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水俣病とその教訓
先日の予防と健康管理の授業では、『水俣病は終わらない』という題名の水俣病関西訴訟についてのビデオを見ました。私は水俣病について小,中学で習った程度の知識しかなかったのですが、今回この機会に水俣病について自分なりに調べたこと、感じたことを書いてみたいと思います。
まず、今回のビデオで特に問題になっていたのが水俣病患者の判定でした。ビデオでも述べられていたように、現在の水俣病の判定条件は、感覚障害、運動低下、視野狭窄です。この基準は、1940年にイギリスの工場で起こった有機水銀中毒事件で報告された症状で、それと水俣病の症状が一致したために有機水銀の典型症状とされ後に報告者の名をとってハンター・ラッセル症候群と名づけられたものでした。しかし、この二つの事件は直接的な水銀中毒と、環境汚染によって食物連鎖を介した間接的中毒といった違いがあり、また、水俣病は患者が胎児から老人までと幅広く、前者よりもさらに複雑で多様な病状を示しています。ハンター・ラッセル症候群イコール水俣病というのはあくまで仮説でしたが、いつの間にかそれが定説となり、ハンター・ラッセル症候群をそろえていないと水俣病ではないと診断されるようになってしまいました。そのために、その後に他国で起こった水銀汚染でもこの判断基準が使われ、政府が水銀による環境汚染は認めても、水俣病の発生は認めないといった事態が起こってしまったそうです。何を水俣病とするのかという問題は、国内だけでなく国際的に、これから起こりうる新しい公害病に対してどのように対策し、どう予防し、被害を最小限に抑えるかということにもつながるとても重要なことなので、このような、定説が真実を切り捨ててしまうような事態を起さないためにも、更なる調査、基準の改定が必要だと思いました。しかし、先ほど述べたように水俣病は複雑で多様な病像を示すため、それをまとめるのはとても大変なことだとも思いました。
次に、胎児性水俣病についてですが、以前は血液・胎盤関門により毒物はガードされ胎盤を通過しないというのが通説でしたが、その後の研究より胎盤経由の中毒だと証明されました。先ほどの判定基準の件でもそうですが、定説にとらわれずに様々な可能性を考えるということがとても重要なのだと感じました。
また、調べていく中でとても印象に残った事が、ありました。ある先生が検診のために水俣に訪れた際、患者さんに検診を拒否されたことがあったそうです。その理由は、検診をするとそれをマスコミが嗅ぎつけ記事になると更に魚が売れなくなり、皆が迷惑するといったものでした。病気になれば治りたいと思うのが普通だと思っていた私は、とてもショックを受けました。
昔からそこに住んでいた人々が、ただ今まで通りに魚を捕ったり、食べたり、普通の生活をしていただけなのに環境汚染の被害者となり、その上正当に被害を認められなかったということは、感情的な意見になってしまいますが、あまりにもひどいことだと思いました。そして、今後このような被害を出さないためにも、国は認定制度がゆがめてきた病像を見つめ直し、再構築すべきではないかと思いました。