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私は4月5日に水俣病に関するビデオを見て衝撃を受けました。今までは水俣病に対してただ漠然と工場廃棄物中に含まれるメチル水銀に汚染された魚介類を大量に摂取することによって起こる病気だという知識しかありませんでした。しかし当初は原因がわからない中、おそろしい伝染病だとのうわさが広がって、「奇病」、「よいよい病」と呼ばれ、親戚付き合いや近所付き合いも絶たれ、患者やその家族に対するすさまじいばかりの差別が起こったり、熊本大学の調査・研究によって、1957年はじめころには、「水俣湾の魚が原因である」とわかってきたのに、国や熊本県は「水俣湾の魚をとったり、売ってはいけない」という通達や指導は一切しなかったこと、1959年11月には厚生省が「水俣病の原因はある種の有機水銀である」と発表したが、その汚染源がチッソ水俣工場しかないことが判っていたにもかかわらず、工場排水を停止させて汚染を止めることしなかったことなどを知り、愕然としました。普通に生活を送る中突如襲いくる、手足のしびれや難聴・頭痛などの症状、被害者の人たちは最初は何も原因がわからずとても不安だったと思います。なのに原因がわかっておきながら何も対策をしなかったことに怒りを感じずにいられませんでした。
それに加えて疑問に思ったのは、認定に対する判断基準です。水俣病をはじめ多くの「公害」では、国が認定審査会を設置し、認定基準を定めています。自分の病気が水俣病であると思っても、熊本県や鹿児島県に「認定申請」をしなければ、検査を受けられないし、認定されなければ救国は、1971年に水俣病と認める基準を「汚染を受けた地域に住んでいて、感覚障害や視野狭窄などの症状のいずれかがあること」としていました。しかし申請患者が急増すると、1977年には新たに「水俣病判断条件」を作り、認定基準を厳しくしたのです。その結果、多くの申請患者は「水俣病でない」とされました。
医師の診断は参考程度でしかなく、実際の認定かどうかの判断は国が定めるなんて間違ってるのではないでしょうか。直接被害者と接し、病状を見た医師の判断を翻し、紙面上でしか見てない人に認定をとり消されたら被害者の方々が納得いかないのも当然だと思います。認定基準が高くなったことは、保証金目当てに認定を要求してくる人や、該当者全員に保証金を支給すると莫大な金額になることに対する対策であるでしょうが、それによって本当に救済が必要な人をも無視してしまっているように思います。
今も尚、1995年に出された「水俣病ではないが、感覚障害のあるものには一時金としてチッソが260万円を支払う」という政府解決策を多くの患者団体が止むに止まれず受け入れ、裁判を取り下げましたが関西訴訟原告は「政府解決策では水俣病にたいする国・熊本県の責任について触れておらず、患者を水俣病と認めていないので受け入れられない」とこれを拒否し、裁判を継続してきました。この訴訟は今年5月23日に結審し、来春に判決がきまるそうです。被害者の方々は今も戦いと苦しみが続いています。それが少しでも和らぐように1日でも早い判決と、被害者の方々に対する保障がなされることを望んでいます。