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平成16年10月15日水俣病関西訴訟の最高裁で、水俣病被害の拡大について国と熊本県の責任を認める判決が出た。関西訴訟は、行政の責任を不問とすることを前提とした和解に応じなかった唯一の原告であった。判決を受けて原告側や未認定患者の間には今度こそ救済されるかもしれないとの期待が高まった。ところが環境省は、謝罪は行ったが、厳しすぎるといわれている認定基準を見直す考えはないことを表明した。これは多くの未認定患者は実際具体的には何も得られないことを意味する。控訴して負けてさらに分が悪くなる可能性も十分に考えられた状況のなか闘い続けることを決意し、その結果国と県が賠償責任を負うとする判決を勝ち取ったにもかかわらず、である。
このような問題は、司法と行政の水俣病を規定する基準が違っていること、最高裁でこれについて明確に基準を改めるよう言及していないと行政が主張していることによる。環境省がそう主張する理由は金銭的なことなのだろうか、私にはわからないがとにかく現行の基準に当てはまらない患者は水俣病と認めていない。
行政は、今までは責任がないことを主張する立場であったが、いまや「判決を厳粛にうけとめ」「真摯に反省し」「長きにわたり心身の労苦を堪え忍んでこられた方々が地域社会の中で心豊かに安心して暮らしていけるよう」努力する態度を明確にしている。責任を自覚しているはずである。理屈を並べて水俣病でないと言い張るのではなく医学的にみて判断すべきだ。環境省の提示する基準は医学的な根拠が薄いように見える。
医者の立場であったらなにができるだろうか。NHKの番組で出てきた松本医師のように、診察や検査をして正しいと思える診断を下すほかないだろう。それだけのことだが、しかし、私は医学はとても科学的でかなり中立に近い存在だと考えている。だから今の状況の見極めるのに役立てると思う。行政がもっと責任の重さを深くをうけとめ、目の前の事実に基づいて賠償してくることを願う。