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予防と健康管理ブロックのレポート
     

1.はじめに
今回、私は水俣病に関するビデオと遺伝子治療に関するビデオを見て感じ、思ったことをレポートにまとめようと思います。最近、世の中では遺伝子治療やオーダーメイド医療という言葉を良く耳にしますが実際にはどの様になっているかを知りたいと思いました。これらの言葉は、まるで万能の医療であるかのような響きを持っていますが実際にそうなのかどうか、例えば、人によって薬という物は用法や用量が異なったり、ある人には効く薬が別の人には効かないと言うことがあります。例えば、私は鼻と喉が少し悪くて同じように鼻と喉が悪かった母の薬をもらっていました。その薬を飲むと母はぴたりと咳や鼻水が止まっていたのに対して私はあまり効果が出なかったのを覚えています。そういうことは、遺伝子レベルで決まっているのか、それとももっと別のことで決まっているのかを知りたいと思ったので次に示すキーワードを調べようと思いました。

2. 選んだキーワード
"遺伝子多型"と"薬剤耐性"、この2つのキーワードに関する論文を調べてみようと思いました。最初でも述べましたが人によって薬が効いたり効かなかったりするのは、遺伝子によって決まっているのかを知りたいと思ったからです。

3. 選んだ論文の内容の概略

・抗がん剤とABCトランスポーター
           岡 三喜男  福田 実  早田 宏
抗がん剤がその効果を発揮するためには、最終的にがん細胞の標的分子に十分量が到達することが必須である。抗がん剤のがん細胞への到達は薬物動態解析から推測されるが、その薬物動態は主に吸収、分布、代謝、排泄の四つの要因からなる。この細胞外及び体外への排泄を担う主要分子としてABCトランスポーターが存在する。これらの過程のいずれかが障害されると、臨床的な抗がん剤耐性を招くことになる。薬剤輸送タンパクであるトランスポーター型のABCタンパクは主に細胞膜に存在しATPエネルギーを利用して、基質の濃度勾配に逆らって薬剤を細胞内から細胞外へ能動輸送する抗がん剤排出ポンプとして機能し、薬剤の細胞内蓄積の減少という形で耐性に寄与する。他方、細胞質内に到達した薬剤を細胞質内のゴルジ装置を初めとする小胞内に隔離し、標的分子との接触を阻止する。一方、個体レベルから考えると薬剤の排泄だけでなく吸収にも大きく関与している。現在までに48個のヒトABC遺伝子が分離され、その構造相同性よりA?G群までの七つのグループに分類されている。抗がん剤輸送に関与する主なABCトランスポーターは現在Pgp/ABCB1、MRP1?3/ABCC1?3、BCRP/ABCG2とされ、それぞれの基質となる抗がん剤が存在する。最近、分子標的薬がPgpやBCRPの基質であることが注目され、ABCトランスポーターの遺伝した型が薬物動態、薬効、有害事象に大きく関わることもわかっている。つまり、抗がん剤耐性因子であるABCトランスポーターの基質認識機構を解明することによって、ABCトランスポーターの認識を回避する薬剤の設計が可能となる。BCRPの基質認識部位を標的にして多数のcamptothecin誘導体のスクリーニングを行い、BCRPを回避する有望な化合物を見いだし臨床応用を目指している。ABCトランスポーターは生物の必須タンパクとして進化し多様性を維持してきた。一方、この事は薬剤耐性という薬物療法の大きな妨げとなっていることも事実である。最近、ヒトゲノム解析によりABCトランスポーターの遺伝子多型についても多くの知見が得られ、薬物動態研究においても無視できない状況にある。今後臨床医といえども、実地医療の中でABCトランスポーターの重要性を認識する必要がある。そのためにもABCトランスポーターの網羅的な研究とその成果の流布が求められると述べられている。

・ゲノム情報と薬剤耐性
            秋山 伸一
分子標的薬剤の登場は、癌の化学療法に大きな変革をもたらしつつあるが、抗がん剤耐性は依然としてがん治療の大きな障害であり続けている。Pharmacogeneticsは、ゲノムの変異が薬剤反応にどのように影響するかを調べる。腫瘍分野での遺伝子多型の解析は、癌になりやすい体質や、抗癌剤に対する反応性を予測し、個々の症例にもっとも適切な抗癌剤の選択をすることを目的にしている。一方、Pharmacogenomicsは、ゲノムワイドな遺伝子発現データを利用し、個々の症例の薬剤感受性(耐性)を予測する。前者は毒性の予測に、後者は効果の予測により貢献している。これらの技術の進展と臨床研究によるデータの蓄積により、近い将来個々の症例に最適な化学療法を行える日が来ると予想されている。最近、分子標的剤に対し耐性を獲得した腫瘍で、腫瘍内の標的分子の遺伝子変異が耐性の機構として重要であることがわかってきた。ゲノムの変異、遺伝子発現プロフィールの解析による抗癌剤耐性(感受性)の予測、分子標的薬剤に対する耐性の機構と耐性克服について述べる。遺伝子多型はこれまで知られている遺伝子の93%に確認されている。薬剤代謝酵素の遺伝子に多型があれば、非常に強い毒性の出現や薬剤の効果の変化が考えられる。遺伝子多型により薬剤代謝が変化し薬剤の効果に影響を与えることが明らかになっている。SNPs解析やcDNAマイクロアレイなどにより遺伝子の変異や発現レベルを調べ、抗癌剤に対する反応性を決定する要因を明らかにすることが可能になってきた。症例ごとに抗癌剤感受性を予測し、おのおのの症例に最適な抗癌剤と投与量を選択する個別化治療の研究が進行しており、抗癌剤の重篤な副作用や、抗癌剤耐性細胞の出現を減少させることが出来るのではないかと期待されている。現在知られている遺伝子多型と抗癌剤耐性(感受性)の関係、分子標的薬剤に対する耐性に関与した腫瘍内標的分子の変異、マイクロアレイを用いた抗癌剤耐性(感受性)の予測について述べている。腫瘍の性質をゲノムレベルで、あるいは蛋白質レベルで示すことの出来るマイクロアレイ技術の進歩は、腫瘍学の分野に大きな影響を与えている。マイクロアレイ技術は、抗癌剤感受性と耐性に関係したプロフィールだけでなく、予後に関係したプロフィールや治療のための標的分子、病気にかかりやすさを決める遺伝子の発見にも貢献している。Diffuse large-B cell lymphomaを分類するために遺伝子発現プロフィールが用いられ、この腫瘍はプロフィールにより二つのグループに分けることが出来た。一つは、胚中心B細胞ににたプロフィールを有するグループ、もう一つはin vitroで活性化されたB細胞ににたプロフィールを有するグループであり、胚中心B細胞ににたプロフィールを持つグループは生存期間が長いことがわかった。また、リンパ節転移のない乳癌症例で、予後の悪い症例を予測する特徴的な遺伝子発現プロフィールも見いだされている。将来の個別化治療のためには病気の診断と予後に関するゲノム、蛋白質レベルでのデータを入手することが必要になると考えられる。ゲノム全体の遺伝子発現情報解析が、抗癌剤耐性の研究に応用されている。治療前にDNAマイクロアレイ診断により、その抗癌剤に感受性があるかないかを正確に知ることが出来れば治療に有用である。また、低分子分子標的治療薬剤であるイマチニブは、P-糖蛋白質やBCRPの基質であることが知られている。これらのABCトランスポーターの機能を阻害する物質は、耐性克服薬剤の候補である。変異標的分子に対しても効果のある低分子化合物が合成され、耐性克服効果が認められている。従来の抗癌剤は、ヒト癌細胞株に対して細胞毒性の強い物質をスクリーニングして、その中から動物実験で抗腫瘍効果のあるものを見いだしている。その主な標的は、核酸、微小管、トポイソメラーゼT、Uである。これらの抗癌剤は増殖の速い正常細胞にも作用するので副作用が出現し、主作用(効果)と副作用(毒性)の出現する用量は近接し治療域は狭く、最大耐用量が至適投与量である。抗癌剤の感受性に関与している遺伝子の多型や変異により、抗癌剤に対する感受性が少しでも高くなれば重篤な副作用が出現してくることが予想される。この点からも、投与前に抗癌剤感受性を予測することは重要である。薬剤耐性(感受性)と遺伝子の多型や変異、発現プロフィールとの関連性の解析は、さらに大きなスケールで臨床研究が行われ、近い将来化学療法の個別化による癌治療成績の向上に大きく貢献すると考えられる。

4.選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察
  今回の課題をまず、ビデオの内容から考えてみると薬がその人に効くかど うかというのは薬の種類はもちろんのことだがその量が大きく関係していることがわかった。つまり、この場合において遺伝子多型はまずその薬に対する耐性を決めている。薬が効かないヒトというのは効くヒトと比べてその薬に対する耐性を持った遺伝子を持っているということになるのである。すなわち、その薬の標的部位が持つ遺伝子が異なる(遺伝子多型)ためにおこっているのである。この事は今回のレポートの参考にした論文からもわかることである。今回私が参考にした論文はどちらも抗癌剤に対する耐性と遺伝子多型との関係を示すものだったが、そこにも書いてあるように薬剤の効用と遺伝子の多型は切っても切れない関係にあるのである。では、どのようにしてこの問題を解決していけばよいのかと考えると、ビデオの中でも言っていたが遺伝子診断によるオーダーメイド医療が現在における最良の方法と言えるであろう。この方法を用いれば最初から各個人にもっとも適した薬剤の選択、量の投与が可能となるからである。しかし、このオーダーメイド医療は現在ではまだまだ普及していないのも事実である。理由はコスト面の問題と技術的な問題があげられるだろう。コスト面の問題は、まだ技術が普及していないためだと言える。技術面の問題はこの医療を実際に行うことが出来るヒトが限られていると言うことである。この二つの問題が今後改善されていくことによって、薬剤による重篤な副作用に悩まされることなく治療が行われると考えられる。

5. まとめ
今回、遺伝子多型と薬剤耐性の関係について調べてみて思ったことは昔の医療では考えられなかったようなことがどんどん現実のものになってきているのだという実感です。ただ、この新しい医療技術が一般的になるまでには倫理的な面での問題もあり、まだまだ時間がかかるでしょう。しかし、それもそんなに遠い未来の話ではないだろう。近い未来自分が医師になる頃には今以上に技術は進歩しているであろうから自分も患者様のニーズに応えることが出来るように学んでいきたいと思った。