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 水俣病に関して知識としてあるのは、三重県四日市市の大気汚染が原因の四日市ぜん息、富山県神通川流域でのカドミウム汚染によるイタイイタイ病などと並ぶ四大公害病のひとつであり、熊本と新潟で起こったということと、原因として工場廃水に含まれたメチル水銀が魚介類などにより濃縮され、その魚介類を食べると水俣病となるということくらいだった。



しかし実際は、水俣病の臨床症状には知覚障害・運動障害・聴力障害・視野狭窄・言語障害などがある。

患者によっていくつかの症状の組み合せがあり、年齢病歴によって症状が大きく異なる。

末梢神経の障害や大脳小脳の皮質障害が、水俣病患者に共通するということである。

母親が水俣病の場合、胎児が水俣病になり、水俣病に罹患して重い障害を持って生まれることもある(胎児性水俣病)。

このような症状があからさまにでているのに、なぜ国は認めようとしなかったのかと思うと腹立たしく思った。

加害企業チッソは責任を認め、行政認定患者全員に一時金1600万〜1800万円と年金・医療費などを支払った。また水俣病の認定申請をしても、認定の用件を満たしていない水俣病患者には、政府解決策に従い、チッソが政治決着による補償金260万円を支払った。

政治決着、司法認定、行政認定により支払われる賠償金も様々であり、260万円〜1800万円と幅が広く、同じ病気にかかっているのにこのような格差がでるのが不思議で仕方がなかった。

水俣病関連の裁判には、被害者がチッソに損害賠償や医療費などを請求した民事訴訟、被害者が国・県に早急な被害認定を求めた行政訴訟、チッソの元幹部の水俣病発生責任などを問う刑事訴訟があった。

このように水俣病に関する裁判が数多く行われたにもかかわらず、患者側とチッソ側が政府解決案によって和解するに至るまで、何十年という歳月がかかってしまったことは大きな問題ある。



これから先、このような公害に直面することは少なからずあると思う。

この経験を政府は必ず活かすべきであり、医師としても、診断をはっきりと認められる体制を早く作るべきだ。

そして、医師と患者と政府が連動し、お互いのあげあしを取り合うのではなく、ビデオで出演されていた松本先生のように手を取り合い、助け合いながら問題を乗り越えて行けることが最善の策ではないだろうかと思う。