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水俣病のビデオを見て感想
水俣病という名前は聞いたことのないほど有名な病名である。しかし具体的にはどのような病気なのか、また何が原因なのかなど詳しいことまで知っている人は多くないと思います。僕も水俣病を詳しくない一人なのだとビデオを見て感じました。
水俣病は工場の排出物であるメチル水銀が海や川を汚染することが第一の原因である。メチル水銀は自然の海や川からの無機水銀からも作られます。事実、人の体にはごくごく微量なメチル水銀が含まれています。しかし自然に作られるメチル水銀は人体に悪影響を及ぼす濃度には達しません。メチル水銀は微量で強い神経毒性を示し、神経毒は脳などに傷害を与えます。メチル水銀は特に妊娠している子供、つまり胎児の脳に感受性が高いと言われています。
メチル水銀は一言で言うならば食物連鎖によって人体に侵入します。大きい意味では食中毒とも呼ばれます。海や川のメチル水銀をプランクトンが食べて、小さな魚がそのプランクトンを食べて、さらに大きな魚がその魚を食べてとだんだんとメチル水銀の濃度が凝縮されていきます。メチル水銀の濃度は1万〜10万倍になるといわれます。人間は食物連鎖の頂点に位置する動物であり、あらゆる魚を食べます。ここで人体に悪影響をもたらすほどのメチル水銀が体内に侵入します。今では妊婦は魚を食べないほうがいいと言われているのは、魚にはごく微量のメチル水銀が含まれていて、胎児の脳の感受性が高いという裏図けがあります。
メチル水銀によるメチル水銀中毒症の症状はとしては知覚障害、運動障害、視力障害、視野狭窄や言語障害があります。メチル水銀は神経毒で特に視覚を支配する後頭葉に障害をもたらします。これらの障害は当時、老人に多く、メチル水銀中毒症と老化の影響が似ているため医者もメチル水銀中毒症と老化を区別することに苦労をしたそうです。ビデオでは明らかな水俣病の症状をした患者さんが写されました。手が激しく痙攣し、僕にはとても辛そうに思えました。このような症状がある日突然自分や家族や知人に現れることを考えると、水俣病患者や患者の周りの方々の苦痛と苦悩を図り知ることはできません。
水俣病は1968年に猫にメチル水銀を含んだ魚を食べさせる実験をし、猫が狂ったような動きをすることから政府が公害病と認定しました。その後、賠償金を求めて水俣病患者団が国に対して訴訟を起こし、裁判所は賠償金を支払うように求めました。この結果は一見、水俣病患者の勝訴だと思えますが、実際は勝訴だと言うには抵抗があるのです。水俣病だと認定するための条件として認定判断条件がたてられ、この条件を満たさない患者さんは水俣病とは認定されません。老化とメチル水銀中毒症の症状が似ているために水俣病患者自身や周りの人が自分は水俣病である、あの人は水俣病であると申告しても、なかなか認めてもらえない場合が多いのです。例え医者が水俣病だと認定しても、政府は認定判断条件を満たしていない患者さんを水俣病だと認めません。とてもおかしな話だと思います。認定判断条件は政府が作成したもので、現場(熊本、新潟)の町医者が作成したものではありません。そもそも老化とメチル水銀中毒症の症状が似ていて判断が難しいのだから認定判断条件などをたてずに町医者の判断に任せれば良いと思います。一番患者さんを理解してくれるのは町医者だと思います。現実では、その町医者の意見はほんの参考程度にしかみられていなかったのです。テレビドラマでも名言となった「事件は会議室で起こっているんじゃない、現場でおこっているんだ!」というように、現場と別の場所ではしばしばすれ違いが見られます。このような問題を解決するためには認定判断条件を作成する人や政府の方々はもっと積極的に現場へ行く必要があると思いました。このことは将来医者を目標としている僕らにも当てはまることです。より理解を求めるためには、理解を求めていることに関係する現場に行く必要があると思います。
水俣病患者だと認定されなかった患者さんにとってはまだ水俣病問題は解決されていません。水俣病患者は賠償金が欲しくて訴訟を起こしたのではないのです。水俣病だと認めて欲しいから最後まで諦めずに国を相手取って訴訟を起こしました。一部の世間では水俣病患者は賠償金目的に訴訟を起こしたと差別されていました。その一部の世間には自分の家族や知人が水俣病問題に巻き込まれたことを考えて欲しいと思います。差別をされるのは訴訟を起こした水俣病患者ではなく、訴訟を起こしたことを差別する一部の世間だと思います。例え水俣病の明確な症状がなくとも、水俣病が起こった場所に住んでいる人には精神的な病を抱えている人も多くいると思います。国や世間はもっとそのことを考慮すべきだと思いました