← 【レポートサイト top】 →
------------------------------------------------
1、 はじめに
予防と健康管理ブロックで水俣病、メチル水銀についてのビデオをそれぞれ見て、それに関する自分が選んだキーワードに沿った論文を読んだ。水俣病やメチル水銀など、ピンポイントなキーワードにすると、その方面で専門的になりすぎる気がしたので、抽象的な言葉(中毒・胎児)を選んだ。環境汚染物質の胎児の影響について書かれていたが、興味を持って読むことができた。普段汚染物質の数値を確認するわけでもなく生活しているので、言葉では聞いていても意識していなかったが、少量でも異変が現れることがあるのは恐ろしかった。また、胎児だけでなく成長した人間にも害はあるかもしれないと考えると、環境問題について考え実行することは大切であると思った。
2、選んだキーワード toxicity fetus
3、選んだ論文の内容の概略
塩素化炭化水素合成物(OC)と水銀の環境暴露による妊娠中の甲状腺ホルモンの変化。
ポリ塩化ビフェニール(PCB)や、塩素で処理された農薬(ここではp,p-DDE、cis-nanochlor、ヘキサクロロベンゼン)と水銀Hgは、動物と人間の内分泌系に異常をもたらす環境汚染物質である。しかし、農薬や水銀の少ない暴露による妊婦と新生児の内分泌への影響の証拠はほとんどない。そこで妊娠中の女性の臍帯血のOCとHgの血中濃度と、甲状腺ホルモン濃度の関係を調べた。
まず、PCBは、水酸化(OH−PCB)、そしてメチルスルホンPCBという過程を通る。OH−PCBは母体の血漿から胎盤へうつる。血清の甲状腺ホルモン(TH)結合タンパク質との親和性を増し、肝臓薬物代謝酵素の活動を増す。また、母体や胎児のT4(リンパ球の一種)、遊離したT4の減少が見られる。メチルスルホンPCBへの人への影響については分かっていない。OCはヘキサクロロベンゼンにより甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度に関与している。
農薬の量が低い環境にいる妊婦の循環する総T3(TT3)は、PCB濃度、p,p-DDEとヘキサクロロベンゼン、血中無機Hg(IHg)には反比例し、cis-nanochlorはTT3の減少と関係した。遊離したT4(fT4)、TSH濃度との関連は見られなかった。臍帯血血清fT4とIHgは反比例しているが、それを除き臍帯血の有機汚染物質濃度はTHとは関係していなかった。メチル水銀の暴露によるHg濃度と甲状腺機能の低下との関係は見られなかったが、母体血液中のPCBと臍帯血のT3は反比例の関係にあった。T3の取り込み低下により甲状腺機能が低下するのでこれは説明できる。
他の生物学的要因(ヨウ素、セレンの摂取量など)は臍帯血のTH不足と関係する。これは内因性ホルモンホメオスタシスに影響するからである。また、胎児のチロキシン結合性グロブリン(TBC)と他の結合タンパク質は、結合しているTHに作用する化学製品の中毒の影響から退治を保護する。TBCと同様に、臍帯血血漿での遊離T3・T4は環境汚染物質(PCP,OH−PCB)と反比例する。環境汚染物質は臍帯血血漿でのTSHとも反比例していた。
OCとHgの暴露はT3量減少につながり、それは脱ヨウ素メカニズムにより説明できると仮定する。デヨードナーゼ(D3)によるT3減少はTHの不活化をおこす重要な経路である。D3はT4以上にT3に基質選択を示し、胎盤組織に多くある。D3の過剰発現・活動過剰は直接的・間接的な誘導に関連することは分かっているが、T3の量との関係はまだ分からない。
簡潔にまとめると、甲状腺機能に関するトリヨードサイロニン濃度と、PCB・農薬・無機Hg(IHg)間で反比例が見られた。OCと臍帯血の血清甲状腺ホルモン値には相関が見られなかった。臍帯血血清の遊離したチロキシン(甲状腺に存在する活性ヨウ素化合物)と無機Hgは反比例の関係にあった。これらより、妊娠中の環境汚染物質の持続的少量暴露でさえ、甲状腺に異常をもたらすことが分かった。
4、
一つ目は水俣病に関するビデオだった。水俣病という言葉はあまりにも有名でだれもが知っているが、それについて言えと言われて多くのことを答えられる人はあまりいないだろう。私もその一人で、水俣病と聞くと環境に関する難しい病気というイメージがあり、理解するのを避けてきたといっても嘘ではない。今回ビデオを見て大筋を知り、理解できたとともに考えさせられることも多くあった。水俣病はメチル水銀中毒による病気である。昭和32年に水俣湾でとれた魚を食べたことによる食中毒がおこった。その後食品衛生法により患者は減少するはずだったが厚生省は、水俣湾の全ての魚が有害であるという証拠がないとして認めなかった。結局患者の数は増え、対策しようがない食中毒となってしまった。2004年に判決が下され22年間にわたる裁判が終わった。裁判所は熊本県の責任を認めた。しかし行政の判断ではそれでも水俣病患者として認定しない人もいた。これは行政と裁判所が言う水俣病についての定義が違うからであった。国が想定する水俣病患者は約3万4千人であるが、水俣病と認定されない患者も多くいる。水俣病は医師が診察しただけで正式な病名がつけられるのではなく、行政が決定して初めて水俣病と判断されるという。行政が最終判断をする必要があるのだろうか。行政側のどういった思いでそうしたのかがよく分からない。また水俣病は麻痺や痙攣などの重い後遺症が残るそうだ。症状は同じでも、行政が認める認めないにより(水俣病患者であるかどうか)、お金の援助・健康保険が使えるかが大きく変わる。水俣病の認定に関わらず、多くの方が症状・後遺症に悩まれたことは悲しいことだ。病気が治ればそれで終わり、というわけでなく、一生病気と付き合っていかなければならない。自分は魚を買って食べただけなのに、あまりにも荷が重い。自分の身近な人が、自分が、もしもこういう悲惨な出来事に巻き込まれてしまっていたらと考えると水俣病患者や患者の周りの方々の苦痛と苦悩を図り知ることはできない。また行政の対応がもう少し早ければ患者数も少しは減っていただろうと思うと残念だ。水俣病と認定されるかされないかでお金の援助額が変わるということも生きていく上では重要であるが、メンタル的な部分も大きかっただろう。水俣病患者と同じ症状なのにそう病名がつけられないことは悔しいし疑問だ。次に医師について考えてみた。医師は病名確定の一つの通過点でしか過ぎなかった。これも全く疑問である。行政はきちんと水俣病患者の実態を見ているのだろうか。この点では何十人も見ている医師のほうが臨床的な水俣病の症状の理解は明らかに深かったといえる。なぜ医師に任せなかったのか。医師も複雑な気持ち、やるせない気持ちで患者の診察にあたっていたのではないかと思う。患者や周囲の人、医師は、みんなで助け、支えあってこの病気と戦っていこうとしている。行政は患者の気持ちにたって援助をするべきだった。考えれば辛さは分かるはずだし、ただでさえ辛い中、国と戦わざるをえなかった患者の気持ちを分かってほしい。そしてまだ残る後遺症と戦う水俣病患者を少しでも援助できたら良いと思う。
私が読んだ論文は塩素化炭化水素合成物と水銀への環境暴露に対する妊娠女性の甲状腺への影響、また胎児への影響について調査したものである。概略はすでに書いた通りである。これは環境汚染による人体への影響という点において、一つ目のビデオの環境問題についてと重なるところがある。水俣病については汚染された魚を食べたことによる食中毒と原因がある程度はっきりしている。しかし論文のほうはそこまで原因がはっきりしていない、言い換えれば注意していないと誰もが環境汚染による影響を受ける可能性があるということだ。これは恐ろしいことだ。そして胎児にまで被害がかかる。まだ生まれたばかりの何も罪のない子どもに、人間が汚した環境で障害を持ってしまったのなら、やりきれない気持ちでいっぱいだ。色々と便利な世の中になってきた。しかしそのせいで、工場からの煙、川へ捨てられる汚水など環境を壊すようなことを人間は平気でしている。"住みやすい地球"についての考え方が間違っている、あるいは気付いていない人が多いのかもしれない。汚した地球は自分達で綺麗にするほか方法はない。胎児への影響という話は今回初めて知ったが、これから自分で情報を取り入れ、個人の意識改革から進めたい。
もう一つのビデオでは「遺伝子タイプで選ぶ治療法」が紹介されていた。例えば今有名な遺伝子の違いによるオーダーメイド治療などがあげられる。ここ数年で研究が飛躍的に進み、メディアでも注目されている。遺伝子治療の第一号は、1990年にアメリカで行われた。DNAの研究が進められ、二重らせんが発見されてからまだ50年だ。そして、だいぶ研究は進んだようだが、未だ全てのDNAがそれぞれ意味するものは分かっていない。それなのにそこに配列されている遺伝子を使って治療をしようとし、今実際に治療していることは驚きである。ただすごいとしかいえない。インターネットで見てみると、岡山大学でも1999年から患者の安全を第一とした肺癌などの実験的治療が始まったという。あまりにも世界が小さすぎるので治療と言っても頭にぴんと来ないが、身近なところで治療をしていると聞くと少し現実味も感じられる。いくつか例をあげてみると、肥満に関する遺伝子があるとされており、ダイエットをしている人にやせにくい体質と伝えることで、よりダイエットの決意を高められる可能性もある。心筋梗塞は、生活習慣病により発病することが多いが、遺伝子の組み合わせにより心筋梗塞になる可能性もあるという。体内に存在するアルデヒド脱水素酵素によりアルコールが分解される早さが変わるのでアルコールに強いか弱いかの指標となる。これも遺伝子によるもので、酒おび運転での検査法も見直される時代がくるかもしれない。こう聞くと、私達日常の生活に入り込んできていることが分かる。アルコールを分解する酵素によってお酒の強さが決まるという話は時々聞く話だが、深く入り込めばれも遺伝子の情報によるものだったと言われて気付いた。人間が新たな治療法を見出そうとしていることはこれからの医療界にも期待がかかる。期待をしているだけでなく、私自身も医療関係者として遺伝子治療について考えなければならない。
5、まとめ
2つのビデオと論文を読んだが、特に環境問題について考えさせられた。医師になるための勉強をする上でどうしても患者の治療だけに目が行きがちだった。食生活や生活のみだれからくる生活習慣病も増えており、病気の原因は日常生活にまで及んでいる。しかし生活からだけでなく、そこからでたゴミといった環境汚染物質も原因となっていることを頭にいれておかなければならないことに気付いた。水俣病の行政の対応・環境汚染といった過去の過ちを忘れずに、またその対応をしつつ、遺伝子治療など未開発な部分も含め新しい未来に向かって進んで行けたら良いと思う。