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予防と健康レポート
1. 初めに、水俣病は何所で発生したのか、原因物質は何か、また水俣病によって神経症状が出るということぐらいしか知識としてなかった。しかし、今回ビデオを見ることで、水俣病が起こった背景や、認定問題など様々なキーワードが出てきたので、水俣病について調べることにした。
選んだキーワード:公害と平行機能
2. 選んだ論文の内容の概略
メチル水銀中毒症の臨床像はHunter-Russell症候群を呈し、脳幹障害も推定されている。また、神経耳科学的に調査を行いメチル水銀の人への影響を調べている。
〔水俣病とは〕
水俣病は、化学工場から海や川に排出されたメチル水銀化合物を、魚、海老、カニ、貝などの魚介類が直接えらや消化管から吸収して、食物連鎖を経て生物濃縮したものをわれわれ人々が食べることによって発生した中毒性の神経疾患である。発生地域としては熊本県水俣湾周辺の八代海沿岸と阿賀野川流域である。水俣病は、豊かな暮らしをもたらすはずの産業の活動から副次的に作られた汚染物質が、環境を経由して私たちの身体を蝕むという、「公害」の典型的な例である。
まず、昭和26年(1951)に初めて水俣湾で魚介類の死亡・変形が目立つようになった。それから5年後の昭和31年(1956)5月に初めて患者の発生が報告されている。ビデオの中で熊本県では昭和32年(1957)に県の衛生部が厚生省に食品衛生法適用による水俣湾産魚介類販売禁止を求めていたが、厚生省はあっさり食品衛生法適用はできないと回答してきており(すなわち、漁獲禁止をしないことを意味する)、この時食品衛生法を適用していたら被害は食い止めることができたのではないのかと思った。昭和26年から16年後の昭和42(1967)にやっとアセトアルデヒド製造過程で副生されるメチル水銀化合物の食物連鎖による汚染が原因であると発表されている。原因解明までにそうとうの年月がかかった理由としてはビデオで説明していた社会的背景からわかる。
〔社会的背景〕
水俣病の原因企業は、チッソ(株)水俣工場と昭和電工(株)鹿瀬工場である。両者は、第2次世界大戦後の復興に続いて高度経済成長のさなかにあった日本を支え、発展させる原動力を担っていた化学工業分野の企業であり、中でもチッソは高い開発力を持ち、次々と生産設備を更新して製品の増産に勤めていた。チッソの成長とともに水俣の町も急速に発展を遂げ、工場と従業員の納める税額が水俣市の税収の50%を超えるようになり地域の経済や行政に対して大きな力を持つようになったらしくこのことから、熊本市民が工場に工業生産の停止を求めたり、原因物質の解明をお願いしたりしてもても工場側は自分にとって不利益になるのでこの大きな力でそれを回避してきたのであろうと考えられる。
〔メチル水銀中毒による症状〕
メチル水銀は神経系の特定部位に強い傷害をおこす。(私は一般的に小脳萎縮による運動障害しかしらなかったがこのように沢山の症状があるとは知りもしなかった。)その結果としてそれぞれの部位が持つ役割に応じた障害が起こる。以下に6つのメチル水銀中毒症による臨床症状を記す。
@ わけもなくころぶ。ビデオの中でまっすぐ歩けなかったりボタンをうまくかけることが出来なかったりなど日常の動作が思うように出来ないといった<運動失調>
A言葉がうまく喋れないといった<言語障害>
Bまっすぐ見たときに周辺が見えにくいといった<視野狭窄>
C触れているはわかるが手のひらに書かれた数字がわからない。触った物の大きさや形がわからない。熱いものや冷たいものに触っても感じにくい。そして、ざらざらとすべすべの区別がわからないなどといった<感覚障害>
D力が入らなかったり、筋肉が痙攣を起こしたりといった<運動障害>
E音の識別が出来なかったり、相手の言うことが聞き取れなかったりといった<聴力障害>
このように水俣病は複数の症状が組み合わさった症状、すなわちHunter-Russell症候群を呈するらしい。ここで、水俣病認定患者の中で神経耳科学的な調査を行っている論文を紹介しようと思う。神経耳科学的検査項目と方法は、純音聴力検査、自発眼振(注視眼振)、頭位眼振、前庭反応、視運動性眼振検査(OHK)、視標追跡調査、体平衡機能検査(Mann検査、足踏み検査)の7項目についてである。聴覚検査については純音聴力検査を中心に評価し申請時の平均聴力損失の基準にしたがって、新規格の聴力レベルに旧規格を換算して判定し、高齢者の影響も考慮して判定している。平衡機能検査の自発眼振、頭位眼振はFrenzel眼鏡装着時及び閉眼、開眼時のENG記録より分析している。前庭反応は24℃、50℃の冷温のAir caloric test、
聴覚障害の推移(計72耳例)では、純音聴力の平均聴力レベルは水俣病の申請報告時の聴力レベルと比べて10~20dB悪化した耳は申請時0~20dBで16耳、21~40dBで3耳、41~60dBで2耳と計21耳(29%)を示しており、平均で21~40dB悪化した耳は0~20dBで3耳のみであり、20年後の高齢化を考慮すると比較的軽度であると推定されている。一部に改善耳(10~20dB)が3耳(4.2%)認められ、中毒症候の回復例も全く否定できない状況である。また、不変例45耳(63%)がもっとも多く、一部の高齢者に語音聴力の低下が見られている。
自発眼振(計36例)の推移では申請時に見られた自発眼振(18例、50%)に一部消失例(5例、13.9%)がみられていた。また、増悪出現した例は(13例、36.1%)であり最終的には26例(72.2%)に自発眼振が摘発されていた。
頭位眼振の推移では頭位眼振の発生率は申請時より比較的高く(58%)、その後の2回の追跡調査の結果、(94%)とほぼ申請患者全員に見受けられた。
前庭反応の推移では、前庭反応の障害は長期にわたり悪化し、その摘発率は申請時42%であったのに対して、その後の2回の追加調査の結果72%と増悪していた。
視運動性眼振の推移では、視運動性眼振の障害は垂直性に著しい傾向が特徴的であった。水平性眼振 では申請時50%であったのに対してその後2回の追加調査では89%と増悪していた。
視標追跡検査の推移を見てみると滑動性眼球運動を検討する調査では、水平軸、垂直軸についてそれぞれ2回調べた結果、水平軸では障害例6例(17%)から8例(22.2%)に増悪しており、垂直軸では16例(44%)から21例(58%)にやや増悪していた。
体平衡機能調査の推移を見てみると、一般に水俣病は高齢者に多く、Mann検査、足踏み検査の障害例が多く、水俣病計36例のうち申請時24例(67%)に見られた異常は25例(69%)、26例(72%)と増悪している。また一部若年者(5例、14%)に改善例が見られていた。
まとめると、神経耳科学的に、聴力の悪化は高齢化の影響も見られるが、比較的軽度であった。平衡機能障害では自発眼振(注視眼振)、温度眼振反応、視運動性眼振増悪が著明であった。また、体平障害の増悪は比較的軽度だった。
〔水俣病における治療法〕
初期治療としてはまず進入経路を発見してその経路を経つことが先決らしい。また、体内に進入した水銀をキレート剤(水銀と結合して尿中に排泄)、sh製剤(メチル水銀はsh基と親和性が高いことを利用して、sh基を持つチオール樹脂の経口投与で腸管からの再吸収を予防する)、血液透析、交換輸血、抗酸化剤の投与(メチル水銀は細胞内で活性酸素を増加させ、細胞障害を引き起こすことから、これを予防するために投与する)で排泄促進させる。最後に痙攣などの激しい症状を鎮めるために対対症療法がとられているそうだ。
慢性期の治療としては、機能回復及び機能の維持を目的とした理学療法、作業療法による治療を目的としたリハビリテーション、有通性筋強直性痙攣や不随運動、筋緊張異常などの症状を軽減させる薬物療法が治療として現在行われている。
〔水俣病の認定問題〕
私はビデオをみて水俣病で一番重要なのが認定問題であると感じた。水俣病患者の認定は、公害健康被害の補償等に関する法律に基づき関係各県の知事及び国によって行われているらしく、医者の診断による水俣病はだだの参考程度にしかならないというのが現状で、それには驚かされた。しかも、国や知事から水俣病であると認定されなければ保証金をもらえず、また保険がきかず、治療費を全額負担しなければいけない状況にあるらしい。私は医師を目指している自分にとって患者さんの診断結果が認められないならば医師をしていても何の意味もない気が私はします。認定問題は裁判沙汰になっており、告訴側が医師の診断によって認定された水俣病患者全員を国にも認めて欲しいと求めているのに対して、国は保証金の件があるからかもしれないが、国の指定した水俣病認定基準に基づいて判断しますと、絶対変更していなかった。水俣病の拡大を早期阻止しなかった国がとる言葉なのかと思った。