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予防と健康管理レポート


1 はじめに
4/7,4/17に供覧したビデオの内容を踏まえて、レポートを作成する。
また、作成するレポートは、与えられたキーワードの中から2つ選択し、キーワードと関連した科学論文から興味のあるものを2つ選び(自分の場合は、日本語キーワードなので2つ)レポートを作成する。
論文を読むことにより、自分なりに考察することにより、自分の医師像を築く糧にしたい。


2 選んだキーワード
中毒  聴力障害


3選んだ論文の内容の概略

(1) 薬物による聴覚障害
・薬剤性難聴とは…?
薬剤の全身投与、皮膚や粘膜からの吸収、鼓室内への投与が原因。
医原性疾患の1つである。


・主な原因となる物質
キニーネ製剤(一時的な難聴)
アスピリンの前身のサリチル酸ソーダ(可逆的な難聴)
砒素化合物、重金属
アミノ配糖体(ストレプトマイシン、カナマイシンなど…)利尿剤(エタクリン剤、フロセマイド、ブメタマイドなど…)抗癌剤(ナイトロミン、シスプラチン、カルボプラチンなど…)
抗生物質や抗生剤の点滴薬剤、手術野消毒剤

得に上記の中でもアミノ配糖体と利尿剤の同時使用で強く聴器毒性を強く増強するので、臨床的に注目されている。これらは、蝸牛血管条からのアミノ配糖体の透過性が利尿剤によって増強するためである。
近年アミノ配糖体に対する高感受性を持つ家系があり、母系遺伝をすることからミトコンドリアDNA異常によると、関心を集め遺伝治療が難聴の治療に繋がると注目されている。

他方、腎機能や肝機能の低下した人で高度の難聴がみられるのは、薬物の血中濃度や、内耳液中の濃度がより増加しているためである。


・難聴のメカニズム(蝸牛と難聴の関係)
(a)内耳は、蝸牛系と前庭系に分けられているが、両者は必ずしも独立して機能しているわけではない。
蝸牛は3つのコンパートメントから成り立っている。上から順に前庭階、蝸牛管、鼓室階であるであり、前庭階と鼓室階は蝸牛頂で連絡している。
蝸牛の中は外リンパ液と内リンパ液という2つの異なる成分を持ったリンパ液で満たされている。細胞内液と同じように150mml/lの高いNa濃度と3〜7mmol/lの低いK濃度を持っている。蝸牛管の中は、内リンパ液が満たされているが、これは細胞内液と同じように150mml/lの高いK濃度を持っている。
蝸牛管の側壁を構成する血管条では、活発なイオンポンプが働いて、血管から蝸牛管の中にKを移動させている。血管条は、人体の中で単位重量当たりの酸素消費量が一番多い組織である。したがって、酸素の取り込みに関係する血流障害や酸素の障害およびイオンポンプの障害は、難聴の原因となる。

(b)音刺激は、基底板を上下に震動させる。小さな音では振動さく、大きな音では振動が大きくなる。また、高い周波数の音ではアブミ骨に近い蝸牛の下方回転、低い周波数の音では蝸牛の上方回転が振動する。基底板の上下運動は、その上にのっている内有毛細胞を動かし、音刺激の運動エネルギーが内耳の巧妙な仕組みで、電気エネルギーにと変換される。
音響刺激によっていろいろな反応が得られ(表1…下記)、それを利用して他覚的な聴力検査ができるので、ヒトでも動物でも聴力の変化を知るためにこれらの諸反応が応用されている。ないリンパ直流電位、または、EP、蝸牛マイクロフォン電位、またはCM、耳音響放射、またはOAE、聴神経複合活動電位、またはCAP、そして聴性脳幹反応、またはABRなどが利用されている。
これらの諸反応の発生部位、障害原因および測定方法を表2(下記)に記した。



表1  聴覚系に由来する諸反応 

1) Endocochlear DC Potential (EP)
内リンパ直流電位
2) Cochlear Microphonics (CM)
蝸牛マイクロフォン電位
3) Oto Acoustic Potentials (OAE)
耳音響放射
4) Compound Action Potentials (CAP)
聴神経複合活動電位
5) Auditory Brainstem Response (ABR)
聴性脳幹反応

表2  諸反応の発生部位、障害の原因および測定法
 

諸反応 発生部位  障害の原因 測定法
EP 蝸牛血管条 血管障害 微笑ガラス管電極
ループ利尿剤  蝸牛管に挿入
白金製抗癌剤
CM 外有毛細胞 サリチル酸 蝸牛窓誘導
アミノ配糖体 または蝸牛管内誘導
白金製抗癌剤
OAE 外有毛細胞 EP/CM障害 外耳道音響反射
CAP 第[神経 EP/CM障害 蝸牛窓誘導
ABR 聴覚中枢路 EP/CM/CAP障害 頭皮上誘導


内リンパ直流電位、すなわちEPは血管条にその発生源がある。有毛細胞の上下動が起こると、有毛細胞の電気抵抗が変動するので、有毛細胞という可変抵抗器の中を流れる電流やKイオンの量が変動し、これが蝸牛マイクロフォン電位となる。耳音響放射は電気現象ではなくて音の蝸牛から放射現象である。これには、外有毛細胞の規則的な収縮が関係している。有毛細胞からの信号が、ラセン神経節から始まる第8神経の末端を刺激して、活動電位が同期して起こり、超神経複合活動電位となる。これは周波数特性があるので、蝸牛管の中のどの周波数に該当する部分に、どの程度の障害があったかを測定でき、動物実験では他覚的なオージオグラムを作成することができる。第8神経から順次に信号が中枢に伝わるが、その電気信号を頭皮上から測定したものが聴性脳幹反応(ABR)である。脳死の判定にも用いられているが、反応が極めて微弱で大きな加算回数が必要となり、実際の動物実験ではいろいろな周波数といろいろな音圧を組み合わせて測定しようとすると時間がかかりすぎるのが難点である。
音響刺激に関与するこれらの発生部位と相互関係を簡単に述べる。
内リンパ直流電位は血管条から発生する。血流障害、ループ利尿剤、白金製抗癌剤などで低下する。この電位を測定するためには微小ガラス管電極を蝸牛管の中に挿入するので、同一動物で経時的に何遍も測定するのは困難である。
蝸牛マイクロフォン電位の発生部位は外有毛細胞である。サリチル酸、アミノ配糖体、白金性抗癌剤などで障害される。
耳音響放射、すなわちOAEの発生部位は外有毛細胞である。外耳道に挿入したマイクロフォンで蝸牛から放射される微小な音を拾って測定する。
聴神経複合活動電位は、その前の段階の内リンパ直流電位や、蝸牛マイクロフォン電位に障害が起これば、この電位は発生しない。この電位は蝸牛窓誘導で比較的に動物への侵襲がない状態で、繰り返し測定できる。
聴性脳幹反応は、その前段階であるEP/CM/CAPなどの障害があれば当然にABRに障害が起こる。


【補足】蝸牛の電気生理学的な仕組み
最初にEPの発生が必要であり、このプラス80ミリボルトの電位と、細胞内のネガティブ80ミリボルトの合計の160ミリボルトに及ぶ大きな電位差が有毛細胞に生じている。そして、可変抵抗器である有毛細胞の動きがCMとなり、それがAP、そしてABRの発生へと連鎖反応を起こしていく。
音刺激が基底板とその上にのっている外有毛細胞を上下に動かすと、外有毛細胞の動毛がねじれ運動を起こしてKイオンが流れ込み、これが細胞壁のCaチャネルを活性化して細胞の収縮が起こる。細胞の収縮と外からの音刺激による基底板の上下運動がうまく同期すると、ほんの少しの運動エネルギーで効率的に基底板の上下運動を起こす。ある程度基底板が揺れると内有毛細胞が刺激を受けて神経伝達物質を分泌して聴神経の抹消に信号を伝える。


・薬物の内耳への到達
静脈に注射されたり、消化管から吸収された薬物、または皮膚や粘膜経由で体内に入った薬物は血流を経て蝸牛に運ばれる。
この際2つの場所が薬物の影響を受ける。
1つは血管条であり、もう1つはコルチ器である。
薬物のコルチ器への進入には理論的には3つのルートが考えられる。
@ 内リンパ液経由で有毛細胞の上方から
A 外リンパ液から直接に基底板経由
B 外有毛細胞の体部を包んでいるコルチリンパ経由

いろいろ薬物があるが、ゲンタマイシンを例にとる。
アミノ配糖体ゲンタマイシンはその内耳への薬物動態が最もよく調べられている。
ゲンタマイシンは内リンパ液よりも外リンパ液中に速く現れる。(ゲンタマイシンに限ると…)
ゲンタマイシンは外リンパ液からコルチリンパを経て有毛細胞に到達するという説がある。
他方、オートラジオグラフィーや免疫組織学的な観察ではゲンタマイシンは最初に外有毛細胞の上部に認められている。
内耳でのゲンタマイシンの濃度は血清中の濃度に比例し、内耳での濃縮は認められていない。
しかし、アミノ配糖体でみられた薬物動態が他の耳毒性のある薬物でも同様であるとは限らない。
耳毒性薬物は蝸牛や前庭器官のどちらかに選択的にはたらくものもあれば、両器官に働くものもある。
・臨床的な兆候  ・個別または同時にみられる。
・一時的または永久的。
・発現は急激に認められたり、徐々に認められる。
・片側性であったり両側性。



・ 耳毒性の増強
異なった薬物が内耳に相加的な影響を及ぼすこともあれば、相乗的な影響を及ぼすこともある。
上記の場合、異なった薬物が内耳の同一の部位に作用することもあれば異なった部位に作用することもある。内耳の異なった部位に作用する2つの薬物の場合には、内耳での薬物濃度の上昇が原因であるとされている。
耳毒性薬物と騒音は同時に与えることで相乗的な影響が内耳に認められる。
薬物の耳毒性は、個体差、投与方法の差、投与期間、腎機能、肝機能、成人か小児か、なども毒性を増強したり、減弱する因子となっている。


・ 局所点耳剤の内耳毒性
点耳薬剤の毒性による感音難聴と中耳炎が内耳に波及したための感音難聴は、その識別が困難なことがある。
抗菌性の点耳薬剤は簡便で効果的である。
中耳炎が内耳炎を併発して感音難聴を引き起こす可能性がある。


・ 最後に

耳毒性を考えるにあたって、蝸牛の解剖と電気生理学的知識は必須である。
以前から、キニーネ、サリチル酸、砒素化合物、重金属などが毒耳性を持つと知られていたが、近年、前述したとおり、アミノ配糖体、ループ利尿剤、抗癌剤について研究がなされている。
抗菌性薬剤の点耳薬が難聴を起こし、耳毒性薬物の同時使用や、薬物と音響刺激が相乗的に蝸牛障害を起こすという報告がある。


・『耳鼻咽喉科・頭頚部外科  75巻2号』
  著・森園哲夫【福岡大学医学部附属筑紫病院 耳鼻咽喉科】




(2)妊娠中に発症した急性感音難聴

妊娠中に発症した急性感音難聴の3症例を下に挙げる。
@ 聴神経腫瘍で妊娠経過中に聴力悪化するも、出産後改善した。
A 突発性発症型で、妊娠中に治癒。
B 突発性発症型で、出産後に軽度回復。

AとBの症例の発端は突発性難聴に準ずると考えられ、それに加え妊娠中毒症を併発したことが誘因の1つとなっている可能性がある。
この場合、急性感音難聴の誘因として、妊娠のストレスや、妊娠中毒症が誘因とされるが、あくまでも誘因の1つであり、他の誘因も十分に考えうる。
したがって、この急性感音難聴を発症したヒトが、妊娠してなかったら発症しなかったとも言い切れない。
聴力障害の誘因として、妊娠中のプロゲステロンの変化によるリンパ液の変化が考えられる。
血栓症を疑う場合、凝固系のみならず、線溶系も疑ったが好ましい。
難聴の原因はさまざまであるので、出産後聴力が回復するとは限らないので、患者が妊娠後期だからといって、出産をしてから、治療を考えたらいいとは決して言い切れない。


・『産科と婦人科    68巻8号』
  著・早川智(日本大学 産婦人科)、山本樹生


4選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察


(1)水俣病とは、メチル水銀の中毒による視野狭窄、知覚障害、運動障害、聴力障害を起こす病気である。
熊本県、新潟県でいずれも大きな問題になった。
私が一番着目したいのは、水俣病自体の問題ではではなく、むしろその後の、「認定」の問題のほうであった。(もちろん水俣病のことも大事である…)
医師が水俣病と診断しても国が認定しない。八代(熊本)には2万人近くの水俣病潜在患者がいるにもかかわらず、2300人しか認定されなかった。
認定されないということは、保険が適応されないので医療費がすべて自己負担になるということは現在では想像することはできない。
ただ水俣病問題が起こるまで公害という概念がなかったのであろう。

ここで自分は、診断と認定は別のものであるからこそ、医学的観点以外からの社会的観点も重要視されるものだと思う。
社会的観点が加わるから医師が診断に踏み切れなかったりする問題がでる。
ならば、医師以外、しいて挙げるなら法律家などの他の職業人などの専門家も加えて判断するなら、なおいっそう良い結果が生まれトラブルも少なくなると思う。
それに、国が医師の出した診断に納得いかないなら、医師も国が指定した人間を雇用したらいい。
これからは、医療機関も国ももっと連結を強めていくべきである。
医師のあり方としては、環境汚染によりこれからもまだまだ、新しい中毒がいつ、どのように起こるかなどは想像できないし、もうすでに大問題が起こっていてもおかしくはない。(環境問題だけが原因になるとはかぎらない…)
それにあたって、普通最初にかかわるのは医師である(特に内科医)。
だからこそ、医師は普段から一人一人の患者を繊細に見定めないといけない義務があるし、そのような態度を決して忘れてはならない。
その上で、新しく出てくるものに対し対応できるよう常に身構え、日々勉強を怠ってはならない。


(2) ヒトの遺伝子は30億の塩基からなるという…
なお、ヒトとチンパンジーのちがいは、ほんの1,2%だという。
ここで補足としてヒトとヒトの遺伝子は0,3%の違いだということから、ヒトとチンパンジーはいかに近い生物か論じることができる。
近年、テレビなどマスコミでよく報じられている生活習慣病(成人病)などは、遺伝子多型から起きている。
例えば、肥満に関する遺伝子なども、たった1つの遺伝子でわかるという。(血液中から…)
これらのことから、オーダーメイド医療の重要性がいえる。
オーダーメイド医療は、聴覚障害でも必要だと前にまとめた論文を読んで必要だと感じた。
【アミノ配糖体に高感受性を示す家系があり、母系遺伝をすることからミトコンドリアDNA異常による難聴がある。】
しかもオーダーメイド医療による治療のいいところは、個々にあった治療をすることができるだけでなく、それにより副作用も抑えられるところにある。
薬などの副作用もヒトによって個人差があるので、今からの医療にとってはとても大きなものとなる。
ただ、たくさんある遺伝子の中で機能が推定できるものは、現状ではわずか13000個くらいしかないそうなので、まだまだ先が長いとも思われる。
このように、医学を学んでいくうえでは臨床的なことだけでなく、基礎医学や分子生物学などの一般教養も医師になる上で大いに重要だといえる。


5まとめ


今回、ビデオを見て「中毒」「聴力障害」という2つのキーワードを選んだわけであるが、あまり水俣病とかかわりなかったが、薬物によりなぜ聴力障害が起こるかとてもきになったからである。キーワードの一覧を見て即決しました。
はじめて、論文を読んでレポートを書くことになったのだが、正直今まで論文には難しいことばかり書いてあり今の自分には全く無縁のものかと思っていたが、実際読んでみると自分にもわかることがあったので、これからは疑問に思ったことは論文を使って調べようと思った。
医師になるためには、ただ医学を勉強しさえすればなれるが、『良医』になるためには、医学だけ学んでも駄目だし、医療従事者だけとの繋がりだけでもだめだと感じた。
医師とは何事に対しても、幅広く柔軟な考えを持つべきである。