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予防と健康医学レポート

                      

1.はじめに

水俣病とは昭和28年から35年にかけて、熊本県水俣湾周辺に多発した。原因としては、塩化メチル水銀の汚染による魚介類に蓄積した(生物学的濃縮)された有機水銀を長期的かつ大量に住民が経口摂取したためである。そのために、中毒性の中枢神経系疾患が多発した。魚介類の塩化メチル水銀汚染の背景には、原因物質がアセトアルデヒド酢酸設備内で生成され、それが工場廃水に混入され排出されたことにあった。水俣病には後天性水俣病と先天性水俣病が存在し、前者の症状としては求心性視野狭窄、言語障害、歩行障害などを含む運動失調またさらには、知覚障害、難聴などがある。私は今回、水俣病の症状にもある公害から生じる、聴力障害について調べてみた。

 

2.キーワード

「公害」と「聴力障害」のふたつのキーワードについての文献を調べ、「航空自衛隊における有害な騒音環境の調査」と「耳鳴りの治療−TRT」のふたつの論文を読み、レポートを書いた。

 

3.論文の内容と概略

1)「航空自衛隊における有害な騒音環境の調査」

まずは、騒音が人体に対し、聴力低下、会話妨害といった影響を及ぼすことについてである。航空自衛隊においては、航空機の騒音が常に問題とされ、航空医学実験隊による調査が数多く行われてきた。@航空機試運転時の騒音は、整備員の聴力を低下させる恐れがあり、防音防護服が必要となる。A輸送機内では、騒音のため会話が困難であり、遮音性の優れたヘッドセット及び機内の内張りが必要となる。B管制室内では、航空機騒音のため管制業務が妨害され、管制室の遮音性等を改善する必要がある。また、航空機以外に関しては、通信機器、爆薬の爆発音、ペリオット関連機材などの調査は行われてきたが、その他の有害な騒音源や、隊員に及ぼす影響がどの程度なのかについては、十分な調査は行われず、明らかでなかった。そこで、航空医学実験隊では、「有害作業環境評価に関する研究」を三年にわたって実施した。まずは、航空自衛隊のほぼ全部隊に大使郵送によるアンケート調査を行った。その結果、作業環境について“有害、不安、疑問と感じる点がある”という回答3131件の内、807件(25.8%)が騒音に関するものであり、最も多かった。それらの内容は、航空機に関する訴えが回答の6割でみられ最も多かったが、それまでに調査されなかった騒音源に関する訴えも4割を占めていた。また、未調査の騒音源に関する訴えの8割が、騒音に関する“詳細調査希望あり”と回答した。そこで、アンケート調査で訴えのあった作業環境を対象とし、現地での聞き取り調査及び騒音測定調査を行った。未調査であった騒音環境については、聴力及び会話・通話への影響の程度を評価した。本報告では、聴力及び会話・通話にとって有害であると、新たに確認された騒音環境についての調査結果について述べる。また、聴力低下及び会話・通話妨害を防止するための対策についても検討した。

 

≪聴力への影響≫

聴力への影響としては等価騒音レベル85B以上の騒音に長時間、曝露されると聴力低下が生じるという多くの研究結果がでている。今より、この研究結果を元に話を進めていきたいと思う。(等価騒音レベルに対する曝露が許容される時間について、簡単に表でしるす。)

   等価騒音レベル(dB

   曝露が許容される時間

       80

      24時間

       82

      16時間

       85

      8時間

       88

      4時間

       91

      2時間

 

次に、実験で使用される防音保護具について書いていきたい。騒音環境でのぃ1日の曝露許容時間は、等価騒音レベル及び許容基準により計算されるが、防音保護具を使用した場合は、等価騒音レベルから防音保護具の遮音値を引いた値で計算される。(防音保護具とその遮音値について表でしるす。)

      防音保護具

      遮音値(dB

   H-133型ヘッドセット

        29

  ペルター社製H7A型イヤマフ

        31

  ペルター社製H9A型イヤマフ

        26

  ペルター社製H61FAVイヤマフ

        26

       耳栓

       5.629

    イヤマフ+耳栓

      +9〜+13.9

 

結果

   騒音源

等価騒音レベル(dB

曝露が許容される時間(無装備)

with

H-133

(with H7

A)

(with H9A)

航空機エンジン(野外試運転場)

118.2

14

2時間50

4時間34

1時間26

航空機エンジン(エンジンテストセル)

112.4

50

NU

17時間23

5時間30

グランドクーラー

106.1

3.5

NU

24時間

23時間27

KM-3

105.8

3.8

NU

24時間

24時間

ハイドロテストスタンド

96.6

31.5

NU

24時間

24時間

窒素ガス充填所内

90.0

2時間24

NU

24時間

24時間

エアーガン

104.2

5.5

NU

24時間

24時間

コンターマシン

101.1

11.2

NU

24時間

24時間

高速砥石切断機

91.6

1時間35

NU

24時間

24時間

デイスクグランダー

90.6

2時間5

NU

24時間

24時間

レーダーサイト電源室

102.7

7.7

NU

24時間

24時間

レドーム用電源車

94.6

50

NU

24時間

24時間

SAM用発動発電機

88.5

3時間23

NU

24時間

24時間

 

考察

これらの騒音源は聴力に対してとても有害であり、聴力低下を防止するためには作業環境騒音の低減と防音保護具の装着及びそれらのメンテナンスの必要性がある。

 

≪会話・通話への影響≫

騒音が会話・通話に及ぼす影響に対する評価を頻繁に会話を・通話を行う管制室内の騒音環境基準として、騒音レベル75dB以下が望ましいとする。また、頻繁に電話を使用し、1.5m離れて会話を行うオペレーションセンターのような作業環境の騒音レベルは65B以下が望ましく、電話が支障なく使え、4.6m離れて会話を行う事務室及びブリーフィングルームのような場所では55B以下が望ましいとしている。

 

結果

飛行場のエプロンに面した、気象隊及び基地ベースオペレーションで測定した騒音レベルは最大で89.8Bに達する。次に搭載電子機器総合試験装置(AIS)を空冷するブロアが発する騒音レベルは平均で75Bであった。どちらも共に、会話・通話を行う作業環境の許容基準を超えていた。

 

考察

今回の調査によりエプロンに面した建物内においても、AISにおいても、会話・通話妨害の許容基準が満たされず、会話・通話に有害な環境であることが確認できた。よって、オペレーションルームおよび事務室内の会話・通話を確保するため、窓の防音化、空調設備の設置、対騒音型電話機の採用などの防音対策を考慮する必要がある。

 

まとめ

有害な騒音環境の改善には、騒音源の低騒音化、防音保護具の有効な使用、施設の防音対策が必要だ。

 

2)耳鳴りの治療−TRT

近年の医療技術の進歩には目を見張るものがあるが、耳鳴りの治療に目を見張ると画期的な治療法は皆無といっても過言ではない。成人の約15%は何らかの耳鳴りを有し、その内の約20%が激しい耳鳴りに悩まされているように、耳鳴りはきわめてありふれた症状であるのに対し治療法はないとされていた。しかし、最近注目されている耳鳴りに対する治療法であるTRTtinnitus retraining therapy)について説明していきたい。

 

≪耳鳴りとは≫

耳鳴りは外耳より側頭葉聴覚中枢にいたる聴覚路のいずれの部位の障害でも生じうると考えられているが、臨床的に問題になるのは蝸牛より中枢の感覚器障害、神経障害による耳鳴りである。これらの耳鳴りをその発生部位より末梢性(蝸牛性)耳鳴りと中枢性耳鳴りとに分類するが、通常、耳鳴りの発生部位を特定するのは困難であり、耳鳴りに合併する難聴の責任部位が蝸牛の場合は末梢性耳鳴り、中枢の場合は中枢性耳鳴りと呼ぶ。

 

≪耳鳴りに対するTRT

Jastreboffらの提唱したTRTは、支持的カウンセリング(directive counseling)と音響療法(sound therapy)を組み合わせて施行する耳鳴りの新しい治療法のことである。TRTの目的は、耳鳴りに慣れることによって耳鳴りによる苦痛・生活障害を軽減させることである。TRTの治療結果として、Sound generatorを用いて6ヶ月以上TRTを施行した症例では、84%が苦痛度の軽減を自覚している。TRT施行の最初の変化としては、耳鳴り治療のための機器を用いることの安心感が生じる。これは、非常に気になる耳鳴りに対し比較的に聞きやすい雑音を入れることで、相対的に耳鳴りを小さくして楽にする効果と、一生このまま苦しむのかもしれない絶望感から脱して、治療を施行しているという心理的に前向きになる効果が考えられる。最終的には1〜2年程度で、静かなところにいると耳鳴りを感じるが苦痛を感じるほどのものではなく、普段生活しているときは耳鳴りを感じない状態となる。このような状態でほぼ治療目的は達成したといえる。

 

≪今後の展望≫

耳鳴りに対するTRTを含めた広い意味での心理治療を普及させる必要があるが、このためには保険点数を含めた耳鳴り診療環境の改善が必要である。また、最終的には疼痛に対する鎮痛薬のように、耳鳴りに対する抗耳鳴り薬の開発が期待される。

 

.選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察

私は今回のレポートでいろいろな公害によって聴力障害が起こることを知った。工場の垂れ流しにより生じた水俣病、騒音、ストレスなどにより聴力障害は生じる。今回、キーワードが『公害』、『聴力障害』ということで騒音による聴力障害やストレスからくる耳鳴りについて調べたが公害によって生じる障害はこれだけではないのは確かである。私は公害はまず、未然に防ぐことが一番重要なことだと思う。しかし、物事にミスはつきものだ。水俣病にしても未然に防ぐことは難しいと思う。だがしかし、起こしたミスに対して目をそらしそれをミスだと認めないことは間違いだ。たしかに、ミスを認めることに対して誰もが不安や恐れを持つはずだ。認めることで社会から非難を受けることは間違いない。しかし、その公害で一番つらいのは障害の生じた患者そして、その親族ではないだろうか。私たちそして、社会はもっと相手の立場に立って、物事を考える必要があるのではないだろうか。

 

5.まとめ

公害により障害は生じる。もっとも大切なことは公害を未然に防ぐことだ。もし、公害が生じ、それによる障害者が出現した場合、障害者及び親族に対する責任者による適切な補償が必要である。そして、不安や憎しみのない社会の実現。