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             水俣病裁判       

 

 

(1)   水俣病とは?   

 

   原因物質は有機水銀(メチル水銀)である。

   臨床症状には知覚障害・運動障害・聴力障害・視野狭窄・言語障害などがある。

   母親が水俣病の場合、胎児が水俣病になり、水俣病に罹患して重い障害を持って生

   まれることもある(胎児性水俣病)。

 

(2)   何故、水俣病が起こったのか?

 

   1932年、チッソ水俣工場がアセトアルデヒドの生産を開始し、1941年まで

   無処理のメチル水銀を水俣湾に排出した
   メチル水銀が水俣湾内の魚介類で濃縮され、沿岸住民がその魚介類を食べて水俣病

   になった。

   チッソは、最新式廃水処理施設として、「サイクレーター」をアピールしたが、それ

   は単なる分離装置であって、水銀を取り除くのには不十分なものであった。

   熊本大の研究チームによって、食中毒であることが明らかになったが、国側は全て

   の魚が汚染されてはいないとして食品衛生法を適用しなかったことで水俣病は、拡

   大の路線をたどった。

 

(3)   水俣病裁判

 

水俣病裁判の目的には、被害者がチッソに損害賠償や医療費などを請求することと

被害者が国・県に早急な被害認定を求めるということの二点がある。

 

被害者がチッソに損害賠償や医療費などを請求する訴訟では、被害者側の勝訴となり、病状に応じて慰謝料が払われた。

しかし、問題となったのは、被害者が国・県に早急な被害認定を求める訴訟の方だった。ここで問題となったのは、水俣病患者の認定基準である。国の行政が判断する認定基準と裁判所の判断する認定基準とに違いがあった。行政に認定されると高額の慰謝料が貰えるが、裁判所に認定されただけでは金額が低かった。行政が認める患者は「52年判断条件」に該当する者だけであって、他はみとめられなかった。

慰謝料はどのくらい差があるのかというと、行政認定では1600〜1800万、司法認定では400〜800万 といった具合だった。

ここでもうひとつ問題となるのは、行政が定める認定基準には医者の診断が、参考程度にしか扱われていなかったという事実である。後になって、疫学という分野から汚染地域とその他の地域を比較することによって、「52年判断条件」が誤りであることが明らかになってくる。

こういった裁判の間に、被害者の不満は募るが裁判に費用がかかりすぎることから、認定を求める被害者の数が減少していき、被害者側から和解の案が持ち上がった。しかし、国側は和解には応じずに勝訴を勝ち取ったが、その後の裁判で敗訴し(食品衛生法を即座に適用しなかったために、被害が拡大したから。)、和解に応じることとなった。

この時の和解で、「国側が医学的に水俣病患者とは判定できなくても、有機水銀中毒の疑いがある者には260万円を支給する。その代わり訴訟や認定を今後認めない」という政治決着がついた。

 

(4)   感想

 

患者の立場に立った場合、医学的にはっきりとしない基準をつきつけられるのは、やはり理解しがたいものだと思う。医師が診断して、水俣病であると告げられたにもかかわらず認定されずに、高額の健康保険のきかない医療負担を背負った患者の気持ちを考えると心が痛む。

実際問題、裁判所と行政との二十審査は只只、患者の負担を増やし苦しませるだけのものではないのかと思った。

今回、このビデオを見て、いかに医療というものが患者を左右させるものなのかということをひどく痛感しました。今後、医学を学んでいくうえでこの重要性を忘れないようにしたいと思いました。