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「予防と健康」レポート
私は、四月 日授業で見た水俣病のビデオを見ました。はじめに、水俣病についてまとめようと思う。
水俣病とは、昭和28年から熊本、鹿児島県の水俣湾沿岸で発生し、チッソ水俣工場の工場排水のメチル水銀による慢性中毒である。発生機序は、この微量のメチル水銀の工業排水により生物濃縮され長期大量に経口摂取する事によって起こったという。水俣病で見られる患者の症状は、みな同様で、四肢の感覚障害、小脳運動失調、求心性視野狭窄、平衡機能障害、聴力障害というHunter−Russell症候群が見られた。認定患者は、平成17年3月末の調査の結果、熊本1,755人、鹿児島490人とされている。しかし、この他にも認定されていない中毒患者もいる。実際3万4千人もの人が認められていない。彼らは自分達を水俣病患者と国が認めてくれないという問題を抱えている。彼らを水俣病患者と診断するのは医師達である。医師達にとって彼らは明らかに水俣病の症状が見られるが、それが重度か軽度かこの間で一線を引かなければならず、現在、このような医師達にとって苦しい状況にある。水俣病が証明されたのは、猫の実験からであった。昭和32年4月,猫に汚染されたと見られる魚を食べさせたところ、一週間で発症した。これに対し、県は対策として漁獲禁止などという食品衛生法を提示したが、全ての魚が汚染されているとは限らないなどという理由でこの法は適用されなかった。このため水俣の漁船では引き続いて行われた。また、裁判所ではチッソ水俣工場の完備を指導し、サイクレーターを取り入れ排水を浄化し安全の証明もされた。これで水俣病は終わったとされ、9年間この騒動はおさまった。しかし、今でも水俣病に苦しんでいる人は多く、患者として認められるよう活動を続けている。水俣病に関して、私は名前や原因、発生地程度しか知識がなく、医師や行政と患者との問題まで認識していなかったので、この現状を知って驚いた。わたしは、このビデオを見て特に興味を持ったのがメチル水銀による運動機能障害についてであったので、今回のレポート課題のキーワードに「metylmercuryとataxia」を選び,これに関する論文を読んだので、後述し、考察しようと思う。
私が読んだ論文は、ActaNeuropathol(1995)の90巻のP.251−256の記載されている著者JytteOvergaardLarsen,HansBarndgaardのStructural Preservation of Cerebellar granule cells following neurointoxication with methyl mercury:a stereological study of the rat cerebellum(メチル水銀を用いた神経中毒による小脳顆粒細胞の構造維持;ラットの小脳の立体解析学的研究)というもので、まず、この内容について述べようと思う。
有機水銀化合物は人間や実験動物にとっては神経毒である。協調のない運動つまり運動失調は有機水銀中毒の人において重要な症状である。ラットでは末梢神経障害を引き起こすことがわかっていて、1回の服用におけるメチル水銀の投与が原因かどうかにより、ラットの小脳での神経障害は未だに討論で話題となっている。現在の研究の目的は、軽い運動失調をもつラットでのプルキンエ細胞と顆粒細胞の総数と異なった小脳の層の量を見積もることである。そして、臨床症状では潜伏期の後現れると知られているので、ラットは暴露後2.5−4.5週間で研究された。
まずラットにメチル水銀を投与して1週間、中毒ラットが正常ラットより無関心になった。後に、この中毒ラットの何匹かは、かすかに毛を逆立てて後ろ足が強調しなくなり,檻を上ることが不器用になった。4週間後には2匹が下肢の運動失調になった。また、全ての中毒ラットは体重が減少した。以上のことは症状であり,実際細胞レベルでは以下の事が見られた。末梢神経系では、著明な軸索の退化が起きたが、小脳の細胞数や大きさには変化が見られなかった。また小脳の重さが2.5週間で減少し、4.5週間で上昇した。また、顆粒細胞層の量にも変化が見られなかった。しかし、Moller−Madsen and Danscherによると、水銀の被覆物を含むものが着色する染色法を用いると、プルキンエ細胞とゴルジ細胞とゴルジ上皮細胞は陽性であったが,顆粒細胞は陰性であったという報告がある。プルキンエ細胞層にも変化は見られず、総数や神経細胞層の量も変化のないままであった。この貴重な研究ではプルキンエ細胞にはメチル水銀に対して抵抗があるという報告された。末梢神経の軸索の退化と小脳の組織学的量的変化は、有機水銀の中毒ラットにおける末梢神経系の変化が主な構造的な小脳の変化より先行することに、影響することがわかった。
以上より、私の考察を述べる。
小脳での顆粒細胞は脊髄や脳幹などからの情報を興奮性に伝え、プルキンエ細胞やゴルジ細胞はその情報を抑制敵に調節し、運動のバランスがとれている。ラットに下肢の運動失調が見られたのは末梢神経が傷害されたためだと思われる。小脳が減少して、増加が見られるのは細胞消失が起きた所にニューロンの数の変化はないが,アストロサイトやグリア繊維などの増加が起こるので、これにより重くなったと考えられる。また感覚神経のことも少し述べられていたが、論文を読み取る事が出来なかったので考えると、メチル水銀の患者には四肢の感覚障害や聴力障害があるので、求心性の末梢神経も傷害されると思われる。このようなHunter−Russell症候群が見られるという事がわかった。また、他に調べたところ、今、水俣病の認定基準は末梢神経の損傷となっているが、一昨日11月から昨年の4月にかけて手の末梢神経に微弱な電気を流して神経損傷の有無を調べる検査を実施した結果、電気が伝わる速度は正常者と大きな差はなく、その上で中枢障害を調べる複数の検査により大脳皮質損傷の可能性が高いことを確認し,末梢神経の損傷はないと結論づける医師もいるらしい。関西訴訟で大阪最高裁判所は末梢神経損傷説を否定し中枢損傷説を採用し、汚染魚を多食し感覚障害があれば「水俣病」を認定し、最高裁も追認しているという記事を読んだ。これにより、判断基準が広まったと思ったが、認定されない患者はゼロではないというのが現状である。医師の立場からすると、症状の重い人も軽い人も認定してあげたいというのが本心であるのに、一人の医師が国の決めた判断基準に従い一線を引くことで、何人の患者が苦しむことになるのか考えただけで胸が痛くなるようだ。このような立場の医師は医師として無力感を感じるのではないだろうかと思う。しかしビデオを見ていて、それでもあきらめずに、水俣病患者に向き合う医師達に感動した。国側も、もっと症状が軽い人も水俣病患者であるという理解をしてもらいたい。正直,私は,水俣病などの公害については小学校の頃から聞いているし,今までまだ問題が残っていて、ここまで深刻であることに驚いている。ビデオを見ていて訴えている人と同じように私も、会見で国側の意見を変えない様子に悲しい気持ちになった。
対策として設置されたサークレーターも結局無意味であったし、あの時漁業を完全に止めていれば、ここまで多くの人に被害を及ぼさなかったかもしれない。被害にあった人々は水俣病と認めてもらえたところで,病気が治るわけではないが、未だ訴え戦っているということは、自分たちの子孫のためにも今後同じようなことが起きないよう願っているのだと思う。だから国側にはきちんと責任をとってもらいたい。
まだ地球上には、環境問題はこれだけではとどまらないが、ひとつひとつ原因を突き止めて対策をし、世界的に変わっていくことが一番望ましいことである。