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私たちは、水俣病とsnpによるオーダーメイド医療についてのビデオを見た。私はその中でも水俣病に興味を持った。水俣病はもう過去の物だと思っていたが、今現在多くの人が苦しんでいるからだ。水俣病の原因は新日本窒素肥料(現在のチッソ)水俣工場が行ったアセトアルデヒド生産時の触媒による副産物であるメチル水銀を含んだ廃液が汚染処理を十分行わないまま海に流されたことによる。この廃液中のメチル水銀が生体濃縮され、付近で獲れた魚介類を摂取した住民に水銀中毒の被害が発生した。水俣病には後天性のものと、先天性(胎児性)のものとがあるが、後天性水俣病の主要症状は、求心性視野狭さく、運動失調(言語障害、歩行障害などを含む)、難聴および知覚障害である。また、先天性(胎児性)水俣病は、知能発育障害、言語発育障害、そしゃく嚥下障害、運動機能障害、流涎などの脳性小児マヒ様の症状を呈する。

 そして、これらの症状の内、特に小脳に対するものを挙げる。まずは、起立、歩行障害を伴った体幹失調症で、眼辰を伴う(片葉虫部小節葉傷害)。高度の失調性歩行を示し、上肢の失調症状はない(前葉傷害、小脳変性疾患で高頻度)。病変と同側に筋緊張低下、企図振戦、共同運動障害および測定障害を伴った上下肢の失調症状(小脳半球の傷害)。言語障害、とくに音の高さ、大きさ、リズムが不規則で、言語は緩徐で、一部の言葉や音節が異常に強く発音される。明瞭な発音が不能になることもある(ことに虫部傷害で強くでる)。

小脳障害が最も強く出るのは、深部核のうち歯状核もしくは上小脳脚によっておこる。水俣病の原因であるメチル水銀が、小脳にどのような作用を及ぼして上記に挙げた神経系の疾患を起こすのか詳しい機序の説明はなかった。そこで、今回のレポートで、「環境汚染」と「小脳」というキーワードを選んで調べることにした。そしてメチル水銀が小脳に傷害をもたらす機序について書いてあると思われる「メチル水銀の毒性発現機構」という論文をまず選んだ。その論文の概略を説明する。水俣病は発症確認からすでに五十年が経過したにも関わらず、メチル水銀の毒性発現機構は不明のままであり、糸口さえつかめていないのが現実だそうだ。ちなみに、様々な最新の論文を探してみても結果は同じだった。では、この論文には何が書いてあるのだろうか?この論文の筆者等はメチル水銀の毒性発現機構に関する新知見を確実に集積することが重要と考え、より単純な実験系として酵母を選び、メチル水銀の毒性発現に影響を与える細胞内因子の遺伝子レベルでの検索を試みている。そして、メチル水銀に対する感受性を左右する酵母遺伝子としてグルタミンとフルクトース6リン酸からグルコサミン6リン酸を生成する反応を触媒する酵素であるL-グルタミン:D-フルクトース6リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT),および細胞内蛋白質分解系のひとつであるユビキチン・プロテアソ−ムを構成するユビキチン転移酵素Cdc34を同定した。

次に詳しく見ていく。グルコサミン6リン酸は細胞内で合成されるすべてのアミノ糖の原材料となる物質であり、アミノ糖がないと糖蛋白質などが合成されず酵母は生存することができない。したがって、GFATは酵母の増殖に必須の酵素ということになる。数々の実験から@メチル水銀はこのGFATに高い親和性を持ち、特異的にその活性を疎外することAGFATを高発現する酵母はメチル水銀に対して耐性を示す事BGFAT反応の産物であるグルコサミン6リン酸を細胞内に供給することによってメチル水銀の毒性は顕著に軽減されるが分かった。これらの事実からGFATは酵母におけるメチル水銀の主要な標的分子であると考えられる。 GFATは、酵母のみならずヒトをはじめとする哺乳動物においても必須の酵素として働いていることから、哺乳動物でもメチル水銀の標的となっている可能性が考えられる。しかし、この可能性に関しては、論文の著者らの予備的な検討では否定的な結果となった。ヒト培養細胞にGFATを高発現させてもメチル水銀に対する感受性には変化が認められなかったからだ。したがって、ヒト細胞中にはGFATよりもメチル水銀に対して高い親和を有する因子が存在する可能性が考えられる。いずれにしろ、本研究は真核生物でのメチル水銀の細胞毒性発現機構を初めて明らかにしたものであり、このように標的分子を同定できる可能性を示せたことは、今後のメチル水銀研究を考えるうえで重要な意味をもつだろう。

そしてもうひとつメチル水銀耐性にかかわる遺伝子としてGFAT以外にCdc34(ユビキチン転移酵素)をコードする遺伝子CDC34が同定された。メチル水銀によって傷害を受けた蛋白質はユビキチン化され、プロテアソームに認識されて速やかに分解される。そして、Cdc34高発現酵母ではユビキチン化蛋白量がコントロール酵母に比べて著しく高かった。よってCdc34高発現酵母はメチル水銀によって傷害を受けた蛋白質のユビキチン化を促進させることでメチル水銀毒性に対して防御的に作用するものと考えられる。そしてメチル水銀による修飾を受けユビキチン化される標的蛋白質をヒト細胞中で同定することによって、ヒトにおけるメチル水銀の細胞内標的分子が明らかになるものと期待される。いまだにメチル水銀の毒性発現機構はよく分かっていないのは残念だが、このような知見を増やしていけばいずれ解明されるであろう。

次にメチル水銀などの重金属以外の物質がどのように脳に影響するのかを知りたいと思った。そこで私は「胎生期の薬剤・放射線暴露による脳傷害」という論文を選んだ。この論文には、薬剤・放射線暴露による傷害の機序が詳しく書いてあった。この中でも特に放射線について焦点を合わせたいと思う。まずは暴露の時期と傷害の種類について説明する。受胎前に暴露した場合と受胎後に暴露した場合では、脳傷害の発生機序は異なる。受胎前の放射線暴露や薬剤の服用などは、遺伝子レベルや染色体の異常を通して奇形、悪性腫瘍、脳傷害がおこされる。実際チェルノブイリ事故後に21トリソミーの頻度が増加した。受胎後での暴露の影響としては、さらに器官形成期(〜受胎後8週)、ニューロン形成期(受胎後9週〜38週)に分ける。 前者に暴露がおこると神経管閉鎖不全や無脳症などの奇形がおこる。後者に暴露が起こると滑脳症や皮質形成不全、脳梁の欠損が生じる。また、小脳ではプルキンエ細胞や顆粒細胞の遊走が起こり、障害として虫部の低形成、顆粒層の低形成などが生じる。
また、放射線には広島、長崎の原子爆弾、チェルノブイリの原子力発電所事故などの大量被曝もあれば、職業上や治療・診断のための比較的少量の被曝もあり、被曝量、期間には様々な差がある。放射線の傷害のメカニズムとしては、大量照射では細胞の壊死、出血、血液・脳関門の破壊がみられる。低線量の被曝では細胞分裂に影響を与え、細胞周期のうち分裂期を傷害することにより細胞周期を遅らせたり、細胞死を起こす。また、分子からの電子放出を起こしDNAなどへの直接障害やフリーラジカルの形成などがあげられる。将来、検査や治療で使うことも多いと思うが、放射線の扱いには、細心の注意を払いたい。 
 さて、今回のレポートでは主に症状についてみてきた。水俣病のような神経疾患は、一度傷害されると、症状が軽快することはほとんどない。だから、予防することが一番大事だ。1959年、熊本大学医学部水俣病研究班が原因は新日本窒素肥料水俣工場から排出される有機水銀中毒と発表した。しかし、新日本窒素肥料はこれを否定し、かなり後期になるまで会社、行政ともに対策を怠った。政府が発病と工場廃水の因果関係を認めたのは1968年である。この遅延により被害が拡大した。この責任は非常に大きいと思う。さらに、国が定めた診断基準もとても正当なものとは言いがたい。しかし政府は、77年基準の変更に一向に応じようとしない。最高裁の判決を受けとめ、長い間責任を認めてこなかったことについて、その責任を明確にし、被害者や家族の方々に謝罪するべきだ。そして一刻も早く行政認定基準の見直しや政治決着した患者への追加補償などを行い、すべての未認定患者を救済することが必要であると思う。患者も高齢化してきて、お金なんか要らないから、とにかく認めてほしいという人もいた。いままで、差別や偏見、苦しい症状と戦ってきた歳月が、水俣病と認められなかったら意味を成さない。国が認定基準を見直さない限り、水俣病問題の真の解決はないと思う。

  また、厚生労働省が日本人になじみの深い400種類(約9700検体)の魚を検討し、妊婦について摂取量に注意するように呼びかけた。これも水俣病と同じで、妊婦がメチル水銀を摂取すると胎児性水俣病の危険性があるからだ。メチル水銀中毒は他人事ではなく身近で十分起こりうるのだ。

 もう一本のビデオはオーダーメイド医療についてであった。オーダーメイド医療とは、個人の個性に沿って医療を行うことである。これまでの医療は疾患中心であり、疾患の原因を探索して、治療することが主な目的であった。しかし疾患の状態は個人で異なり、同じ病気であっても同じ治療法を適用することが必ずしも正しくないこともある。 しかし一方でそのような治療効果の個人差は治療とその効果を観察しなければ分からないものであり、最適な治療計画を行うことは難しかった。一方、ヒトゲノム計画によるDNA配列の解読や個々人で異なるSNPの特定、DNAマイクロアレイなどによる技術の発達によってある個人が他人とどのように異なるかを観測できるようになってきた。 そして、これらの情報を利用して、ある患者個人に最適な治療方法を提供できる。具体的にはある治療薬がその患者に有効であるかどうか、あるいは投薬量や副作用について予測することでどの治療薬を用いるのが正しいか、どの程度の投与を行うかと行ったことが分かるようになると期待されている。そして、技術的には今すぐにも可能だが、倫理的な課題が残されている。まず、プライバシーの問題がある。ある人が遺伝子診断を受けて、ある種のガンにかかる危険性が高いと診断されたとする。そうすると、例えば保険会社はその人に対する生命保険を停止するかもしれない。あるいは、そのことで会社を首になる可能性もある。次に、生命倫理の問題がある。例えば胎児の遺伝子診断をして、その子が障害を持って生まれるかどうかがわかる。では、障害があると診断されたとして、中絶をすることは許されるのかどうかといった問題がある。オーダーメイド医療は非常に有益な技術である。一刻もはやく現実のものにするために国は基準をはっきりさせてガイドラインを作成するべきだと思う。

最後に、公害は過去のものではなく最近ではアスベスト問題が注目された。我々将来医師を目指すものは物事を正しく理解しそれをほかの人に伝える義務があると思う。そうすれば、偏見、差別といったものを無くせるだろう。そして、いくら技術が進んでも私たちが見るのは人間であり、パソコンの画面やデータではないということを強く思った。そうすることによって、技術に振り回されることなく理想的な医療を提供できると思う。