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水俣病と妊婦について
      
選んだキーワード「妊婦」と「水俣病」

はじめに
1956年5月1日、水俣病が公式に確認されてから今日でちょうど50年を迎えた。しかし、水俣病は今もなお多くの未解決の問題を抱えている。未だ水俣病の患者さんの人数をはじめ、被害の全容、その毒性発現機構が明らかになっていないからだ。今回の論文を書くにあたり、自分が水俣病について、そもそもその原因物質についてあまりにも知らなかったので調べてみた。その後論文、ビデオ、資料等を読みまとめた。

授業で見た2つのビデオの内容

 4月に見たビデオから、水俣病の認定制度の難しさを知った。熊本で働く医師が登場し、水俣病と認定することの難しさを告白していた。私は今まで水俣病を認定するのが難しいというのはその診断が困難であるのかと思っていたが、医師が認定しても国が認めなければならないという点や経済的な面からも患者さん自身が苦労するため、難しいのだと知り驚いた。医師は臨床だけでなく公 衆衛生にも深く関わることを知り過去の過ちをよく知りよく学びとりこれからの社会に必要な知識を持つ必要性を感じた。
2つめのビデオではオーダーメード医療について学んだ。同時に個人情報の取り扱いについても考えさせられた。将来、オーダーメード医療を行う世になった場合、人々は自分の遺伝子情報を持ち歩き遺伝子タイプで治療法を選ぶようになるのかと考えると不思議な気がした。医師が治療法を選ぶのではなく遺伝子がふさわしい治療法を選ぶようになるのかと感じたからである。特に印象的であったのは遺伝情報に基づくダイエットであった。コメントの中に「もうちょっと食べるのを減らしなさい。」とただ言われると周りの人と同じであまり気にならないが「あなたは太りやすい遺伝子を持っているので」と言われると自分の体は特別だと考え、もっと注意し頑張る気になる、というものがあった。
これは遺伝子が人それぞれ皆異なることを上手く利用した例だと思う。あなた自身の遺伝子ですからあなたの努力が必要であなたにあった治療法です、と言われるほうが、説得力が上がるのではないかと思う。

選んだ論文の内容の概略

 「メチル水銀と魚介類の摂取」について
 2005年八月内閣府食品安全委員会がメチル水銀の耐用摂取量を答申した。水俣病では成人の犠牲者だけでなく胎児性水俣病の患児も出生した。現在の環境


では高濃度暴露の機会はないが自然界には水銀が存在し一部のメチル水銀に変換され食物連鎖によって肉食魚などに蓄積し、それらを多食すると暴露されるからである。この答申では対象を妊婦に限っていた。母親の血液―胎盤を通して退治の感受性は高いからである。その一方で魚介類には有用な不飽和脂肪酸も含まれている。よってメチル水銀濃度の比較的低い青味の魚を適当量食べることがもっともよい選択といえる。

 「メチル水銀の毒性発現機構」
水俣病の発見から50年が経過した現在、日本では環境汚染物質としてのメチル水銀の危険性は一般的にはすっかり忘れ去られてしまったように思われる。
しかしアメリカでは胎児の脳に対するメチル水銀の影響を危惧して2001年に、妊娠中または妊娠する可能性のある女性は大型魚類を摂取するべきではないという勧告が出された。メチル水銀は退治中に蓄積しやすく、発達途中の胎児能はメチル水銀に対する感受性が高いので比較的微量のメチル水銀によっても脳機能に障害が生じる可能性があるためである。メチル水銀の毒性発現機構はほとんどわかっていないがメチル水銀の毒性発現に影響を与える細胞内因子を検索し、2つの酵素を同定した。これによりメチル水銀の細胞内標的分子が明らかとなることが期待されている。
 


水俣病の原因物質、水銀について。
 私たちの日常生活の中に水銀と関連のある製品は、蛍光灯、乾電池、温度計、血圧計、歯の詰め物に使われるアマルガムのほか様々な電気製品や薬品・化粧品など数多くある。水銀は生殖機能やホルモン系に影響を及ぼしたとえ微量でも体内に蓄積される」と毒性が高まり人体に多大な絵今日を及ぼす。
 人間の体に有機水銀がたまると、目で見える広さが狭くなったり、手足がしびれ運動神経が麻痺して歩行困難になるという病気になる。メチル水銀は腸管吸収率ほぼ100%で血液脳関門、胎盤などを容易に通過するため、胎児にも影響を与える。
ただどれほどの量が危険なのかよく分からなかったため調べてみた。胎児に悪影響を与える恐れのあるメチル水銀の耐用摂取量は一週間で体重1キロあたりで2マイクログラムである。(2005年6月8日)ちなみに以前までは3.3マイクログラムであり40パーセントも下回る数字となった。
安全な摂取量を今まで多く見積もりすぎていたという事実は被害を拡大させていたのではないかと不安を覚える。しかし過去10年間の日本人の平均摂取量は1.2マイクログラムなのでよほどとりすぎていなければ安全といえる。
 特に多い魚介類は食物連鎖の上位にあるサメやカジキ、マグロなどの大型魚、斤目代のような深海魚、一部の鯨である。とは言っても実際にどの魚を食べたら何マイクロだかよく分からないので計算してみた。

   寿司、刺身 一貫または一切れあたり 15グラム程度
   刺身    一人前あたり      80グラム程度
   切り身   一切れあたり      80グラム程度

 妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂取量の目安
 魚介類          摂取量の目安
 バンドウイルカ      1回約80グラムとして妊婦は2ヶ月に1回まで  1週あたり10グラム程度

 ゴビレゴンドウ      1回約80グラムとして妊婦は2週間に1回まで
              1週間当たり40グラム程度

 キンメダイ
 メカジキ         1回約80グラムとして妊婦は週1回
 クロマグロ        1週当たり80グラム程度
 メバチ
 エッチュウバイカイ 
 ツチクジラ

 キダイ
 マカジキ         1回約80gとして妊婦は週2回まで
 ユメカサゴ        1週間当たり160グラム程度
 ミナミマグロ
 ヨシキリザメ
イシイルカ

厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/ 参考

 
私はイルカや鯨は好みでないのでキンメダイとマグロについて考えた。
私は週に一度は魚を食べる。それは刺身がほとんどでキンメダイの煮つけなどは年に一度食べる程度だ。切り身でおよそ300グラムあるとしたら月に320グラムまで食べられるので余裕で平気だ。幸いなことに私は白身と青みの魚が好きでマグロが苦手であり一月に刺身を一切れ、寿司を一貫程しか食べないので多くても月30グラム程である。これも月320グラムまで、食べられるので平気である。と、私はこのままの食生活であれば平気である。
しかし妊娠すると食べ物の好みが変わり好きなものばかり食べ続けると言われている。例えば今私はアイスクリームが大好きで毎食食べても飽きない。よってその大好きなものがキンメダイになったとしたらどれくらい我慢しなければならないかを計算してみた。煮つけを一月に一度、またクロマグロは週に5貫程度ミナミマグロであれば週に10貫である。好きなものであれば我慢できるにしろ大好物となったら危険である。これだけではもちろん足りないからだ。
 しかしお腹にいる子供のことを考えたら我慢も平気であろう。怖いのは妊娠したことに気づかず魚好きな人が変わらず食べ続けることである。事実大人にはあまり影響が無く胎児には影響があるのが微量な水銀であり、よって勧告も妊婦に対象をしぼっている。しかし論文にも書いてあった通り魚にはEPAやDHAのように有用な飽和脂肪酸も含まれている。なるべく普段から大型の魚類の摂取量は少なめに、バランスのよい食生活を心がける必要があるだろう。
 



まとめ

 水俣病は今年で発見されてから50年を迎える。しかし未だ原因であるメチル水銀の毒性発現機構は解明されていない。それに加えビデオを見て知ったのは医師の判断だけでなく行政と司法の二重基準が水俣病の患者さんたちを苦しめている事実であった。
現在、胎児性患者は40代から50代になっている。親は70代を越え、介護が
高齢化する家族に委ねられている。もちろん地域社会に福祉施設がないわけ
ではないであろう。しかし水俣病は「奇病」として恐れられ、同じ病と認めたくなく自らの症状を周囲に隠した患者も多い。偏見や差別の中で人と人の信頼関係がなくなり専門機関に相談できない人も多い。未だに患者であることを知られることを嫌がり、患者であることを子供に告げていない親もいる。住み慣れた地域で、相談のってくれる人がいることがどんなに心強いかビデオを通して感じられた。仲間や地域の人と交流が持て、体調が悪い時に自宅に通ってくれる医師、もちろん介護で疲れた家族の相談にのれる場が必要だと思う。将来自分が医師となるにあたり、水俣病に限らず、様々な病の治療法だけでなく、その背景、サポートする機関、その利用方法をよく知り、その人、その人にそった提案ができる医師になりたいと思う。2つめのビデオのキーワードは「オーダーメード医療」であった。私は今までオーダーメード医療というのは一人一人にあった「薬」や「医療方針」だと考えていた。しかし今回、水俣病について学ぶうちに「薬」や「医療方針」だけでなくその医療方針にたどり着くまでの「関わり合い」がもっとも重要でオーダーメードであるべきでないかと考えた。母親は自分が魚を食べてしまったせいだと自分を責めているかもしれない。医師の仕事はその病を完治させるだけではない。そんな時に母親にどのような言葉をかければいいか、患者さんに対してはもちろん、その家族にまで何がしてあげられるのかを考えるのも医師の仕事である。そのためには幅広い選択肢を医師自らが知ることが重要であると感じた。またメチル水銀毒性に対する防御機構の解明が諸外国でのメチル水銀中毒の役に立つことは間違いなく、より早い解明が必要であると考えられる。

  

参考文献
ヒューマンライフ医科学研究所 www.hllabo.com/mercury.htm
厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/ 
朝日新聞    2006年5月1日月曜日
からだの科学 246号 「メチル水銀と魚介類の摂取」 佐藤洋
医学のあゆみ 202 「メチル水銀の毒性発現機構」 長沼 章 黄 基旭