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水俣病については、小学・中学で習ってきた。

異様な動きをする猫や、ガタガタと震え続ける人たちの白黒の映像がどんよりとしたBGMと共に流れていたのを覚えてる。

その時は公害はあってはいけない事だ、水俣病は怖い、というようなイメージしか持っていなかった。

そして今医学生となって改めて水俣病について学ぶ機会を得た。

その内容は驚くべきものだった。

現在は当時と比べて科学が進歩し、ちゃんとした規制が行き渡り、水質検査や土壌検査が行われてきたため、大きな公害病はほとんど姿を消した。

しかし、いまだ水俣病に苦しんでいる人たちがいるというのだ。

全くの被害者である彼らがなぜ苦しんでいるのか、それは彼らが水銀に汚染された魚を食べ、体内に水銀が蓄積されているにもかかわらず、水俣病ではないからだ。

国が水俣病と認定しないのだ。

この様な馬鹿げた話があるだろうか。

明らかに国と会社に非があるにもかかわらず、被害者が訴訟を起こさねばならないという事自体間違っている。

私達は医学生としてこの問題をどう捉えるべきであろうか。

公害問題は本当に無くなったのであろうか。

これからもこのような惨事が起こらないとは限らないのではなかろうか。

もしその様な事が起こった場合、当時の国の様に未知の症状を訴える患者を見逃してしまったり、無視したりするような事があっては決してならない。

その為にも社会に目を見張り、今何が起こっているのか、将来何が起こり得るのかを自分で考えなくてはならない。

人の体に何か異変が起きた時、それにまず最初に気付かねばならないのは国でもマスコミでもなく医者なのだ。