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予防と健康管理のブロックレポート
1はじめに
今回私が選んだテーマは環境汚染、有害物質による、神経症状についてである。何が原因なのか、どの様に症状が起こるのかを、論文とビデオにより理解し、考察していきたいと思う。ビデオでは水俣病による国と患者の裁判と治療に特に重点を置き、論文では他国によるメチル水銀中毒の調査、遺伝子による治療を理解したいと思う。また、今回は中毒過程だけでなく、医療機関がどの様に公害病に関与しているのか、医師はどの様に診断すべきかにも重点を置き、将来医師になる学生として深く考えてみたいと思う。
2選んだキーワード
環境汚染・水銀
選んだ理由:水銀は公害病の中で最も耳にする原因のひとつであったから。水俣病以外の水銀による食物連鎖による症例を知りたかったから。生物濃縮によってどの様に体に影響するかを理解したかったから。また、過去にどの様な検査によって原因と対策が見つかったのかを知りたいと思ったから。
3論文の内容
@日本衛生誌 57号 胎児性メチル水銀曝露による小児神経発達影響
著者 村田 勝敬
日本で水俣病で代表されるメチル水銀中毒は中国などの国々でメチル水銀の工場排出、食品汚染を介して集団発生した。1971年イラクでは、メチル水銀殺菌剤で処理された種子小麦をパンの原料として使用した農家を中心に多数の犠牲者が出た。入院数約6000人、死亡者約500人であった。主な症状は手足の痺れ、難聴、言語障害などである。このメチル水銀中毒により、水銀の人体影響に関する量―反応関係に焦点が当てられ、胎児影響の起こる濃度を推定した。このデータ―に基ずいて、米国はメチル水銀の人体への基準摂取量、つまり毎日摂取しても人体影響がないとされる量が一日当たり0.1μg/kg以下とした。最近では高濃度水銀曝露の影響よりも、次世代影響の起こりうる臨界濃度がどれくらいなのかに関心が集まっている。
水銀中毒になる流れは地殻ガスや産業活動によって大気中へ放出される無機水銀は、微生物や、魚介類の体内でメチル化され、食物連鎖により、大型魚や魚を捕食する哺乳類動物へと濃縮される。そしてこれらを人が多食することで発現する健康影響の可能性が、懸念されている。水産物由来の水銀が人において検出された事例は鯨、鰹、鮫、海豹、深海魚などである。NewzealandやFaroe諸島では水銀曝露による、次世代影響に関する大規模な疫学調査が1980年頃に開始された。Faroe諸島の研究は胎児性メチル水銀曝露による小児神経発達影響に関するものである。1986年にはこの年に出産した母親のうち、毛髪および胎盤を採取し、妊娠過程、妊娠中の鯨および魚の摂取量、飲酒、喫煙等の調査による母子コホートが登録された。この島が対象集団に適していた理由に水銀曝露の範囲が広い事、言語・文化が北欧圏に属していた事が挙げられる。データーにより臍帯血中水銀濃度や母親の毛髪水銀濃度の値が月当たりの鯨肉の摂食回数あるいは週当たりの摂食回数が多くなるにつれて有意に高くなる事が認められた。また七歳になった出生コホートに調査を行った。検査項目に一般健康調査、小児神経学的検査、神経行動学的検査(知能、運動機能、注意力、視覚空間機能、言語、言語記憶)視聴覚検査、神経生理学的検査などがある。これらの調査により、この母親集団に水俣病あるいはそれに類似する症状を示す子供はいなかったが、運動機能、注意、視覚空間、言語、言語記憶が出生時の水銀曝露量と関連性を示し、聴性脳幹誘発電位潜時にも関連していた。つまり胎児期の低濃度水銀曝露は神経発達に影響していることが考えられた。水銀だけでなく、PCBの曝露も人体に影響を与える可能性があった。また、Faroe諸島では14歳児の聴性脳幹誘発電位潜時の一部が延長する傾向が認められた。この結論を得るためにFaroe諸島神経行動学的検査および神経生理学的検査の測定項目・測定条件が厳しくチェックされた。Faroe諸島では調査の結果により@鯨肉の摂取を控える。A妊娠中、授乳中は鯨肉を食べない。が、勧告された。つまり、メチル水銀を抑制する事によって「健康を脅かすリスク要因を取り除く」という予防医学の目的につながる対処法で次世代リスクを減らすことにした。日本でも環境疫学的研究による成果が期待されている。
A医学のあゆみ 202号 メチル水銀の毒性発現機構
著者 永沼 章
メチル水銀は脳に蓄積して重篤な中枢神経障害を引き起こす環境汚染物質であり、発達途中の胎児脳はメチル水銀の感受性が高く、微量でも脳に影響する。メチル水銀の毒性発現機構は不明な点が多いが、酵母にメチル水銀体制を与える細胞内因子であるGFATとユビキチンcd34の同定には成功した。GFATには@GFATを高発現する酵母はメチル水銀に対して耐性をしめす。Aメチル水銀は特異的にGFAT活性を阻害する。BGFAT反応の産物であるグルコサミン6リン酸を細胞内に供給することでメチル水銀の毒性は顕著に軽減される。CGFATは酵母に必須の酵素である。が、挙げられる。それらによって蛋白質がメチル水銀と強固に結合すると、遊離のメチル水銀濃度が減少して毒性発現が抑制される事が分かった。この研究で酵母中に特定の標的分子が存在することが明白になった事からメチル水銀の細胞毒性発現が明白になった。しかしヒト細胞中にはGFATのほかに高い親和性を有する因子の存在が考えられている。ユビキチンはプロテアソ−ムによって認識され、速やかに分解される。このユビキチン/プロテアソームシステムは異常蛋白質の分解に関与する重要な細胞内機能である。そしてこれはユビキチン転移酵素(cd34)高発現のよるメチル水銀耐性に必須だと考えられる。この結果からメチル水銀により修復を受けた蛋白質のユビキチン化を介したプロテアソ−ムでの分解の促進がメチル水銀毒性に対して防御的に作用することが分かった。つまり蛋白質のユビキチン化を介したプロテアソ―ムでの分解の促進が毒性に対して防御的に作用する可能性がある。今期待されている事はメチル水銀に修復を受けてユビキチン化される標的蛋白質をヒト細胞中で同定する事による、ヒトにおけるメチル水銀の細胞内標的分子が明らかなものとなる事である。
4選んだ論文とビデオの考察
ビデオでは県と水俣病患者との間に本当の和解を築く事が困難である事を感じた。国は水俣病による症状に基準を作った。国の決めた判断の基準は@感覚障害と視覚狭窄とその他A感覚障害と運動失調の疑いとその他などであるがこれらは科学的に誤りとされている。環境省が決める基準の異なる水俣病の認定により、患者の医療費の負担が重くなるシステムには私は理不尽さを感じた。症状により医療機関の関与は大きく異なり、司法に関われば400万から800万、政治では260万、行政ではそれ以上であるが、それ以外では健康保険が使えず、患者の全額負担になってしなう。公害による被害は患者だけでなく、彼らの家族にも降りかかる事を治療費の負担により生活に苦しむ家族の言葉を聞くと強く感じた。治療する側である医師も、やるせない状況に置かれていた。国の決めた症状の基準により、医師の判断は参考程度にしかならないのだ。医師が自らの診断をしても行政が認めなければ認定されない現実は医師にとって辛いものであり、社会の矛盾とそれに対して自分がどの様に向き合うべきかを考えさせられる厳しいものだと感じた。このような認定の救済の対立だけではなく、患者と国との裁判も長きにわたって続けられ、未だに曖昧なままにある。国と工場の責任の擦り付け合いが長々と続けられている様子であった。医師を志す学生としてこの様な環境汚染により病を患った患者に対して自分を信じて正しい治療を行える技術と決断力を養っていきたいと思った。何よりも患者の気持ちを第一に考えた診断をしたいと感じた。
論文ではメチル水銀中毒に関して生物濃縮や母親による胎児の影響が主に書かれていた。これからの医療技術では遺伝子治療などにより、出産前の発見、治療が可能だと思うが障害を持つ子供を受け入れない母親も出てこないとは言えない。倫理的な問題に医師は直面すると考えられる。確かに医療技術が進歩する事は大事かもしれないが生命を失う可能性に手を出してはいけない。倫理に触れる問題の解決はなかなか簡単に決断をくだす事はできないと思う。医師にとって環境汚染にによる症状の正しい診断をするにはまだまだ厳しい社会の様である。しかし遺伝子学により聞き覚えのあるユビキチン/プロテアソームがメチル水銀に対する防御機構である可能性があるのには驚いた。GFATの研究によりメチル水銀の標的分子や毒性発現機構が解明される可能性も出てきているのでもはや、原因不明の症状ではなくなってきている事が分かった。自分自身が医師になる日には更に技術は進歩しているにちがいない。しかし私が一番強く思うことは環境汚染による被害は起こる前に防げられないものかという事である。これは当たり前のことの様でありとても難しい事であるが、次世代にまで自分たちのまいた種により影響が起こったのは事実であり、それを繰り返してはならない事を実感した。そして論文にも書かれていた予防医学の目的である健康を脅かすリスク要因を取り除く事が解決策の一つではないかと考えられた。
5まとめ
今回、ビデオと論文により、水俣病を始めとするメチル水銀中毒による症状と調査、対策や環境汚染による被害に対する国の姿勢、治療する医師の抱える問題など様々なことを知る事ができた。結論として現代の科学技術により徐々に毒性や対処法は解明されている事が分かったが患者と国の問題はすぐには解決しない複雑なものの様に感じられた。ビデオで医師が判断しても基準を決めるのは国や知事である事を打ち明けている場面では医師のもどかしい気持ちに共感すると共に、自分がその立場であればどの様に対処するのかを考えさせられた。そして公害による影響がとても大きなものである事、健康な生活を送る事の大切さを改めて実感した。