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予防と健康管理 課題レポート
そもそも私は水俣病についてどのくらい知っているのだろうか。
テレビで流れる被害者の人たちの“素直に認めろ!”という訴えはよく見たことがある。しかし、よくよく考えると、被害者の人達が何に対して何を認めろといっているのか、何でそんなにもめているのかほとんど分からなかった。
“水俣病が公害病の1つであり、メチル水銀化合物によって生じる”という事ぐらいなら中学校の時に習った事があるので知っていた。が、ビデオの中で頻繁に言われていたチッソだとか認定問題における様々な問題だとか、全く知らなかった。
そこで、水俣病について調べてみることにした。
そして水俣病について書かれている1冊の本を手に取り読んでみると、こう記されていた。
「水俣病とは、魚介類に蓄積された有機水銀を長期にわたって大量に摂取する事によって生じる中枢神経疾患で、おもな症状としては、四肢末端の感覚障害や運動失調、平衡機能障害や歩行障害などがあり、魚介類を直接食べて生じるだけでなく、胎児期に母親が汚染された魚介類を摂取する事によっても生じる。」
確かに、ビデオで見た患者の皆さんはボタンをつけるにしても煙草を吸うにしても、すごく手が振るえていた。水俣病にかかった猫においては歩行すらできていない様子だった。しかし、これらの症状は軽い人から重い人まで様々ではないかと思う。
水俣で医師をしている松本氏は、彼の父が水俣病であるという事を死の直前まで知らなかったというのだ。そして父の死後、松本氏自らでもって父の体を解剖して脳に水銀の影響があるかどうか調べたという。一方で、同じく水俣で漁師をしている両親を持つ男性は、彼の両親を彼ら自らが獲ってきた魚が汚染されているとは知らずに食べ続けた事によって、結局両親とも水俣病になって亡くしている。この男性はビデオの中で「自分の母親だけど、殺してやろうと思うぐらい見ているのが辛かった。」と言っていた。実の母親を殺してあげたいと思わせる症状とは一体どのくらい辛いものだったのだろうか。私には想像ができない。この様に、想像を絶するほど症状の重い人もいれば、松本氏の父のように潜在的水俣病の人もいるのだ。
今、問題となっているのはどの人を
“あなたは水俣病ですよ。” と認めるかだと思うけれど、ビデオの中でこの認定問題について2万人が申請したのに、いざ水俣病である。と認めたのはたった2万300人である。といっていた。しかもこの裁判は22年もかかったといっていたのにびっくりした。確かに1人に対して行政が認めれば1600〜1800万の保証金を払わなければならないので大変なのかもしれない。しかし、一番大変なのは水俣病にかかってしまった人達で、(熊本水俣病に関しては)有害なメチル水銀を流してしまったチッソ水俣工場は謝罪をすべきだと思う。
しかも、この水俣病は保険がきかなく全額患者負担というではないか。これに対しても、松本氏が言っていたけれど、「この人は水俣病である。と診断の決定を下すのは本来ならば医師のハズなのに、最終的に決めるのは知事であって、私のような1人の町医者の診断は参考程度。」というのもおかしい話であると言いたい。
そして、この水俣病が発生した時に国がちゃんとあるべき対応を取っていれば、こんなに被害は広がらなかったのではないかと思う。「水俣の全ての魚が有害である、とは認められないので、国の対策も取れない。」とはよく言ったもので、この様にして国が処理をしなかった為汚染された魚を食べまくって被害拡大になってしまったのでなないだろうか。この時点で、本来救済者であるべき国が加害者になってしまっているのだ。しかも、1億かけてサイクレーターを設置してメチル水銀を取り除こうとした事に対しては、ちゃんと処理を行おうとしているのだな。と思うが、結果が残せなかったら患者の側から言わせてもらうと何にもならないのではないかと思う。
仮に、メチル水銀を流してしまったチッソ水俣工場や、早期処理を怠った国が素直に「水俣病を起こして申し訳ありません。」と最初から謝っていたら、こんなに裁判で争われるほど大きな問題になっていなかったかも知れない。裁判で訴えてきている原告側の人達も、ビデオの中で「“この人たちは水俣病です。”と認めるようお願いします。」と言っていた。本来ならば、“お願いします。”ではなく、“素直に認めろ!”と言いたいのが本心だろう。
でも、今では国が責任を認めているので、これは良いのではないかと思う。しかし、メチル水銀を流した事や、処理を怠ったことを認めても、結局水俣病である。と認定しなければ意味がないのではないか、と思う。水俣病の判断条件のレベルを上げたまま変更しないと、重度の水俣病の症状がでている人はともかく、軽度であまり症状がない水俣病の人たちはどうなるのだろうか。でも、確かに判断条件のレベルを上げておかなければ、保証金欲しさのニセ患者がでてくる。と言っている国の気持ちも分かる。これは国側として考えるか、本当に水俣病になってしまった人側から考えるかで、全く変わってくると思う。
この様に「責任は認めるが、判断条件の変更は認められない。」と国が言っている限り、不信がまた更に不信を呼び、ビデオでも言っていたとおり、不信の連鎖となり水俣病はまだまだ終わらないだろう。
私は早くこの不信の連鎖が解け、国と被害者が手を取り合っている所が見たいと思う。