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予防と健康レポート『水俣病について』
1 原因
1956年に熊本大学の研究グループが、水俣病を新日本窒素水俣工場の排水が原因と発表した。
工場排水や水俣湾の魚介類からは多種類の有毒物質が検出されて、水俣病の原因物質を有機水銀と特定するのは困難であった。
マンガン・タリウム・セレンなどが疑われたが、これらの毒性と水俣病の症状とが完全には合致しなかった。
1959年、有機水銀が新たな原因物質と疑われた、水俣工場原因説を否定するため、日本化学工業協会専務理事と、水俣工場でアセトアルデヒドの製造法を確立した橋本水俣市長が、爆薬投棄説を言い出した。
佐世保に大量に保管していた日本海軍の爆薬を、終戦時に水俣湾に捨てたが、その爆薬から海水に有毒化学物質が溶けだしたと考えたのであった。この爆薬説は、GHQの命令で爆薬を廃棄した当事者が名乗り出て、否定された。
同じ時期に、水俣工場からの水銀原因説を否定する目的で、東工大清浦教授がアミン系毒物中毒説を主張し、マスコミで大いに注目された。腐った魚にはアミンができるが、それを食べた者が中毒を起こして水俣病を発症した、とみなしたのであった。
2 症状
有機水銀(メチル水銀化合物)に汚染された魚介類を、反復、継続して摂食することによって起きる中毒性の神経系疾患です。(後天性水俣病)
典型的な奨励の神経症状は,四肢末梢優位の感覚障害、小脳性運動失調、構音障害、求心性視野狭窄、中枢性聴力障害、さらに中枢性眼球運動障害、中枢性平衡障害、振戦などがあります。
このうち感覚障害、運動失調、求心性視野狭窄、聴力障害のすべての症状を揃えた症例をハンターラッセル症候群と呼び、メチル水銀中毒の典型的症例とされています。
重症者では、狂躁状態、意識障害を示し、死に至る場合もありました。
しかし、主要症候をそろえた典型的なハンターラッセル症候群の症例や急性劇症型の症例は、水俣病の発生初期には認められましたが、被害者の大多数は症候のそろわない、いわゆる不全型であり、中には外見からは健康な人と見分けがつかないひともいました。
自覚症状としては、手足・口周囲のしびれ感、疲れやすい、物忘れ、めまい、転びやすい、力が入らない、耳鳴り、言葉が出ない、匂いや味がわからない、目が見えにくいなど、多様な症状がありますが、比較的特異な求心性視野狭窄を除き、水俣病にみられる運動失調、聴力障害などはいずれもよくみられる神経症状であるため、その将校がメチル水銀によるものかどうかは判別しにくくなっています。
治療法としては、水俣病の発生初期には薬剤により体内のメチル水銀の排出を促進させたりしますが、水俣病に対する治療法は現在でも確立しておらず、痛みを和らげる対症療法やリハビリ療法が治療の中心となっています。
3 世界的取り組み