私が持っていた知識以上に現状はひどいものであった。まず、国に水俣病患者と認定されると1600~1800万円の補償金を受け取れるのだが、病を診断するのは医者であって何故国から認定される必要があるのか。水俣病についての医師の診断は参考程度にしかならないそうだ。しかも認定審査判断条件は昭和52年に作られたもので、水俣病は軽度から重度で症状が異なるにもかかわらず、判断条件はいくつかの症状の組み合わせに当てはまるかで審査され、今まで認定されたのは2300人のみなのである。水俣病とは認めず認定を求める争いをいないことを条件にチッソが260万の一時金、国が医療費を払うという譲歩案が出されているのだが、それでは彼らが患っている病は何だというのだろうか。水俣病は保険の対象でなく、治療代は患者さんの負担となる。メチル水銀を工場排水と共に流したチッソや早期の熊本大学からの食品衛生法の適用の提案を拒否した厚生省はこれで責任を負っていると言えるのだろうか。
最近の公害としてはアスベストによる中皮腫をよく耳にするが、我々が医師として公害病に向かい合うときしなければならないことは、第一に被害を最小限に食い止めることである。原因を早急に究明し、迅速な対処を行なう。次に治療であるが、完治できない病であったとしても、少しでも症状を和らげる努力を患者さんと共にしなければならない。最後に、患者さんにとって問題かつ負担になるであろうのは訴訟に関することではないだろうか。患者さんは病を患ったとしても生活、家庭、家族はあり、生きていくにも治療をするにもお金は必要である。他人に健康上、経済上またはその他の事で不利益を生じさせたのであれば責任を負うのは当然であろう。
今回のビデオを観て、医師が行なう仕事は治療だけではないということを改めて学んだ。そして、治療を行なうに当たって、国や政治、法律が妨げとなることもある。時々によって状況は異なるので、一概にどの選択が正しいとは言えないが、常に患者さんを第一に考えることを見失ってはならない。このような状況でも、医師同士のつながりも重要なのではないかと思う。つまり、社会を動かすには、たくさんの人と多くの理解が必要だろう。
5.まとめ
今回読んだ論文と見たビデオのつながりは「水俣病」というキーワードのみであったが、一つの病気にしても見る視点によって論じる内容は大きく異なってくる。その為、一つのレポートにまとめることは困難であったが、将来医師となって病気の一事例に関わるときに臨床医として関わるのか、研究医として関わるのか、裁判などで証言する医師としてなのかなど立場によって関わり方が大きく違うのだと再認識した。しかし、どの立場においても知識は必要である。また、何科に進むのかなどはまだ決めていないが臨床医を目指しているので、治療面でも心の面でも患者さんの力になれる医師になりたいと強く思った。
6.参考
Methylmercury increases glutamate extracellular levels in frontal cortex of awake rats. -Neurotoxicol Teratol.2002 Nov-Dec‐
NHKスペシャル「不信の連鎖 水俣病は終わらない」
医学英和辞典
プラクティカル医学略語辞典