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1、 はじめに
今回は予防と健康の授業中に見たビデオを踏まえて、レポートを行った。一回目は水俣病についてのビデオをみて、水俣病が発見されてから幾度と裁判で争っていたが、何が水俣病なのか、何故拡大を防げなかったかなどの問題があった。二回目は遺伝子で選ぶオーダーメイド医療についてのビデオをみて、検査の費用が安く、遺伝情報を持ち歩きどこでも適切な治療がおこなえるなどの利点がある一方で、個人情報の管理や人権などの問題があった。
2、 レポートのキーワード
今回選んだキーワードは「osteoporosis(骨粗鬆症)」「nucleotide sequence(塩基配列)」である。骨粗鬆症は病理の授業や予防と健康の老年期に見られる疾患として学習していたので、より詳しく調べてみようと考えてこのキーワードを選んだ。骨粗鬆症とは骨量の減少または骨格組織の萎縮で、骨質量の減少と骨折罹患率の増加を特徴とする加齢性疾患のことである。辞典によると、骨粗鬆症は2000万米国人に見られ、その内80%が女性で、米国では治療費用として年間約38億ドルを要している。骨粗鬆症に起因する骨折は45歳以上の人で毎年約130万件起こっており、これは50歳以上の女性に起こる骨折の50%に相当する。骨折はすべての骨に見られるが、最も多いのは椎体の圧迫骨折外傷性の手関節と大腿骨頚部の骨折である。徐じょに起こる非症候群性椎体骨折はX線検査でのみ明らかになることがあり、また身長の減少と後湾症の出現のみが椎体圧潰の徴候であることがある。股関節部骨折後は、高齢者のほとんどが正常な活動性を回復することはできず、一年以内の死亡率は20%に達する。高齢者における骨折はしばしば移動能力と独立性の喪失、社会からの疎外、さらなる転倒と骨折の恐怖、うつ病を引き起こす。骨粗鬆症は骨吸収が骨形成をしのぐ場合に生じる。骨粗鬆症を起こす機構は複雑であり、恐らく多種多様である。骨は細胞外液中のカルシウムとリン酸塩の濃度を維持するために吸収と形成を繰り返し行う。すなはち再造形を恒常的に行っている。カルシウム濃度が減少すると上皮小体ホルモン(パラソルモン)の分泌が増加し、このホルモンは血清中カルシウムレベルを正常に戻すために、破骨細胞を刺激して骨吸収を起こす。骨量は年齢とともに減少し、性、人種、閉経、体重/身長比に影響を受ける。腸管や腎機能とともに飲食物中のカルシウムとビタミンDの摂取量がカルシウムとリン酸塩のホメオスタシスに関係する。骨粗鬆症になるリスクは閉経後女性が最も高い。アジア人と白人、低体重、カルシウム摂取不足、運動不足、アルコール摂取、喫煙はそれぞれ骨粗鬆症のリスクファクターである。加齢に伴って起こるビタミンD3レベルの減少はカルシウム吸収不良を生じ、続いて骨吸収を促進する。エストロゲン欠乏は骨の吸収因子への感度を上昇させることにより骨吸収を増悪させる。激しい体育活動の結果無月経になった女性と食事制限や摂取障害の女性は骨粗鬆症の危険性がある。骨の形成と吸収は体重や運動などの外的身体因子にも影響を受ける。不動と長期臥床は急激な骨量をもたらし、一方、荷重を含めた運動は骨喪失を減少させるとともに骨量を増加させることがわかっている。骨粗鬆症は嚢胞性線維症の青年、とくに長期間ステロイド治療を受けている患者によく見られる。一次性骨粗鬆症の診断は、過度の骨減少の原因が明らかなものを除外した後、骨密度減少の証明により確定する。X線写真は骨量減少の指標としては感度が低い。その理由はX線写真が認識されるには骨密度が少なくとも20~30%減少している必要があるからである。標準的診断手法は単一光子吸収法による超遠位および骨幹部のトウ骨と二重エネルギーX線吸収法(DEXA)による股関節と腰椎での骨密度測定である。骨粗鬆症による骨折の予測において、定量的超音波は近年DEXAによる骨密度測定に匹敵するとFDAにより立証されている。骨粗鬆症の治療の最終目標は骨折の危険性のある患者で骨折を予防することである。カルシウム、ビタミンD、エストロゲン、ビスホスホネート、カルシトニン、ラロキシフェンなど薬剤の適切な投与時期と使用法、および運動の役割についてはたくさんの研究がなされているが、まだかなりの議論があるところで結論は出ていない。適当量のカルシウムとビタミンD摂取と持続的な適度の体重負荷運動はあらゆる年齢の人にとって基本的な骨折予防法である。閉経時および閉経後にエストロゲンを投与することは骨量減少を単に止めるのでなく、実際に骨量を増加させる。エストロゲンによるホルモン置換療法は今もって閉経後骨粗鬆症の予防と治療に最も効果的な方法である。骨喪失は恐らく生理が終わる前に始まるので、エストロゲンは閉経の早期徴候が現れればすぐに投与するのが最も効果的と信じられている。エストロゲン治療は適切な骨密度を維持するためににその後も長く続けなければならない。高齢女性でエストロゲン治療を開始することが骨粗鬆症を予防するかについては確たる証拠はない。
以上が辞典に載っていた骨粗鬆症についての情報であるが、今回の論文では骨粗鬆症を引き起こすメカニズムのうち一つを調べた。
3、 論文の概略
骨粗鬆症、塩基配列のキーワードより「An IL-7-dependent rebound in thymic T cell output contributes to the bone loss induced by estrogen deficiency(IL-7に依存した胸腺のT細胞産生の上昇は、エストロゲン欠乏によって誘導される骨の損失に関連している)」というタイトルの論文を読んだ。尚論文は別途提出した。その概略は以下のとおりである。
概要:IL-7、INFγ、TNF-αといったサイトカインが骨粗鬆症に関与していて、そのサイトカインはエストロゲンの欠乏によって引き起こされる。このことを調べるためメスのマウスを用いて実験を行った。
方法:マウスは生後12週で、卵巣切除を行った後4週間骨密度(BMD)を測定し、二週間胸腺の研究を行った。次にIL-7の遺伝子をmRNA RT-PCRを用いて調べた。このときforward primerは5´-TCTGCTGCCTGTCACATCATCで、reverse primerは5´-GGACATTGAATTCTTCACTGATATTCAであった。また抗IL-7抗体の中和によって起こりうる反応を調べ、細胞内のTNF-α、IFN-γを染色して調べた。次にT cell Receptor Excision Circle(TREC)Assay を行った。その後FITC を胸腺に注入し、CD4,CD8,CD44を染色した後にフローサイトメトリーで解析した。さらに胸腺を除去した後卵巣を除去したマウスの様子を観察した。尚、卵巣切除を行った後に抗IL-7抗体による中和を行った。
結果:卵巣切除はIL-7合成の増加を誘導し、T cellはTNF-αを産生した。また卵巣切除によって未分化Tcell,Bcellが増加し、抗IL-7抗体による中和によってこの増加が抑えられることが分かった。この抗IL-7抗体は卵巣切除によって誘導される胸腺の出力やTcellの分化、増殖を抑制していることが判った。TRECAssayの結果胸腺のTREC DNAの減少を示した。これは、卵巣切除によって胸腺でTcellの産生が増加した、つまり胸腺からナイーブTcellの排出が増加したためであると考えられる。次にFITCを注入すると、卵巣切除後のマウスの脾臓においてFITC+CD4+CD44−RTEsが三倍増加していた。そして胸腺を除去したマウスはTNF-αを産生するTcellと同様に活性化したTcellが増加していることが分かった。
議論:まず卵巣切除によってIL-7のレベルが増加する。次に胸腺と抹消でT cellが増加することがわかった。重要な発見は、卵巣切除の反応としてIL−7依存にTcell の前駆体が増加することである。また年齢が関係したTcellの出力の低下は性ステロイドホルモンを無くす効果を和らげ、閉経後の女性における骨損失は年齢の進行と共に減少することを説明している。卵巣切除はINF-γ産生を増加させ、マクロファージによる抗原提示を刺激する。また、骨髄におけるTGF-βのレベルを低下させている。
卵巣切除はエストロゲンが欠損することであるので、エストロゲンはTGF-βの遺伝子発現を増加させ、IL-7を抑制していることが分かる。
4、 ビデオと論文の内容からの考察(将来医師になる目で捉えた)
今回オーダーメイド医療のビデオより、遺伝子で患者さんをみることは非常に有意義であると考えられる。というのも遺伝子が分かればその人にあった最も効果的な薬を処方し、副作用も少なくすみ、また診察もよりスムーズに行えるからである。さらに事前に疾患の予測も可能であるため予防の意味でも非常に有意義である。ただ情報である以上きちんとした管理体制を作り、その情報に対する法律が制定される必要はあるし、遺伝情報は分かっても患者さんときちんと向き合うことを忘れてはいけないと思う。
次に水俣病のビデオより、水俣病の拡大が防げなかったのは、原因の究明が当時は遅れていたと考えられる。こうした疾患や感染症を最小限に食い止めるためには、いち早い原因の究明、発生源の特定と、他の病院との連携が重要であると思う。
次に論文より、骨粗鬆症は閉経後の女性に多いので、そうした患者さんに注意を促していき予防をする必要があると思う。またエストロゲンは骨の損失を防ぐだけでなく、長管骨の発育や成熟を促進するので、骨粗鬆症による骨折だけでなく、通常の骨折の治療にも効果があるかもしれないと考えられる。またIL-7の遺伝子が分かっているので、エストロゲン補充療法ではなく、遺伝子そのものの抑制を行えば患者さんの負担も少なくなるのではと考えられる。
5、 まとめ
今回の論文は分からない単語や文章があったため、充分内容を理解できていなかったが、骨粗鬆症の大まかなメカニズムやエストロゲンの働きを知ることができた。またビデオや論文をみて分かったことは、疾病に対するメカニズムを知れば、それに対する治療だけでなく、予防を行うことができると思った。また今後遺伝子によるオーダーメイド治療が具体的に行われる日は近いと考えられるので、それに対する知識を学習していきたい。