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このビデオで自分が最も注目したのは水俣病発生初期の国側の対応だった。

現場の医師や熊本県が水銀中毒を疑い漁獲の禁止を国に提案したのに対し国はなぜ漁獲禁止を決定できなかったのだろうか?

それは漁業関係者の生活を守るためだったのだろう。何らかの措置をとることにより関連業界の不利益が出ることを防ごうとした結果、被害の拡大をもたらした。国がそのリスクを読み違えたのである。これは薬害エイズに代表される薬害が生じた構図に類似しているように思われる。さらに、薬害においてはある程度危険性を国も業者も把握していたという点でより悪質であるといえる。

 国は現在、米国と牛肉の輸入再開交渉を行なっている最中である。BSEの牛の異常プリオンを摂取することにより発病するとされている変異型クロイツフェルトヤコブ病は依然としてその詳細なメカニズムは解明されていない。リスクを読み違えても、米国に交渉を押し切られて安全対策が講じられないまま牛肉の輸入を再開しても水俣病同様被害の拡大を招くだけだと思う。

 我々医療関係者はこれからこのような問題が生じたとき判断を求められる可能性がある。“歴史は繰り返される”という言葉があるが、もしそのような機会に遭遇したとき正確な判断を行ない過去と同じような過ちが起きぬように今までの失敗の歴史を考察し自らの意見を予め備えておくことが必要であると思う。