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予防と健康レポート

1.はじめに
 授業でのビデオ鑑賞では遺伝子治療のことを主に話が進められていた。ヒトゲノムプロジェクトによって人間の遺伝子配列が完全に解析された。そこで個人の遺伝子を調べることによって肥満のなりやすさ、治療薬の効果の出やすさなどさまざまなことがわかってきている。そこでそれらの事を踏まえこれからの医療に様々な進化を与えるであろうヌクレオチド配列のことを考え、私の読んだ下記に示す論文と関連させながら私の考えを述べていきたい。

2.選んだキーワード
  pollen allergy 、 nucleotide sequence

3.選んだ論文の概略
  私の選んだ論文は「allergen drives class switching to IgE in the nasal mucosa in allergic rhinitis」日本語訳すると、「アレルギー性鼻炎ではアレルギー起因物質がIgEへのクラススイッチを鼻粘膜で引き起こす」ということになる。この論文によるとIgEを発現するB細胞は鼻粘膜と末梢を比べると鼻粘膜のほうが1000倍以上多く見られるということである。そして一般的にはリンパ組織でしかクラススイッチリコンビネーション(class switch recombination)(以下CSR)は起こらないと考えられておりリンパ組織で起こったCSRによりIgEが発現され血流に乗って鼻粘膜に入るという考えであった。CSRとはつまり抗体のタイプ(IgE、IgM、IgGなど)の変化である。抗体はB細胞によって発現される。1個のB細胞は1個の抗原しか認識しない。そこでもともとIgMを発現していたB細胞が何らかの刺激、シグナルによってIgE、IgGなどの別のタイプの抗体を産生するようになることである。その変化は体内の状況に応じて変化してくる。例を挙げるとIgGなどは体内に異物が入ってきたときなどによく上昇する。しかしこの論文ではCSRは鼻粘膜でCSRが起こるのだという論理が述べられていた。そしてアレルギー性鼻炎のときは鼻粘膜中にIgEが発現することからそのIgEへのCSRが鼻粘膜で起きているという仮説をもとにそのCSRを刺激、誘発させるものはアレルギー起因物質ではないのだろうか。と考え、それではそのアレルギー起因物質の刺激を止めればアレルギー性鼻炎の治療に役立つに違いないということを述べていた。その内容を詳しくまとめると、まず一般的な知識としてCSRが起こるために必要なものはactivation-induced cytidine deaminase(以下AID)という酵素であるということ。AIDは遺伝子の再編成を起こさせるために必要な酵素である。そしてAIDの活性化にはIL-4というサイトカインが必要ということである。AIDはIL−4によって発現する。つまりIgEの発現にはAIDという酵素が必要でさらにその発現にはIL-4の出現が必要であるという理論が成立する。ではそのIL-4はどこからくるのかというと肥満細胞である。肥満細胞がアレルギー起因物質により顆粒を分泌し、それとともにサイトカインであるIL-4が分泌される。それをB細胞が受け取りCSRが起こる。そしてIgEが発現される。そのIgEは肥満細胞にあるIgE−Fcレセプターと結合し、肥満細胞に結合した状態で鼻粘膜に存在し、アレルギー起因物質と結合すると鼻炎になる。それはアレルギー起因物質によってその放出がされているということで、それによってIgEが発現され鼻炎になるということである。そこでIgEの発現を抑えられれば鼻炎も抑えられる。そして鼻粘膜生検によってそのアレルギーの進行状態がわかるので治療もしやすくなる。つまり鼻粘膜の生検によって、今一番発現している物質を調べることで、今何の物質を標的とすればよいか、どの場所を標的にすればよいかが違ってくる。それを今後の治療に役立てられるのではないか。このような概要であった。

4.選んだ論文の内容とビデオの内容から、自分自身で考えたことについて医療関係者を目指す者としての考察
  上記の論文は主にアレルギー性鼻炎の機序からどこを止めれば治療薬として使えるのかという観点で述べていた。ここで考えたいのは個人個人ヌクレオチド配列が違うということである。それによって何がちがってくるのかというと、体を構成する蛋白質すべてであり、個人個人によってアレルギーを起こす物質は違ってくる。これは要するに受容体の違いであり、それは受容体のうちの認識部位のヌクレオチド配列である。言い換えればアミノ酸配列の違いによってその個人個人のもつアレルギーの起因物質が違ってくるということだ。花粉症も同じで杉の花粉に対して肥満細胞が脱顆粒を起こすような受容体をもっていれば杉の季節に花粉症にかかってしまう。ではそれを防ぐことは出来ないのかというと完全に防ぐということは出来ないのだろうと考えられるし、今現在完全に治すことのできる薬など聞いたことがない。しかし症状を軽くすることは出来るのではないかと思う。それにはヒトゲノムプロジェクトによって解明された塩基配列が重要になってくる。ヌクレオチド配列と塩基配列の違いを述べておくと、塩基と1個の糖とリン酸が結合したものをヌクレオチドというので塩基配列とヌクレオチド配列というときの大きな違いはないとわかる。ここで鼻粘膜から生検をして塩基配列を調べる。それによって何に対してアレルギーをもっているか、この場合だと何に対して花粉症になりやすいのかがわかる。それに対し花粉症の時期になってからアレルギー起因物質を肥満細胞に作用させないようにブロッカーの薬を与えてやればいいのではないかと思った。また鼻粘膜に出てくる物質によっても鼻炎の過程が分かると思われ例えばIL-4が多く出ていればまだ初期の段階だと診断できると思われその時々にあった治療、治療薬が得られるのではないかと考えられる。まだ薬理学も学んでいないのでこの仮説は間違っているのかもしれないが、これから学んでいく上でこのことを念頭に置きながら勉強を進めていきたいと思う。
 ビデオの内容では薬の効果も人によって違うと述べられていた。このことについては受容体が違っているのなら、受容体の発現の数にも違いがみられるのではないかとも考えられる。受容体の数が違えば当然有効になる薬物の量も違ってくる。また薬物を分解する酵素の量なども考えられる。薬物を分解する酵素の量が多ければ多いほど薬物の半減期も短くなり、より多くの薬物の量を増やさなければならない。ビデオの内容は結核とその治療薬のイソジアニドについて述べていた。このようなことが薬の効果といわれると考えられる。実際ビデオでは酵素について言及しており、それによって3つのタイプにわけられるとあった。そしてそれに応じて治療薬の投与量を変えていると述べていた。しかし実際のところ受容体も関与するのではないかと思うが、それについてはこれからの授業で考えていこうと思った。これらのことから個人の薬の投与量が違ってくることがわかる。そのことが意味するものは個人に合った投与量であるため、その薬が最も少なくて最大限に作用する投与量が得られる。つまり薬自体がもつ副作用の効果を最小限に食い止められるという大きな利点があり、それを患者さんが得ることができる最も大きな利益である。
  また、ビデオの内容では肥満に対する治療にも塩基配列の解析が使われているとあった。肥満は高血圧の原因になる。そこで高血圧の患者さんに対してダイエットを進めるときにもどのような食事にすれば効果が出るのか、などまでわかっていた。これも酵素についてと言及されていたが、受容体のことも関与があると自分では思うので、それについても今後の勉強で見つめていきたい。酵素についてはその量や形によって基質を分解できるスピード、量が違ってくる。このことより自分が太りやすい体質なのか、どの程度のカロリーをとれば痩せられるのかが判明する。これよりある疾患の原因がわかればそれに対する対策が個人個人によって立てられる。個人個人にあった病気の予防、原因の消失を行うことが可能になっていっており、これからの予防医学にもとても役立てられるものだと思った。
 以上のことは医療に大変な進歩を与えていると思われるが、その一方ではその情報の保護が大きな問題になっているとおもわれる。今現在遺伝子レベルの治療、個人個人に対して最も適切な治療がなされるオーダーメイド治療はどこの病院でも行われてはいない。しかしこれからの近い未来に遺伝子レベルの診断が全国各地に普及するとなると、その情報の保護という重要な問題が発生してくる。要するに完全な個人情報がわかってしまうので患者さんの人権損害にもつながりかねない。最近法定された個人情報保護法などに真っ先にあてはまるような重要な情報である。最近、塾、警察、ましてや政府機関に起こっているウィニーなどのファイル交換ソフトなどによる情報の流出が病院などで起こったとしたら大変なことになる。なぜなら患者さんのすべての情報が外部に漏れるということだからだ。そのためにも病院にも変化が必要だと思う。「完全なる個人情報の保護」それがこれからの医療で必要とされていることの一つなのではないだろうか。

5.まとめ
  今と昔の医療には医療の進歩により死因、疾病構造の変化などの様々な変化が見られている。細胞レベルでの疾病の成因、診断などこまかなところまで今現在はわかっている。そしてじょじょに遺伝子レベルでの診断、成因の理解につながっている。その疾病構造の変化に伴い現代医療はさまざまな問題に直面してきた。それは食生活、環境の変化による病原体の生存区域の拡大などが挙げられる。そして今新たに医療の変化がみられている。遺伝子レベルでの医療、それに伴い新たな問題が発生してきている。そのなかには個人情報の保護が含まれている。そしてまだ私たちの考え付かないような問題が起こるかもしれない。その変化に真っ先に対応してなくてはいかないのが私たち医療従事者だと思う。それらのことを考えると今自分たちが行わなければいけないのは、今私たちが学んでいる今までの医療だけではなく今行われている医療を学ぶことだと思う。そのためにも今学んでいることは今のうちに理解しなければならないし、新しいことを知るためにニュースや新聞など最新の情報を手に入れなければならない。それを自分のものにしなければ時代に適応できないただの古いコンピューターのようになる。そして周りに置いてけぼりをくらって処分されるのを待つだけとなってしまう。例えはよくないかもしれないが実際今現在、人口に対しての医師の割合が増えてきている。それが導くものは、医師が余る世界である。それらの中でただ今までの経験を持っているだけではこれからの世の中では不足なのではないかと思われる。確かに経験というものは個人が持つ重要な財産であり、とても大事なものであると思う。しかし、経験だけに頼って新しい知識、情報をおろそかにしてはこれからの医療では生き抜いてはいけないと。医療と同じように、医療とともに私たちも進化していかなければならない。これらのことから私は「新しい情報」の大切さを学んだ。これから私はそのことを忘れずに新しいことを身に付けるように努力をしなければならない。それがこれからの医学で必要とされていることであると私は思う。