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レポート
1. はじめに
3年生から「予防と健康管理ブロック」という授業が始まったが、この授業は医者になる為に身につけなければならない知識もある。しかし、それ以前に社会人として知っておかなくてはいけない知識を身につける為の授業のような気がする。「予防と健康管理ブロック」の授業中にビデオでみた「水俣病」についてはおそらく誰もが知っているだろうし、社会人になる私達に与えられた義務は二度とこのような悲劇が繰り返されない社会を築いていくことである。今回、大槻先生の授業でみた2個のビデオについて、論文を選んで読み、その論文及びビデオについての考察を書く。
2. 選んだキーワード
遺伝子多型 骨粗鬆症
3. 選んだ論文の内容と概略
「骨粗鬆症における遺伝子解析の現状と展望」 細井 孝之
「低密度リポ蛋白受容体関連蛋白5(LRP5)遺伝子変異と骨粗鬆症」 細井 孝之
4. 選んだ論文の内容の概略
骨粗鬆症の発症には、複数の生活習慣が関係したり遺伝子素因がかかわっていたりと多因子遺伝病の一つと考えられている。骨粗鬆症の基本的な予防は、生活習慣を改善することだが、それだけでは予防できない場合もある。骨粗鬆症の病態の根本は骨量の病的な減少であり、最近の骨量の遺伝性の研究では、前腕骨骨量の遺伝性は72%、大腕骨頚部骨量については67%と推定されている。また、骨粗鬆症の合併症である骨折は骨量と別の遺伝子要素が関連している事が示唆されている。骨粗鬆症をはじめとする多因子遺伝病における遺伝子素因の同定には、骨代謝に関連することが知られているサイトカイン、ホルモンやそれらの受容体、細胞内情報伝達物質などをコードする遺伝子をとりあげ、それらの遺伝子内部または近傍にある遺伝子多型性と骨量や骨折発症との関連を非血縁集団についで統計的に解析する連関解析が行われてきた。しかし、この方法では生物的意義が不明である多型性がほとんどであったり、生活習慣因子などの交絡が無視できなかったりなどの理由であまりよく解析されていない。最近では、ゲノム全体について充実してきた多型性情報(特にSNPs:DNA配列が一つだけ異なること)の情報をもとに骨量と相関する遺伝子をスクリーニングする方法が試されている。また、骨粗鬆症の遺伝子素因解明のヒントは単一遺伝子病である骨系統疾患の原因遺伝子からも得られる。その原因遺伝子として同定されたLRP5遺伝子における別の変異が骨粗鬆症とは逆の病態である高骨密度を引き起こすことが明らかにされ、注目されている。LRP5が属するリポプロテイン受容体関連タンパク質は細胞表面の移動などさまざまな生物学的プロセスに関わっている。このLRP5の変異が骨芽細胞の機能低下にむすびつき、病的骨量減少を含む骨粗鬆症がもたらされると考えられている。また高骨量をきたすLPR5遺伝子の持つ人すべてが「口腔外骨症」を有していたことから、LRP5遺伝子の多形成性と骨量との間に遺伝的原因があると証明されている。また最近では、骨量の多様性と関連するSNPで生物学的意義をもつTNSALP遺伝子が注目されている。TNSALP遺伝子は骨代謝関連遺伝子の中の遺伝子であり、骨芽細胞の表面に存在し、石灰化部位へのリン酸供給において主要な役割を果たすことが知られている。高齢女性集団(平均年齢74歳)においての実験では、平均年齢である74歳を境に遺伝型間で有意な骨量の差が見出された。これらのことから、この遺伝子多型性は後期高齢女性において影響を及ぼす遺伝的素因を反映していることが示唆された。今回の結果は高齢女性の骨代謝におけるリン酸代謝の重要性を示唆するものでもあり、骨粗鬆症の予防と治療を考える上で一つのヒントになるかもしれない。また、この遺伝子多型性の影響は後期高齢者において有意になるものであり、遺伝子的素因の発現に対する加齢の影響を検討するためにも有用な例となるであろう。
5. 選んだ論文の内容とビデオの内容からの考察 将来医者になる目で捉えた考察
選んだ論文の骨粗鬆症のように遺伝子的素因が関係する病気は多い。さまざまな病気を引き起こす「肥満」にも遺伝子的素因が関係している。遺伝子がほんの少し違うだけで、太りやすい人と太りにくい人との差は200キロカロリーも違うようだ。たかだか200キロカロリーと思う人もいるかも知れないが、運動で200キロカロリーを消費しようとするとジョギングだと30分、ウォーキングだとほぼ2時間の運動量にあたる。それに一日でみればたったの200キロカロリーであるが、一年間、いやもっと長期間で見るととても大きな差になるはずである。ビデオの中の太りやすい女性は「普通の人より太りやすい」という報告を医師から聞き、それを素直に受け止めて厳しい食事制限に運動まで追加し普通の人以上に努力をした。その結果、別人かと思われるくらいの減量に成功した。自分がどのような体質であるかを知っておくことはとても大事である。もしこの女性が「太りやすい」ことを医師から知らされなければ、ダイエットをしてもなかなか痩せない現実に失望して途中でダイエットを投げ出していたかもしれない。骨粗鬆症でも同じことが言えるのだが、もし自分が骨粗鬆症にかかりやすいと知っていれば、除去できない加齢や人種などは避けられないとしても、除去できる危険因子である、カルシウム不足や食塩の過剰摂取、喫煙などを控えるだろう。医学がだんだんと進歩する中、医療もともなって変わってきている。これからの医師は病気を治すだけではなく、「その人がどのような病気にかかりやすいか教える」という義務も課せられているかもしれない。このようにゲノム解析によってヒトの病気の原因となる遺伝子の解明が急速に進み、それにともない個人のDNA配列の違いが疾患とどのように関係しているのかが明らかになった。オーダーメイド医療はこのようなDNA配列の違いをもとにその患者にあった治療方法を選択する医療である。この方法により今まではガン細胞とひとまとめにされていたものを、遺伝子レベルでさらに細かく調べて分類することで、患者一人一人のガン細胞の特徴に応じた最適な医療を行うことができるようになり、従来の抗ガン剤や放射線治療による副作用も大きく減るだろうと予測されている。また薬が体の中で働くことにも遺伝子多型が密接に関わっているようだ。薬を飲むときに、普通に薬を代謝してから体の外に出す人と、その能力を持たない人がいる。この場合、同じ薬を同じ量と間隔で使用すると薬の代謝する能力の低い人では副作用が起こる可能性が高くなる。ここで薬に働く代謝酵素の遺伝子の多型を調べることで薬の効きやすさや副作用のでやすさを事前に把握でき、個人に適した薬の量や使用間隔などを導くことができる。薬は薬であるが毒にもなりうる。であるから、このように遺伝子を解析して行うオーダーメイド医療は多くのメリットがある。しかし、決して良いことばかりではないのが現状である。例えば、その人がガンになりやすいことがわかってしまうとガン保険に入れなかったりする場合もある。米国では1991年に保険会社が遺伝子検査の結果によって、加入を拒否するというケースがあった。米国ではこのような事態を受けて、約20州で保険加入などにおける遺伝子差別の禁止法が設定されており、現在法案審議中の州もあります。また、1996年には団体加入保険については、遺伝情報の要求を禁止する法律が成立している。しかし、現在の日本ではこのような問題は解決していないので、今後きちんと議論する必要がある。また別の問題もあり、将来ガンになってしまうという不安からまだ発病もしていないのに自殺するほどまでに絶望感をいだいてしまう人もいるだろう。今後、この課題を解決しなければ個人のゲノム情報を扱うオーダーメード医療は危険である。それに、遺伝子がすべて解読されても、生物には先天的に遺伝子で決まる部分と後天的に環境の影響を受けて決まる部分とがあり、この二つを分けて考える必要がある。ではここでもう一つのビデオで見た「水俣病」の話に移りたいと思う。水俣病は1953年から1958年に熊本県の南端である水俣市で工業廃液により八代海の魚介類が有機水銀に汚染され、それを食べた住民による集団発生した病気である。症状は神経障害による四肢の感覚障害や機能障害、運動障害、言語障害などであり、認定患者だけでも2000人を超える日本最大の公害病である。水俣病が発症して間もない頃は、原因不明の奇病といわれ、伝染病や精神病だという嘘の噂が回り差別を受ける患者さんもいたようだ。しかし、国は多くの人々が水俣病によって苦しんでいるというというのに、判断基準を設けてそのうちの2項目に当てはまるだけの人しか「水俣病」と認めず補償をしなかった。そのため、症状が軽くはっきりと当てはまらない患者は「水俣病」と認めてもらえなかった。それに、水俣病が発病し始めたころに国が「食品衛生法」を適用させれば水俣病の拡大を防げたのに、「明らかな証拠がない」という理由から適用しなかった。被害をここまで拡大させてしまったのは工場だけの責任ではなく、国の責任でもあるのだ。国は被害者全員を「水俣病」と認め、補償をするべきだと思う。なぜなら、症状がたとえ軽度であったとしても今までどおりの生活が送れなくなるということは、とても重大な問題である。それに、被害者はただお金が欲しいために認めてもらいたいのではなく、国が今までの過ちを認め誠意ある行動をとってくれることを望んでいるのだと思う。最近になり国はやっと必要な認定基準の見直しをはじめた。新対策は、関西訴訟など勝訴が確定した原告に医療費を全額支給するほか、感覚障害のある被害者対象の医療手帳と、軽度症状者向けの保険手帳の運用改善などである。しかし、この新対策にも「認定基準が狭い」など被害者から不満の声が上がっているようで、被害者が納得できるような補償制度ができるにはまだまだ時間がかかりそうである。
5.まとめ
今回のこのレポートを作成するにあたって私は多くの事を学びました。オーダーメイド医療については、言葉は知っていても具体的にはよく分かっていなかった。そこでインターネットで調べる事で多くの知識を身につけた。オーダーメイド医療については、将来医者になるのなら知っておかなければいけない事である。これからもっと変わっていくであろう医療について、今後新聞やニュースをもっと見ようと思った。そして、「水俣病」についてはこのような最悪の事態が二度と繰り返されないような社会をつくらなければいけない。