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 今回水俣病における患者と行政の論議となる『不信の連鎖』を講義で見た。

これまで私は水俣病の存在は知っていても、原因がメチル水銀であり全身にしびれやひきつけなどの症状が起こり死に至る、といったことしか知識になかった。

そこでまず水俣病についてべてみた。



 水俣病とは、メチル水銀に汚染された魚や貝の多くの飲食によるメチル水銀中毒であり遺伝することはない。

体内に入ったメチル水銀は脳や神経系を侵し、手足の痺れ、ふるえ、脱力、視界が狭くなる、言葉がはっきりしない、といった多種多様な症状を引き起こす。

重症患者では発病から一月以内になくなるケースもあった。

また見た目にはわからないが日常生活に支障をきたす慢性型の患者もいる。

いまだに根本的な治療法は現時点では見出されていない。



 政治的な背景としては1956年に公式認定され、1968年に政府がチッソ株式会社による公害と認めた。

そして今日この論議となっているのだが、この50年間、水俣病患者にとっては苦難の連続だったようだ。

そもそも水俣病は保険が降りないので患者の全額負担であり、国が認定水俣病患者とすれば1600〜1800万円は払われる。

ここに幾度となる互いの論争が生じている。

しかしこの中で患者が行政に最も求めたものは、患者を放置した責任を認め、人として心から謝罪してくれという事のようである。

たとえ医師の判断で水俣病患者であるという認定があるにもかかわらず、行政の判断基準とは違いがあり認定患者として扱わないのが事実だ。

今回のビデオでも医師がそのことに頭をかしげており、自分が認定した患者のその後の政府の扱いを考えると後ろ髪を引かれる思いだと語っていた。

正確な診断をほどこしても国側の許可が下りないために患者がそのために苦悩に陥るということのようだ。

現場の医師側としては、おそらく患者側に立ち一刻も早く対処するためにとった診断の結果がこのように扱われるというのは胸が引き裂かれる思いだと容易に考えられる。

私はまだ行政の中における医師のあり方、行政と医師の関係ということに関して把握してなく、これから学び、また経験していくつもりである。

よって何もわからないが、医師となって診断を下した以上、その瞬間から自分の患者となると同時にその患者を守る必要があるのは確かなはずだ。

行政が障害となる医療が自分の前に現れる可能性も十分に考えられる。

自分の臨む地域医療とはそういうものなのかもしれない。

この水俣病患者と行政の論争は残念ながらしばらく継続しそうである。

正直なところ、現時点の私にはどういう解決策をとるべきか考えきれないが、私にとって今大事なことはそのような現実から目を背けないことではないだろうか。