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私が最初に水俣病について習ったのは、小学校の社会の授業でのことです。その時は詳
しくは習いませんでしたが、いろいろな対応がなされて公害は収まってきている、と習い
ました。しかし、今回ビデオを見て、実際に行われた行政や会社の中途半端な対応を知
り、大変驚きました。 まず一つ目は、水俣病の発生した初期段階に、きちんと自分たちの手で汚染の度合いを
調べず、また、汚染海域での漁の制限もしなかったことです。漁業に従事している人々が
魚介類を多く食べることは当然のことです。海の汚染がわかった段階で、直ちに適切な対
応を採らなかったため、飛躍的に患者数が増えたのだと思います。また、この段階で、汚
染地域で暮らしている人々全員への検査がなされなかったことも、患者数を増やしてしま
った原因のひとつだと思います。この検査がなされなかったために、地域住民への海の危
険についての連絡の必要性に行政が気づけなかったのだと思ったからです。 二つ目は、通産省が設置したサイクレーターです。設計の段階で水俣病の重要な病原因
子であるメチル水銀を取り除けないとわかっていたにも関わらず建造し、世間に水がきれ
いになっているようにアピールすることは、明らかに国民による責任追及を軽減するため
のものでしかありません。
http://kumanichi.com/feature/minamata/mugen/mugen1-08.htmlでは、当 時の窒素の幹部が「サイクレーターを導入したのは、酸化鉄で赤色に染まっていた水の色
を無色にして、水がきれいになった、というイメージを地域住民にアピールするためだっ
た」という内容のことを話しています。自分たちの犯してしまった事実がどのように危険
なことなのかを知らないはずがないのに、形だけの対策しかとらず被害者である地域住民
を騙すということは、自分たちの保身しか考えていなかったという事実の現れだと思いま
した。
三つ目は、患者の援助を決める段階で、お金で話をつけようとしたことです。十分に水
俣病についての知識をそろえず、患者の認定基準も決めずに、まず損害賠償を払う、とい
うことを決め、発表してしまったために、今になっても行政と司法と医師との間で水俣病
患者の認定基準がずれる、ということが起きているのだと思います。ここでも、行政が公
的に汚染地域の住人への健康調査をしなかったために起きた問題があります。公的に行わ
なかったために行政は、地域住民に自主的に検査を受けて、水俣病患者であると国に申請
するように働きかけるしかできなくなったからです。そして、援助を受けるために申請し
てきた患者数があまりにも多かったため、行政は現場の医師の診察に関係なく独自の厳し
い認定基準を作り、対応せざるを得なくなったのです。このため、今でも、明らかに水俣
病だと診察されている人の多くが適切な援助を受けられずにいます。
現在、同じような状況になっているのが、アスベストです。アスベストは肺に悪影響を
及ぼします。
平成11年5月に、千葉でアスベストを扱っていた工場の跡地にマンションを建てる工事
が行われていました。この工事によってできた多量の粉塵によって、老人や子供の中から
極度の咳き込みと喉の痛みを訴える人が出てきました、が、マンションを建設した公団
は、散水しか粉塵対策を行いませんでした。このため、アスベスト被害を疑った地域住民
が、工場跡地の土壌検査の結果を公表するように公団に持ち掛けましたが、「土壌検査表
は残土処理のために使うもので、住民の皆さんにお見せするわけに参りません」という回
答しかもらえませんでした。その後、数回にわたって検査結果の公表を求めましたが、回
答は以前と変わらず、職員が検査データと称する書類を自らの手元で見せて「このように
検査しました。了承ください。」と報告をする、という杜撰なものでした。
これから数年間は、アスベスト最盛期のころに建てられた建造物の建て替えが必要にな
ってくる時期です。このため、上記のような問題が多々生じてくると思います。その時
に、一市民として、また医者としてどのように振舞えばよいかを考える上で、今回のビデ
オ鑑賞は私にとって、とてもいい機会だったと思いました。