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はじめに
 ☆水俣病について、ビデオもふまえて☆
 水俣病は水俣市周辺(八代海沿岸)、新潟県阿賀野川流域などで起こりました。、魚介類に蓄積された水俣工場から流れ出た有機水銀を長期にわたって大量に摂取する事によって生じる中枢神経疾患で、おもな症状としては、四肢末端の感覚障害や運動失調、平衡機能障害や歩行障害などがあり、魚介類を直接食べて生じるだけでなく、胎児期に母親が汚染された魚介類を摂取する事によっても生じます。
 水俣病の患者数は正確な数は不明ですが、推測で二万人ともいわれています。ここまで増加したのは初めて水俣病が報告されてからの国の動きが明らかに遅かったためです。その理由が『一部の魚は有害だが水俣の全ての魚が有害である』とは認められないので国の対策も取れないというものでした。
 水俣病の認定問題では、複数の症状の組み合わせを求める国の判断条件(1977年)と、感覚障害だけで認定するべきだとする被害者側の間で長年、争いが続いてきました。2004年10月の水俣病関西訴訟最高裁判決は、一定の条件があれば感覚障害だけでもメチル水銀中毒と認め、司法判断は確定しましたが、行政基準は見直されていません。というのも『責任は認めるが、判断条件の変更は認められない』と国が言っているためです。国は判断条件を下げると保証金欲しさのニセ患者がでてくるのを恐れているのです。しかしそのために国が認めた水俣病患者以外は保険がきかなく全額患者負担となっています。また国が認めた水俣病患者と言いましたが『水俣病である』と診断の決定を下すのは本来ならば医師のハズなのに、最終的に決めるのは知事であって、1人の町医者の診断は参考程度にしかなりません。

キーワード
environmental pollution ataxia
環境汚染、運動性失調


風土病、運動失調性多発性神経障害と
ナイジェリア社会のシアン化物への暴露の関係
☆序論☆
 運動失調性多発性神経障害は特発的に世界中の様々な地域で発生します。そして特にこの病気は南西ナイジェリア地域で主に報告されています。。
 その原因はキャッサバを使った食べ物を摂取することでシアン化物に暴露するためであるとされてきました。しかしながらキャッサバを使った食べ物を摂取することでシアン化物に暴露している熱帯の地域でも運動失調性多発性神経障害の罹患があまり見られないことがあります。

※ キャッサバ;塊根を食用,飼料用(チップ等),でん粉原料用に使用する.塊根に青酸を含む品種もあり、その場合は水洗いにより無毒化する.またでん粉はタピオカと称し,東南アジアよりヨ−ロッパ等に多量に輸出されている.
ブラジル,タイ,インドネシア,ザイ−ル,ナイジェリア等が主産地である.


※多発性神経障害;広範な末梢神経障害により、ほぼ左右対称性で主に四肢末端部付近に運動、感覚または両者の混在した障害を認めるものです。表在性の感覚障害が主体のものでは、手袋靴下型の分布をとることが有名です。一般に筋力低下・筋萎縮などの運動障害は四肢の末端部より始まり、進行すると範囲が拡がり、体幹へ及ぶことがあります。
 
この実験のねらいはナイジェリア地域での運動失調性多発性神経障害の発生率の決定とキャッサバを使った食べ物の摂取とシアン化物への暴露と血漿のチオール濃縮の比較です。またこの実験はナイジェリアのオソサという場所で行いました。運動失調性多発性神経障害の罹患率は1996年1998年までの2年間で決定しました。

 運動失調性多発性神経障害の発生率を決定するためにキャッサバを使った食べ物の摂取、シアン化物への暴露、血漿のチオール濃縮をケースとコントロールで比較しました。

☆結果☆
 3176人の被験者(男性;1469人、女性;1698人)がいました。このうち54人がこの地域を出て行き、57人が死にました。最後まで追えたのは3056人でした。また52人にスクリーニングを行ったときに役立つ結果が得られませんでした。3004人は無事に行えました。追いかけたのは二年で延べ6246人でした。運動失調性多発性神経障害の発生率は年に10歳以上では10000人あたり64人(男性;10000人あたり31人;女性;10000人あたり93人)でした。年齢における特別な発生率を示したのは70歳から79歳であり、この年代でもっとも高い数値を男女共に記録しました。
 多変数の比は最も一般的なキャッサバを使った食べ物の摂取で0.78で血漿でのチオシアン酸塩の濃縮では1.64でした。チオールの濃縮では2つのコントロールでは参照限界を下回り、ケースではありませんでした。P100の潜伏は14のコントロールに比べて20のケースで伸びました。
☆結論☆
 ナイジェリアのオソサで運動失調性多発性神経障害の発生率は高いですが、キャッサバを使った食べ物、シアン化物への暴露、血漿のチオール濃縮は発生には関係ありませんでした。この発見は運動失調性多発性神経障害の原因はシアン化物ではないということを示唆していました。
☆議論☆
○この病気の男性と女性の比は1対3でした。これは一般的に女性特有の病気ということです。女性に患者が多い理由はわかってはいません。しかしながらキャッサバを使った食べ物の摂取によるシアン化物の暴露がこの男女の差に反映しているというのは見込めそうにありません。というのはシアン化物の暴露にもキャッサバを使った食べ物の摂取にも差が見当たらないからです。
○運動失調性多発性神経障害は初老の人々に多いことは言いました。これは神経組織変性症であるというのを意味しています。しかし今回の実験は毒物の暴露による運動失調性多発性神経障害であるのであまり意味はありません。
○またこの実験はいくつかの制約を受けています。たとえば1つ目はキャッサバを使った食べ物の摂取の頻度からシアン化物への暴露を見積もるのが料理によってシアン化物がどれだけ含まれているかが異なるため難しいのである。2つ目はこの地域の子供たちは早い時期からシアン化物に暴露しているため正確な暴露している期間がよくわからないのです。

考察
  ここ、ナイジェリアにおいても日本の水俣病と同様に含まれる物質と含む生物の差はあるにしろ物質が体の中に溜まり神経障害を起こすという点、含む生物が人と密接にかかわっているという点で大変似ていました。他にも似ている点は数十年前に定義された病気の診断基準が間違っていたという点です。水俣病は専門家が集まって神経性の症状が複数出ていないと水俣病とは認めてもらえませんでした。現在は一定条件ではありますが感覚障害だけで認められます。運動失調性多発性神経障害は1:知覚的多発性神経障害、2:感覚性運動障害、3;視力の減衰、4;神経性聴覚障害の内2つ当てはまれば運動失調性多発性神経障害と認められていましたが、現在は1と2が少なくとも当てはまなければならないとなっています。これはおそらくこのような類の病気は物質が体のどこに溜まるか、どれだけ溜まるか、などで人それぞれ症状が違い、ここからが病気という線引きが大変難しいからだと思われます。違った点は日本の場合は工場から排泄される有機水銀が原因でしたがナイジェリアの場合はシアン化物だと思われていましたが、この論文により違うことが判明し、未だに不明である点です。
  他には日本の政府の対応が遅いのが水俣病患者数の拡大の原因であると書きましたが、ナイジェイアにおいてキャッサバをもしいち早く販売禁止にしていればキャッサバ農家は大損害を被り、国民は不安になり、病気は流行し続けるという最悪の状態になっていたでしょう。結局健康をとるか経済をとるか(ナイジェリアにとってはキャッサバ産業は相当重要)、その辺りの線引きが微妙なのだと思いました。 


まとめ
 今回予防と健康の講義中に見た2回のビデオと自分自身で選んできた論文を読んで知ったことはまず公害は日本だけではなくこのナイジェリア然り、世界中で起きているということです。それによって引き起こされる病気の患者さんの数は数十人単位ではなく、数万人単位であるということ、その数の多さからなかなか国から謝罪と保証金がもらえないということ、そしてこれら毒物が体に蓄積するタイプの病気の特徴なのかわからないですがここからが病気、ここからが病気ではないという線引きが非常に難しいこと、また例えその病気と同じ症状がでてもその公害のために罹患したのかが判断するのが難しいことです。
 水俣病では明らかな失敗の国の対応、そして専門家たちの診断基準。これらはひどい出来事ですが、もうすでに現実として起きてしまったことです。私たちにできることはこのことから1つでも多くのことを学ぶしかないと思います。そしてある地域で異常がおこればその地域の医師が自分の目で判断し水俣病のことを思い出しながら対応していくことだと思いました。おそらく日本や日本の周りで公害問題、環境問題というのは中国経済が伸びるにしたがって湧いて出てくると思います。その時にこの水俣病やナイジェリアの論文から得た経験を生かしていけたらと思いました。
 また水俣病などはすでに歴史の教科書に掲載されている程の出来事です。そのこと自体は水俣病の事件を忘れないために大変良いことです。しかし歴史の教科書に掲載されているからこそ過去の出来事、解決された出来事として私たちは考えそうになります。しかし現実には病気で苦しんでいる人々、認定すらされていない人々がいて、そしてその人たちはまだ必死に病気や国と闘っています。私たちは医療従事者として彼らを出来うる限りバックアップしていきたいと思いました。