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水俣病は、過剰のメチル水銀の摂取に伴い発症する、いわばメチル水銀中毒である。
症状として、求心性視野狭窄(メチル水銀が後頭葉視中枢に集積して求心性視野狭窄、つまり、視野全体が狭くなる。)錐体外路障害(大脳皮質と筋肉を結ぶ延髄の錐体を通過する遠心性経路が傷害された状態で、深部腱反射の亢進、病的反射の出現、痙性麻痺、筋緊張亢進が見られる)、小脳運動失調症などを発症する。 メチル水銀は有機水銀で、組織タンパクと結合して血液脳関門を通過しやすい。
神経に対しては、特に中枢神経系に沈着する。治療として水銀キレート療法を用いる。この治療は自閉症の小児にも施される。
日本では水俣病は4大公害病の一つとして認知されており、特に熊本県の水俣湾と新潟県の阿賀野川を発端としている。前者を一次、後者を二次水俣病としている。両者は全く異なる地方で同一の症状を見せたが、その経過は異なっていた。食品衛生の面でそれは明らかであった。
新潟では、最初の患者が出た直後に工場がアセトアルデヒドの製造を中止し、排水を止めた。また早くより県が対応し、阿賀野川の魚介類を食べないように指導した。 熊本では、食品衛生法に基づく湾への排水の制限を要請する書類を行政へ提出したものの、あっさりと棄却された。
新潟と熊本ではその汚染域が川と湾で異なるため、その被害者(水俣病認定者)の数は大きく差がある。
以前、ユージン.W. スミスという写真家の「水俣」という写真展を観に行ったことがある。そのとき、写真展の前書きにこう書いてあった。
「 写真はせいぜい小さな声に過ぎないが、 ときたま−ほんのときたま − 一枚
の写真、 あるいは、 一組の写真がわれわれの意識を呼び覚ますことができる。
写真を見る人間によるところが大きいが、 ときには写真が、 思考への触媒とな
るのに充分な感情を呼び起こすことができる。 われわれのうちにあるもの − たぶんすくなからぬもの
− は影響を受け、 道理に心をかたむけ、 誤りを正す方法 を見つけるだろう。
そして、 ひとつの病の治癒の探究に必要な献身へと奮いたつことさえあるだろう。
そうでないものの、 たぶん、 われわれ自身の生活からは遠い存在でる人びとをずっとよく理解し、
共感するだろう。 写真は小さ な声だ。 わたしの生活の重要な声である。 それが唯一というわけではないが。
私は写真を信じている。 もし充分に熟成されていれば、 写真はときには物をいう。
それが私が水俣で写真をとる理由である。」