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 水俣病は奇病と言われ、工場排水中のメチル水銀に汚染された魚や貝などをたくさん食べることによって起こった、『メチル水銀中毒』です。

空気や食物を通じてうつる伝染病ではなく、遺伝することもありません。

体内に入ったメチル水銀は、主に脳などの神経系を侵し、手足の痙攣、麻痺、感覚障害、言語障害、運動失調、難聴、視野狭窄など様々な症状を引き起こします。

汚染された魚を食べた母親の胎内でメチル水銀に侵され、障害を持って生まれた胎児性水俣病患者もいます。




 水俣病の患者さんがチッソや行政に対する裁判や交渉で求めたものは、『水俣病を起こし患者を放置した責任を認め心から謝罪せよ、そして被害の実態を明らかにし、速やかに救済すること』でした。

しかし行政は『52年判断条件』という水俣病の患者かどうかの判断基準で、ほんのわずかな人にしか認定許可を出しませんでした。

もうこれ以上裁判を続けたくなくて、救済と引き換えに認定を諦めほんのわずかなお金で政治決着に収めた患者さんもいます。




 水俣で開業してみんなの診察をしている松本先生と52年判断条件に関わった先生、医者はいろんな立場に立たなくてはいけないのだなぁと思いました。

 大量生産、廃棄によって、私たちの暮らしは便利で豊かなものとなりましたが、排気ガス、農薬など、様々な有害物資に取り囲まれて環境や健康破壊の危険にさらされています。

人が起こした事はまた何倍にもなって人に返ってきます。

水俣病は私たちに被害者であると同時に、加害者でもあることを教えてくれました。